Lesson8 複素数|jは90°回転を表す
jが出てきた瞬間、
数ではないものが混ざったように感じる。
R+jX、V∠θという表し方を見て、
参考書を閉じたくなる。
でも、複素数は現実に存在しない謎の数ではありません。
横方向と縦方向を、一つの数として扱うための便利な表現です。
ベクトルを複素数へ置き換えると、
交流回路の計算が普通の式として進められます。

複素数は、実数と虚数の組
z = a + jb
z=a+jb
aを実部、bを虚部といいます。
横軸に実部、縦軸に虚部を取ると、
a+jbは平面上の一点になります。
Re(z) = a Im(z) = b
\operatorname{Re}(z)=a\qquad\operatorname{Im}(z)=b
複素数は、一つの点を
横と縦の二つの数字で指定しているのです。
電気ではiではなくjを使う
数学では虚数単位にiを使います。
しかし電気では、iやIを電流の記号に使うため、
混同を避けてjを使います。
j² = −1
j^2=-1
jは、2乗すると−1になる数です。
この定義だけを見ると不思議ですが、
複素平面では回転として理解できます。
jを掛けると、反時計回りに90°回る

1 × j = j
1\times j=j
右向きの1へjを掛けると、
上向きのjになります。
もう一度jを掛けると、
j × j = j² = −1
j\times j=j^2=-1
左向きの−1になります。
つまり、jを掛ける操作は反時計回りへ90°回転させることです。
複素数の足し算は、横どうし・縦どうし
(a + jb) + (c + jd) = (a + c) + j(b + d)
(a+jb)+(c+jd)=(a+c)+j(b+d)
実部どうし、虚部どうしを足します。
ベクトルの横成分と縦成分を
それぞれ足すことと同じです。
掛け算ではj²=−1へ戻す
(a + jb)(c + jd)
\displaystyle (a+jb)(c+jd)
= ac + jad + jbc + j²bd
\displaystyle =ac+jad+jbc+j^2bd
= (ac − bd) + j(ad + bc)
\displaystyle =(ac-bd)+j(ad+bc)
普通のかっこの展開と同じです。
最後にj²を−1へ置き換えます。
インピーダンスは、抵抗とリアクタンスの合成
交流回路で、電流の流れにくさを表すのが
インピーダンスZです。
Z = R + jX
Z=R+jX
Rは抵抗。
Xはリアクタンスです。
コイルは+方向、コンデンサは−方向として、
X = XL − XC
X=X_L-X_C
と表します。
Z = R + j(XL − XC)
Z=R+j(X_L-X_C)

直交形式と極形式は、同じものの別の見方
R+jXの形を直交形式といいます。
横と縦の成分が分かるため、
足し算・引き算に向いています。
一方、大きさと角度で表す形を極形式といいます。
Z = |Z|∠θ
Z=|Z|\angle\theta
極形式は、掛け算・割り算に向いています。

RとXから、大きさと角度を求める
|Z| = √(R² + X²)
|Z|=\sqrt{R^2+X^2}
θ = tan⁻¹(X / R)
\theta=\tan^{-1}\left(\frac{X}{R}\right)
三平方の定理と三角比が、
ここでもそのまま使われています。
たとえばR=3Ω、X=4Ωなら、
Z = 3 + j4 Ω
Z=3+j4\,\mathrm{\Omega}
|Z| = √(3² + 4²) = 5 Ω
|Z|=\sqrt{3^2+4^2}=5\,\mathrm{\Omega}
θ = tan⁻¹(4 / 3) ≒ 53.1°
\theta=\tan^{-1}\left(\frac{4}{3}\right)\fallingdotseq53.1^\circ
Z = 5∠53.1° Ω
Z=5\angle53.1^\circ\,\mathrm{\Omega}
複素数のオームの法則
交流でも、オームの法則の形は変わりません。
V̇ = Zİ
\dot{V}=Z\dot{I}
İ = V̇ / Z
\dot{I}=\frac{\dot{V}}{Z}
電圧が100∠0°V、
インピーダンスが5∠53.1°Ωなら、
İ = (100∠0°) / (5∠53.1°)
\displaystyle \dot{I}=\frac{100\angle0^\circ}{5\angle53.1^\circ}
İ = 20∠−53.1° A
\dot{I}=20\angle(-53.1^\circ)\,\mathrm{A}
極形式の割り算では、
大きさを割り、角度を引きます。
電流が電圧より53.1°遅れることまで、
一つの答えに含まれています。
コイルとコンデンサの符号
ZL = jXL
Z_L=jX_L
ZC = −jXC
Z_C=-jX_C
コイルは虚軸の+方向。
コンデンサは虚軸の−方向です。
符号を丸暗記するのではなく、
ベクトル図で90°進むか遅れるかと結びつけます。
よくある五つの間違い
① jをただの記号として扱う
j²=−1であり、90°回転を表します。
② 実部と虚部を混ぜて足す
横どうし、縦どうしを計算します。
③ コイルとコンデンサを同じ符号にする
コイルは+j、コンデンサは−jです。
④ 直交形式のまま割り算を急ぐ
極形式へ変えると大きさと角度で計算できます。
⑤ 角度の象限を確認しない
RやXが負になる場合は、点がどの象限にあるかを見ます。

STEP1まとめ
複素数は、実部と虚部を一つにまとめた数です。
jを掛けることは、90°回転させること。
R+jXは横と縦の成分を表し、
|Z|∠θは大きさと角度を表します。
分数・式変形・指数・グラフ・連立方程式・三角比・ベクトル。
STEP1で学んだ数学は、すべて複素数と交流回路へつながっています。
数学は、あなたを試すための壁ではありません。
電気で起きていることを、短く正確に伝えるための言葉です。
次のSTEP
STEP2
電気の現象を数式にする
次は、数学の道具を使って
電圧・電流・抵抗・電力などの現象を読み解きます。
公式を覚える前に、
電気が何をしているのかを見ていきましょう。
公式LINE
STEP1の内容を実際に手を動かして確認できる
電気数学ドリルと学習シートを用意しています。
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