STEP2|直流回路を読む
Lesson 9|電力と電力量|何A流れるかの先にある「どれだけ働いたか」
電圧と電流を求めたら、
回路の計算は終わり。
そう感じるかもしれません。
でも実際の設備で知りたいのは、
その電気がどれだけ働いたかです。
電力は、エネルギーを使う速さ。
電力量は、その状態が続いた時間まで含めた量。
この二つを分けて考えれば、
WとWhの迷いも減っていきます。
電力は、1秒あたりのエネルギー
P=\frac{W}{t}同じ仕事を短い時間で終えるほど、
仕事をする速さは大きくなります。

電力Pの単位は、W(ワット)です。
1\,\mathrm{W}=1\,\mathrm{J/s}1Wは、1秒間に1Jのエネルギーが
変換される速さを表します。
直流回路の電力はP=VI
直流回路では、電圧と電流から
電力を求められます。
同じ電圧なら、電流が大きいほど
電力も大きくなります。
同じ電流なら、電圧が大きいほど
電力も大きくなります。
まず中心になる式は、P=VIです。
三つの公式は、別々に覚えなくていい
P=VIにオームの法則を組み合わせると、
ほかの形を作れます。
V=IRを代入すると、
P=I^2RI=V/Rを代入すると、
P=\frac{V^2}{R}
三式を別々に丸暗記する必要はありません。
問題で分かっている量に合わせて、
P=VIから不要な文字を置き換えます。
同じ電流か、同じ電圧かで答えが逆になる
ここは、電力で特に間違えやすいところです。
同じ電流を流すなら、
P=I^2R抵抗Rが大きいほど、電力Pは大きくなります。
一方、同じ電圧を加えるなら、
P=\frac{V^2}{R}抵抗Rが大きいほど、電力Pは小さくなります。

