Lesson5 電位と電位差|STEP2の「高さ」を静電気から見直す

STEP2 Lesson1で、
こう書きました。
水は、高い場所から低い場所へ流れます。
電気でも、二つの点の状態に差があると電荷が動きます。この電位の差を、電圧といいます。
あのとき「電位」という言葉を、
説明せずに使いました。
このLessonで回収します。
そして同時に、STEP3で最も失点が多い分かれ道をはっきりさせます。
- 電界は、距離の 2乗 で効く
- 電位は、距離の 1乗 で効く
この違いを、
理由ごと押さえます。
電位は「1 Cあたりのエネルギー」

Lesson3で、
電界をこう定義しました。
電界=1 Cあたりに働く力
電位は、
その相棒です。
V=\frac{W}{Q}\ [\mathrm{V}]電位=1 Cあたりが持っているエネルギー
W はエネルギー(仕事)[J]、Q は電荷[C]。
つまり 1 V とは、1 Cあたり 1 J のエネルギーを持っている状態です。
1\ \mathrm{V}=1\ \mathrm{J/C}そして式を並べ替えれば、
W=QV電荷 Q が電位差 V の区間を移動したときに、
やりとりされるエネルギーです。
STEP2 Lesson9の電力 P=VI とも、
地続きです。
両辺に電流を掛ければ、
単位時間あたりの話になります。
力とエネルギーの関係が、そのまま出てくる

坂道の話に戻ります。
Lesson3で、
電界を「坂の傾き」にたとえました。
では電位は何か。
高さです。
| 電界 | 電位 | |
|---|---|---|
| たとえ | 坂の傾き | 高さ |
| 1 Cあたりの | 力 | エネルギー |
| 単位 | [V/m] | [V] |
| 向き | ある(矢印) | ない(数値だけ) |
ここが決定的です。
電界は向きを持ちますが、
電位は向きを持ちません。
だから電界の合成は矢印を足しますが、
電位の合成はそのまま数を足すだけです。
複数の電荷があるとき、
電位の計算のほうがずっと楽なのは、
このためです。
なぜ電位は1乗なのか

高さと傾きの関係を思い出してください。
傾き × 距離 = 高さの差
電気でも同じです。
一様電界(Lesson4で出た、
平板の間の電界)では、
- V:2点間の電位差[V]
- E:電界[V/m]
- d:距離[m]
この式から、
単位の関係も出ます。
Lesson3で [N/C]と書いていた電界の単位は、[V/m]と同じものでした。
ここで回収です。
そして、
点電荷の場合。
電界が 1/r² で効くところに、
距離 r を掛ける形になるので、
r が1乗になります。
- 電界:分母が r²
- 電位:分母が r
分母の違いは、
距離を掛けたかどうかの違いです。
丸暗記しなくても、
区別できます。
基準をどこに置くか

