Lesson7 ベクトル|大きさと方向を矢印で読む
ベクトル図を見ると、
矢印がたくさん並んでいて混乱する。
どの矢印を足して、
どの角度を見ればよいのか分からない。
でも、ベクトルは難しい図形ではありません。
大きさと方向を、一つの矢印で表す方法です。
交流では、電圧や電流の大きさだけでなく、
位相という方向の違いも同時に扱えます。

数だけで表せる量と、方向も必要な量
温度や質量のように、
大きさだけで表せる量をスカラーといいます。
一方、力や速度のように、
大きさと方向の両方が必要な量をベクトルといいます。
矢印の長さが大きさ。
矢印の向きが方向です。
ベクトルA:A⃗ 大きさ:|A⃗|
\tan\theta=\frac{\text{対辺}}{\text{隣辺}}同じ長さでも向きが違えば、
同じベクトルではありません。
ベクトルの足し算は、矢印を頭からつなぐ
ベクトルAの終点へ、
ベクトルBの始点を置きます。
最初の始点から最後の終点へ引いた矢印が、
A+Bです。

C⃗ = A⃗ + B⃗
\vec{C}=\vec{A}+\vec{B}
矢印を平行移動しても、
長さと向きが変わらなければ同じベクトルです。
足し算は、二つの影響を合わせた結果を表します。
引き算は、反対向きのベクトルを足す
A⃗ − B⃗ = A⃗ + (−B⃗)
\vec{A}-\vec{B}=\vec{A}+(-\vec{B})
−Bは、Bと同じ長さで反対向きの矢印です。
引き算を特別な操作として覚えるのではなく、
反対向きの矢印を足すと考えます。
斜めのベクトルを、横と縦へ分ける
斜めの矢印は、
水平方向と垂直方向の二つへ分けられます。

Aₓ = A cosθ
A_x=A\cos\theta
Aᵧ = A sinθ
A_y=A\sin\theta
角θから見て、
水平方向が隣辺、垂直方向が対辺になるからです。
反対に、二つの成分から元の大きさを求めるときは、
|A⃗| = √(Aₓ² + Aᵧ²)
|\vec{A}|=\sqrt{A_x^2+A_y^2}
方向は、
θ = tan⁻¹(Aᵧ / Aₓ)
\theta=\tan^{-1}\left(\frac{A_y}{A_x}\right)
で求められます。
数値で成分を確認する
大きさ10、角度30°のベクトルを分けます。
Aₓ = 10 cos30° ≒ 8.66
\displaystyle A_x=10\cos30^\circ\fallingdotseq8.66
Aᵧ = 10 sin30° = 5
\displaystyle A_y=10\sin30^\circ=5
斜めの10という量を、
横8.66と縦5に分けた形です。
分けても元のベクトルが変わったわけではありません。
交流のベクトル図は、位相を方向で表す
交流の電圧と電流は、時間とともに変化します。
そのままでは比べにくいため、
大きさと位相を矢印で表します。

基準にした電圧を右向きに置き、
電流が遅れていれば時計回り側、
進んでいれば反時計回り側へ置きます。
V̇ = V∠0°
\dot{V}=V\angle0^\circ
İ = I∠(−φ)
\dot{I}=I\angle(-\phi)
これは、電流が電圧よりφだけ遅れる場合の表し方です。
ベクトル図で使う大きさは、
通常、交流の実効値です。
抵抗・コイル・コンデンサの向きを整理する
電流を基準にすると、抵抗の電圧は同相です。
VR:Iと同じ向き
\dot{V}_R\ \text{は}\ \dot{I}\ \text{と同相}コイルの電圧は電流より90°進み、
コンデンサの電圧は電流より90°遅れます。
VL:+90° VC:−90°
\dot{V}_L:+90^\circ\qquad\dot{V}_C:-90^\circ
三つの電圧を普通の数として足すのではなく、
方向を持つベクトルとして合成します。
直角方向のベクトルは三平方で合成できる
水平成分と垂直成分が直角なら、
合成した大きさは三平方の定理で求められます。
V = √(VR² + (VL − VC)²)
V=\sqrt{V_R^2+(V_L-V_C)^2}
コイルとコンデンサは反対方向なので、
垂直成分は差になります。
ベクトル図を描けば、
なぜ足し算ではなく差になるのかが見えてきます。
よくある四つの間違い
① 長さだけを見て方向を無視する
ベクトルは大きさと方向の組です。
② 矢印の始点をそろえたまま足す
足し算では、基本的に頭から尾へつなぎます。
③ sinとcosを逆にする
基準角から見て、隣がcos、向かいがsinです。
④ 交流の瞬時値をそのままベクトルにする
通常は実効値と位相を使います。

まとめ
ベクトルは、大きさと方向を矢印で表す道具です。
足し算では矢印を頭からつなぎ、
斜めの矢印は横と縦へ分けられます。
交流では、位相差を矢印の方向差として表します。
ベクトル図は、暗記する図ではありません。
何が同じ向きで、何が反対向きなのかを見つける地図です。
次の記事
STEP1 Lesson8
複素数
次は、ベクトルを計算しやすい形へ変えます。
j、複素平面、インピーダンスを、
90°回転という意味から整理します。
公式LINE
ベクトルの合成と成分分解を、交流回路で練習できる
電気数学ドリルを用意しています。



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