「抵抗が増えれば電力は増える」と
一つに決めることはできません。
何を一定にしたのか。
問題文で必ず確認しましょう。
電力量は、電力と時間の積
電力Pの機器を、時間tだけ使ったときの
電力量Wは、
で求められます。
電力が同じでも、使う時間が長くなれば
電力量は大きくなります。
W・Wh・Jを整理する
Wは電力の単位です。
エネルギーを使う速さを表します。
WhやkWhは電力量の単位です。
電力に時間を掛けた量です。
Jも電力量・エネルギーの単位です。
W[\mathrm{J}]=P[\mathrm{W}]\times t[\mathrm{s}] 1\,\mathrm{kWh}=3.6\times10^6\,\mathrm{J}
WとWhは見た目が似ていますが、
表しているものが違います。
答えを出したら、最後に単位まで確認しましょう。
例題|500Wの機器を3時間使う
100Vで5A流れる機器の電力を求めます。
P=VI=100\times5=500\,\mathrm{W}500Wは、0.5kWです。
これを3時間使うと、
W=0.5\,\mathrm{kW}\times3\,\mathrm{h}=1.5\,\mathrm{kWh}Jへ直すと、時間を秒にそろえます。
W=500\times(3\times3600)=5.4\times10^6\,\mathrm{J}
kWとhを使えばkWh。
Wとsを使えばJになります。
ジュール熱も同じ流れで考える
抵抗で発生する熱量Qは、
Q=I^2Rtと表せます。
これも別の公式として覚えなくて大丈夫です。
Q=Pt=(I^2R)t電力I²Rに時間tを掛けたものが、
発生した熱量になります。
はるの気づき
私は以前、電力の三式を
別々の公式として覚えていました。
そのため、どれを使うのかを
毎回くじ引きのように選んでいました。
でも、中心は一つです。
P=VIあとはオームの法則で、
不要な文字を置き換えるだけです。
公式が増えたように見えたら、
「元はどこから来たのか」へ戻りましょう。
電験3種では、ここを確認する
- WとWhを混同していないか
- 秒・時間・W・kWをそろえたか
- 同じ電圧か、同じ電流かを確認したか
- I²とV²の2乗を落としていないか
- 答えの単位がW・Wh・Jのどれか
まとめ
電力は、エネルギーが変換される速さです。
P=VI電力量は、その電力が続いた時間まで含めます。
W=Pt公式を選ぶ前に、分かっている量と
求める量の単位を確認しましょう。
次は、複数の電源がある回路を
一つずつ、または簡単な等価回路にして読みます。
EXERCISE
読んだ直後に、6問だけ。
最初の3問は、計算しません。
頭の中で答えてから、選んでください。
問1予想 ★★☆
加える電圧を一定にしたまま、抵抗を2倍にしました。消費電力はどうなりますか。
- ①2倍
- ②半分
- ③変わらない
- ④4倍
答えを見る
② 半分
電圧が同じで抵抗が2倍なら、電流は半分になります。
電力は P = VI。電圧はそのままで電流が半分なので、電力も半分です。
式で見ると P = V²/R。R が分母にあるので、抵抗が増えれば電力は減ります。
問2予想 ★★★
今度は電流を一定にしたまま、抵抗を2倍にしました。消費電力はどうなりますか。
- ①2倍
- ②半分
- ③変わらない
- ④4倍
答えを見る
① 2倍
電流が同じで抵抗が2倍なら、その抵抗にかかる電圧は2倍になります。
電流はそのままで電圧が2倍なので、電力も2倍。
式で見ると P = I²R。R が分子にあります。
問1と答えが逆になっています。同じ「抵抗を2倍」でも、何を一定に保つかで結論が変わる。「抵抗が増えれば電力は増える」と一つに決めることはできません。何を一定にしたのか、問題文で必ず確認してください。
問3式を選ぶ ★☆☆
「電圧」と「抵抗」だけが分かっています。消費電力を求めるのに使う式はどれですか。
- ①P = V²/R
- ②P = I²R
- ③P = VI
答えを見る
① P = V²/R
3つの式は別々のものではありません。中心は P = VI ひとつです。
そこに V = IR を代入すれば P = I²R、I = V/R を代入すれば P = V²/R。
選び方は「いま手元にある2つが入っている式」——それだけです。
②を選ぶと、まず電流を求める1手が余分に必要になります。答えは合いますが、時間を損します。公式が増えたように見えたら、「元はどこから来たのか」へ戻ってください。
問4まちがい探し ★★★
次の説明には誤りがあります。どこでしょうか。
P = I²R より R が2倍なので、消費電力も2倍になり、より熱くなる。」
- ①電圧が一定の場面なのに、電流一定の式で判断している
- ②P = I²R という式そのものが誤り
- ③抵抗が2倍、という前提が誤り
- ④誤りはない。説明は正しい
答えを見る
誤り:電圧が一定の場面なのに、電流一定の式で判断している
コンセントは 100 V で固定です。変わらないのは電圧の方。
使うべきは P = V²/R で、消費電力は半分になります。
P = I²R 自体は正しい式ですが、R が変われば I も変わることを見落としています。
3つの式は等価です。それでも、「何が変わらないか」を先に決めないと、正しい式から間違った結論に届いてしまいます。問題文の中で固定されている量に、まず印をつけてください。
問5計算 ★☆☆
200 V の電源に 40 Ω の抵抗をつなぎました。消費電力は何 W ですか。
- ①1000 W
- ②5 W
- ③8000 W
- ④0.2 W
答えを見る
1000 W(=1 kW)
分かっているのは電圧と抵抗。P = V²/R = 200²/40 = 40000/40 = 1000 W
別の道でも同じ:I = 200/40 = 5 A → P = 200 × 5 = 1000 W
2乗を落とさないこと。200/40 = 5 としてしまう失点が多いところです。1 kW はドライヤー1台ぶんくらい——数字に生活の実感をひもづけておくと、桁を間違えたときに気づけます。
問6計算(電験3種の形)★★☆
問5の 1000 W の機器を、30分間つかいました。
(1) 電力量は何 kWh ですか。 (2) それは何 J ですか。
- ①(1) 0.5 kWh (2) 1.8 × 10⁶ J
- ②(1) 30 kWh (2) 1.8 × 10⁶ J
- ③(1) 0.5 kWh (2) 500 J
- ④(1) 1 kWh (2) 3.6 × 10⁶ J
答えを見る
(1) 0.5 kWh (2) 1.8 × 10⁶ J
(1) kWh を出すなら、kW と h をそろえます。
1000 W = 1 kW、30分 = 0.5 h → 1 × 0.5 = 0.5 kWh
(2) J を出すなら、W と s をそろえます。
30分 = 1800 s → 1000 × 1800 = 1.8 × 10⁶ J
検算:1 kWh = 3.6 × 10⁶ J なので、0.5 × 3.6×10⁶ = 1.8×10⁶ J ✓
kW と h を使えば kWh。W と s を使えば J。どちらの単位で答えるかを先に決めれば、途中で迷いません。電力 [W] は「今この瞬間の勢い」、電力量 [Wh] は「合計でどれだけ働いたか」。見た目は似ていますが、表しているものが違います。
6問、おつかれさまでした。
問1〜問4が答えられたなら、この記事は身についています。
迷ったところがあれば、その見出しにだけ戻ってください。全部を読み直す必要はありません。
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次はSTEP2-10へ進みます。



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