Lesson6 三角比|sin・cos・tanを交流へつなぐ
sin、cos、tanが出てきた瞬間、
高校数学へ戻されたように感じる。
公式を三つ覚えたけれど、
どの辺を使えばよいのか分からない。
でも、三角比は難しい記号の
集まりではありません。
角度が決まったとき、三角形の辺どうしがどんな割合になるかを表す道具です。
そして電気では、
回転・波・位相差を読むための言葉になります。

三角比は、角度と辺の割合をつなぐ
直角三角形で、基準にする角をθとします。
θの向かい側が対辺。
θに接する辺が隣辺。
直角の向かい側で最も長い辺が斜辺です。
sinθ = 対辺 / 斜辺
\sin\theta=\frac{\text{対辺}}{\text{斜辺}}cosθ = 隣辺 / 斜辺
\cos\theta=\frac{\text{隣辺}}{\text{斜辺}}tanθ = 対辺 / 隣辺
\tan\theta=\frac{\text{対辺}}{\text{隣辺}}対辺と隣辺は、角θをどこに置くかで変わります。
最初に角を指で確認してから、
向かい側と隣を見てください。

三平方の定理が、三つの辺をつなぐ
隣辺をa、対辺をb、斜辺をcとすると、
a² + b² = c²
a^2+b^2=c^2
が成り立ちます。
二つの辺が分かれば、残りの一辺を求められます。
また、sinとcosにも次の関係があります。
sin²θ + cos²θ = 1
\sin^2\theta+\cos^2\theta=1
三角比は別々の暗記項目ではなく、
同じ直角三角形を違う組み合わせで見ています。
よく使う角度は、形から思い出せる
30°、45°、60°は電気の計算でもよく現れます。
sin30° = 1 / 2
\sin30^\circ=\frac{1}{2}
cos60° = 1 / 2
\cos60^\circ=\frac{1}{2}
sin45° = cos45° = 1 / √2
\sin45^\circ=\cos45^\circ=\frac{1}{\sqrt{2}}
表を丸ごと覚えるより、
正三角形を半分にした形と正方形の対角線から
思い出せるようにすると忘れにくくなります。
回転する矢印の高さが、正弦波になる
交流の正弦波は、
円の上を回る矢印の先端を
横から見た動きとして表せます。

v(t) = Vₘ sin(ωt)
v(t)=V_m\sin(\omega t)
Vₘは最大値。
ωtは、その瞬間の回転角です。
矢印が真上ならsinは1で最大値。
水平ならsinは0で、瞬時値も0になります。
正弦波は、突然現れた曲線ではありません。
一定の速さで回転する動きを、
時間に沿って並べた形です。
角速度ωは、1秒間にどれだけ回るか
ω = 2πf
\omega=2\pi f
fは周波数です。
1回転は360°ですが、
数式では2πラジアンとして表します。
50Hzなら1秒間に50回転。
角速度は100π rad/sです。
ω = 2π × 50 = 100π rad/s
\omega=2\pi\times50=100\pi\,\mathrm{rad/s}
位相差は、二つの波の時間のずれ
二つの正弦波の山が同じ位置なら、同相です。
山の位置がずれていれば、
位相差があります。

電圧を基準にして、電流が遅れているのか、
進んでいるのかを角度で表します
時間のずれを、回転角のずれとして読んでいるのです。
力率のcosθは「同じ向きの割合」
交流電力の基本式を見ます。
P = VI cosθ
P=VI\cos\theta
cosθは力率です。
電圧と電流の位相がそろっていればθ=0°。
cos0° = 1
\cos0^\circ=1
電圧と電流の積VIが、すべて有効電力になります。
位相差が大きくなるとcosθは小さくなり、
同じ電圧・電流でも有効に使える電力は減ります。

有効・無効・皮相電力も直角三角形になる
S = VI
S=VI
P = S cosθ
P=S\cos\theta
Q = S sinθ
Q=S\sin\theta
S² = P² + Q²
S^2=P^2+Q^2
皮相電力Sが斜辺、
有効電力Pが隣辺、無効電力Qが対辺です。
三角比と三平方の定理が、
そのまま電力の関係を表しています。
数値で確認する
V=100V、I=10A、力率0.8なら、
P = 100 × 10 × 0.8
\displaystyle P=100\times10\times0.8
P = 800 W
P=800\,\mathrm{W}
皮相電力1000VAのうち、
800Wが実際に仕事へ使われる有効電力です。
よくある四つの間違い
① 対辺と隣辺を固定して覚える
基準の角θが変われば、
対辺と隣辺も入れ替わります。
② sin・cos・tanを別々に丸暗記する
同じ直角三角形の辺の割合です。
③ 度とラジアンを混ぜる
計算機の角度設定も確認します。
④ 力率をただの数字として扱う
電圧と電流がどれだけ同じ向きかを
表しています。
まとめ
三角比は、角度と辺の割合をつなぐ道具です。
円運動を横から見れば正弦波になり、
波のずれは位相差になります。
cosθは、交流電力のうち
同じ向きに働く割合を表します。
sin・cos・tanを暗記する前に、どの角と、どの辺を比べているのかを見てください。
次の記事
STEP1 Lesson7
ベクトル
次は、大きさだけでなく方向を持つ量を扱います。
三角形の辺の関係を、
矢印の足し算と交流のベクトル図へつなげます。
公式LINE
三角比と力率を、図と計算で確認できる
電気数学ドリルを用意しています。



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