STEP2で「電圧は二点間の差だから、
基準を決めないと数字にならない」と書きました。
電位も同じです。
基準が必要です。
静電気では、
二つの基準がよく使われます。
-
無限遠を 0 とする(点電荷の問題)
電荷から無限に離れれば影響はゼロ、という考え方。V = kQ/r はこの基準です。 -
大地(接地)を 0 とする(実際の設備)
接地記号があれば、そこが 0 V です。
問題文に「無限遠を基準とする」「接地されている」と書いてあったら、
それは基準の指定です。
読み飛ばさないでください。
電位の合成は、足すだけ
電荷が2つあるとき、
ある点の電位は、
向きを考える必要はありません。
符号だけ気をつけて、
そのまま足します。
負の電荷なら、Q に負号を入れます。
ここで、Lesson3の問4を思い出してください。
同じ正電荷2つの、
ちょうど真ん中の点。
電界は、
左右から反対向きに来て打ち消し合って 0 でした。
では電位は。
向きがないので、
打ち消しません。
二つの電荷による電位が足し算され、
正の値になります。
電界は0なのに、
電位は0ではない。
これがSTEP3で最も出題される「引っかけ」です。
混同していると、
必ず落とします。
計算する前に、予想する
ある点の電位が 60 V でした。
電荷からの距離を3倍にすると、
電位はいくつになりますか。
電位は1乗で効くので、1/3。20 Vです。
同じ条件で、
電界はどうなりますか。
電界は2乗で効くので、1/9になります。
同じ「距離3倍」でも、答えが違います。
何を問われているかを、必ず先に確認してください。
小さな数字で確認する
V=k\frac{Q}{r}=9\times10^9\times\frac{3\times10^{-6}}{0.9}真空中に 3 μC の点電荷があります。0.9 m 離れた点の電位は。
分子から。
9\times10^9\times3\times10^{-6}=27\times10^{3} V=\frac{27\times10^{3}}{0.9}=3\times10^{4}\ \mathrm{V}30 000 Vです。
同じ点の電界も出しておきます。
E=k\frac{Q}{r^2}=\frac{27\times10^{3}}{0.81}\approx3.3\times10^{4}\ \mathrm{V/m}数字が近いので紛らわしいですが、
単位が違います。[V]と[V/m]。
もう一つ、
一様電界の例です。
平行に置いた2枚の板の間に 200 V を加えました。
板の間隔は 2 mm です。
間の電界は。
まず単位。2 mm = 0.002 m。
E=\frac{V}{d}=\frac{200}{0.002}=1\times10^{5}\ \mathrm{V/m}100 000 V/mです。
わずか 2 mm でも、電位差が 200 V あれば電界はこれだけ強くなります。
間隔を狭くすると電界が強くなる——この感覚が、Lesson7の C = εS/d でそのまま効きます。
はるの気づき
電界と電位を、
私は長いあいだ混ぜていました。
どちらも「電」がついていて、どちらも点電荷の式があって、どちらも分母に r がある。
違いは 2乗か1乗か——そう暗記していました。
だから、
少しひねられると崩れました。
分かれたのは、
たとえを分けてからです。
電界は傾き。
電位は高さ。
傾きは向きがある。高さは向きがない。
だから電界は打ち消し合うことがあり、電位は打ち消し合わない。
そして「傾き × 距離 = 高さ」だから、
電位のほうが r が1つ少ない。
二つの言葉を、
二つの絵に分けた。
それだけで混ざらなくなりました。
似ているものを覚え分けようとすると混ざります。
違う絵にすると、
混ざりません。
電験3種では、ここを確認する
出題のされ方は、
主に4つです。
-
点電荷の電位を求める
V = kQ/r。分母が r であることを、電界と間違えない。 -
複数電荷の電位を求める
符号を付けて、そのまま足す。向きは不要。 -
「電界が0の点」と「電位が0の点」を区別する問題
同じ正電荷2つなら、中点は電界0・電位は正の値。大きさが同じ正電荷と負電荷なら、中点は電位0・電界は0でない。この対比は頻出です。 -
一様電界での V = Ed
平行板の問題。mm → m の換算を忘れない。
3つ目が、
このLessonの本丸です。
図を描いて、
矢印(電界)と数値(電位)を別々に書き込んでください。
まとめ
電位は、1 Cあたりが持っているエネルギー。
V=\frac{W}{Q},\qquad W=QV,\qquad V=k\frac{Q}{r}一様電界では、
V=Ed,\qquad E=\frac{V}{d}- 電界は傾き、向きがある、距離の2乗で効く
- 電位は高さ、向きがない、距離の1乗で効く
- 電界の合成は矢印、電位の合成は足し算
- 電界が0でも、電位は0とはかぎらない
[N/C]と[V/m]は同じものです。
次からは、ここまでの5つのLessonを一つの部品に集約します。
コンデンサです。
電荷をためる、
電圧がかかる、
間に電界ができる、
エネルギーを持つ——全部つながります。
電界は傾き、
電位は高さ。
分かれたかどうか、6問で確認します。
EXERCISE
読んだ直後に、6問だけ。
最初の3問は、
計算しません。
頭の中で答えてから、
答えを開いてください。
問1予想 ★★☆
点電荷からの距離を2倍にしました。
電位と電界は、
それぞれ何倍になりますか。
① 電位1/2・電界1/4 ② 電位1/4・電界1/2 ③ どちらも1/4
答えを見る
① 電位1/2・電界1/4
電位は V = kQ/r → 分母が1乗 → 1/2
電界は E = kQ/r² → 分母が2乗 → 1/4
覚え方ではなく、
理由で押さえてください。
傾き × 距離 = 高さ。
電位は電界に距離を掛けた形なので、r が1つ減ります。
問2予想 ★★★
同じ大きさの正電荷を2つ離して置きました。
その中点では、
電界と電位はどうなっていますか。
① 電界0・電位0 ② 電界0・電位は0でない ③ 電界は0でない・電位0
答えを見る
② 電界0・電位は0でない
電界は向きがあるので、
左右から反対向きに来て打ち消し合います → 0。
電位は向きがないので、
打ち消しません。
両方を足すので、
むしろ大きな値になります。
これがSTEP3で最も出題される引っかけです。
電界が0だから電位も0、
は成り立ちません。坂で言えば「傾きが0の場所(平ら)=高さも0」ではない、
というのと同じこと。
傾きが0でも、
高さは0とは限りません。
問3単位を選ぶ ★☆☆
[V/m]は、
次のどれと同じ単位ですか。
① [N/C] ② [J/C] ③ [C/m]
答えを見る
① [N/C]
どちらも電界の単位です。
Lesson3の定義から E = F/Q → [N/C]、
このLessonの E = V/d → [V/m]。
同じものを別の入口から書いただけです。
ちなみに②の[J/C]は電位[V]です。1 V は「1 Cあたり1 J」。
選択肢に[V/m]が出ても、
電界だと分かれば迷いません。
問4まちがい探し ★★☆
次の解答には誤りがあります。
どこでしょうか。
「2 μC の点電荷から 0.5 m 離れた点の電位を求める。
V = 9×10⁹ × 2×10⁻⁶ ÷ 0.5² = 7.2×10⁴ V」
答えを見る
誤り:分母を r² にしている(電界の式を使っている)
電位の分母は r の1乗です。
正しくは V = 9×10⁹ × 2×10⁻⁶ ÷ 0.5 = 18×10³ ÷ 0.5 = 3.6×10⁴ V
ちなみに 7.2×10⁴ は、
この点の電界の値(V/m)です。
答えの数字自体は「どこかの正解」なので、
選択肢に必ず混ぜてあります。
単位を見れば見抜けます——問われているのが[V]か[V/m]か、
先に確認してください。
問5計算 ★☆☆
平行に置いた2枚の板の間隔が 5 mm、
間に 250 V を加えました。
板の間の電界は何 V/m ですか。
答えを見る
5×10⁴ V/m
まず単位。5 mm = 0.005 m
E = V/d = 250 ÷ 0.005 = 50 000 = 5×10⁴ V/m
板の間は一様電界なので、
どの位置でも同じ強さです(Lesson4)。
点電荷のように距離で弱まりません。
ここを取り違えると、Lesson7のコンデンサで全部ずれます。
問6計算(電位と電界を分ける)★★★
真空中に 4 μC の点電荷があります。0.6 m 離れた点の電位と電界を、
それぞれ求めてください。
答えを見る
電位 6×10⁴ V / 電界 1×10⁵ V/m
共通部分を先に:9×10⁹ × 4×10⁻⁶ = 36×10³
電位(分母は r):36×10³ ÷ 0.6 = 6×10⁴ V
電界(分母は r²):36×10³ ÷ 0.36 = 1×10⁵ V/m
確認:電界 ÷ 電位 = 1×10⁵ ÷ 6×10⁴ ≈ 1.67 = 1/0.6
きれいに 1/r の差になっています。
電界と電位は、
距離1つ分だけ違う——この関係が見えていれば、
片方が出ればもう片方はすぐ出せます。
ここまでで STEP3 の前半、
空間の話は終わりです。
次からは部品(コンデンサ)に入ります。
6問、
おつかれさまでした。
問2と問4が答えられたなら、STEP3で最も多い失点を避けられています。
迷ったら「電界は傾き、
電位は高さ」に戻ってください。



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