Lesson3 電界|空間のどこにいても働く力を、矢印で描く

Lesson2で、
二つの電荷の間に働く力を求めました。
ここで、
少し困ることが起きます。
電荷Aのまわりに、
電荷Bを置いた。
力は何Nか。
これは解けます。
では、Bを置く場所を変えたら? Bの大きさを変えたら?
Bを置かなかったら、そこには何もないのか?
一つ置くたびに計算し直すのは、面倒です。
そして「何もないのか」という問いには、答えられません。
そこで考え方を変えます。
電荷を置く前に、
空間の側に「力の下ごしらえ」ができている。
これが電界です。
電界は「1 Cあたりの力」

電荷Aのまわりのある点に、1 Cの電荷を置いたとします。
そのとき働く力の大きさと向き——それがその点の電界です。
置いた電荷 Q で割っているので、
置く電荷の大きさに関係なく決まる量になります。
そして、
電界が分かっていれば、
力はすぐ出せます。
STEP2で使った形に似ています。
| STEP2 | STEP3 |
|---|---|
| V=IR(回路の関係) | F=QE(力の関係) |
「掛け算の形にして、
必要な量を取り出す」——やっていることは同じです。
大事なのは、置く前から決まっていること

ここが、
電界でいちばん誤解されるところです。
電界は、
電荷を置かなくてもそこにあります。
- 2 Cの電荷を置けば、力は2倍になる
- 0.5 Cの電荷を置けば、力は半分になる
- でも、電界そのものは変わらない
「その場所が持っている性質」だと考えてください。
坂道にたとえると分かりやすくなります。
坂の傾きは、そこに何を置くかとは無関係に決まっています。
重いものを置けば大きな力で転がり、軽いものなら小さな力。
でも、傾きは同じです。
電界は、この「傾き」にあたります。
実際にLesson5で、電界が電位の傾きであることが式で出てきます。
電界には向きがある

電界は大きさだけでなく、
向きを持っています。
向きの決め方は一つだけ。
正の電荷を置いたときに、
力を受ける向き
これで全部決まります。
- 正の点電荷のまわり → 電界は外向き(正どうしは反発するから)
- 負の点電荷のまわり → 電界は内向き(正の電荷は引き寄せられるから)
問題を解くときは、
まずここを図に描いてください。
そして、
負の電荷を置いた場合は、
受ける力は電界と逆向きになります。
の Q に負の符号を入れれば、
自動的に逆向きになります。
符号を落とさないでください。
点電荷がつくる電界

Lesson2のクーロンの法則から、
電界の式が出せます。
電荷 Q から距離 r の点に、
試しの電荷 q を置いたときの力は、
これを q で割れば、
電界です。
試しの電荷 q が、きれいに消えました。
電界が、置く電荷に関係しない量であることが、式の上でも確認できます。
そして誘電率を使った形も、
あわせて書いておきます。
ここでも 4π が出てきます。Lesson4で正体を明かします。
計算する前に、予想する
電界も、
距離の2乗で効きます。
力と同じです。
ある点の電界が 100 N/C でした。
電荷からの距離を2倍にすると、電界はいくつになりますか。
計算せずに言えます。2乗で効くので 1/4。25 N/C。
では、
電荷の大きさを3倍にしたら。
電界は電荷に比例するので、3倍。300 N/C。
Lesson2で身につけた読み方が、
そのまま使えます。
電界の合成は、矢印を足す
電荷が2つ以上あるとき、
電界はそれぞれの電界を足したものになります。
ただし、
数を足すのではありません。
向きを持った量として足します。
- 同じ向きなら、足し算
- 反対向きなら、引き算
- 直角なら、三平方の定理
たとえば、2つの正電荷のちょうど真ん中の点はどうなるでしょうか。
左の電荷がつくる電界は右向き。
右の電荷がつくる電界は左向き。
大きさが同じなら、
打ち消し合って電界は0になります。
この「電界が0になる点」は、電験3種で頻出です。
そして、こういう問題は式を書く前に必ず図を描いてください。矢印を引けば、打ち消すのか強め合うのかが一目で分かります。
小さな数字で確認する
E=k\frac{Q}{r^2}=9\times10^9\times\frac{5\times10^{-6}}{0.3^2}真空中で、5 μC の点電荷から 0.3 m 離れた点の電界は。
分子から。
9\times10^9\times5\times10^{-6}=45\times10^{3}分母は 0.09。
E=\frac{45\times10^{3}}{0.09}=5\times10^{5}\ \mathrm{N/C}500 000 N/Cです。
ではこの点に、2 μC の電荷を置いたら、
働く力は。
1 Nです。
確認のため、Lesson2のクーロンの法則でも計算してみます。
F=9\times10^9\times\frac{5\times10^{-6}\times2\times10^{-6}}{0.09}=1\ \mathrm{N}一致しました。
電界を経由しても、
直接クーロンの法則を使っても、
同じ答えに着きます。
はるの気づき
「電界って、
結局なんなんですか」
これを人に聞いたとき、返ってきたのは「電気の力の場です」という説明でした。
言葉が言葉のまま返ってきただけで、何も分かりませんでした。
分かるようになったのは、
順番を逆にしてからです。
先に力があって、それを1 Cあたりに直したものが電界。
新しい概念ではなく、割り算の結果でした。
分からないものが出てきたとき、
私はいつも「これは何の言い換えだろう」と考えるようになりました。
電界は、力の言い換え。
電位は、エネルギーの言い換え(Lesson5)。
言い換えだと分かると、
覚える量が急に減ります。
電験3種では、ここを確認する
このLessonからは、
計算問題として直接出ます。
確認すべきは3つ。
-
電界か、力か、を読み分ける
問われているのが[N/C]なのか[N]なのか。F = QE を挟むだけの違いですが、ここを飛ばすと答えが合いません。 -
向きを図に描いてから、大きさを計算する
特に電荷が複数あるとき。打ち消すのか強め合うのかは、図を見れば分かります。 -
負電荷は、力が電界と逆向き
符号を式に入れておけば、自動的に処理されます。
そして、単位[N/C]は Lesson5 で[V/m]と同じであることが分かります。
選択肢に[V/m]が出てきても、驚かないでください。同じものです。
まとめ
電界は、
その場所に1 Cの電荷を置いたときに働く力。
- 電界は、電荷を置く前から空間に決まっている
- 向きは「正の電荷が受ける力の向き」
- 距離の2乗で効く(力と同じ)
- 複数あるときは、矢印として合成する
次は、この電界を目に見える形にします。
電気力線とガウスの法則です。
そこで、Lesson2から先送りにしてきた**「なぜ距離の2乗なのか」**に、
はっきり答えが出ます。
電界は「置く前から決まっている力の下ごしらえ」でした。
使える形になっているか、6問で確認します。
EXERCISE
読んだ直後に、6問だけ。
最初の3問は、
計算しません。
頭の中で答えてから、
答えを開いてください。
問1予想 ★★☆
ある点に 1 C を置くと 20 N の力を受けました。
同じ点に 3 C を置くと、
その点の電界はどうなりますか。
① 3倍になる ② 1/3になる ③ 変わらない
答えを見る
③ 変わらない
変わるのは力です。F = QE = 3 × 20 = 60 N。
電界は 20 N/C のままです。
その場所が持っている性質だからです。
坂の傾きは、
何を転がすかで変わりません。
重いものほど大きな力で転がるだけ。
電界=傾き、
力=実際に受けるもの。
この区別が、Lesson5の電位でそのまま効きます。
問2予想 ★★☆
負の点電荷のまわりの電界は、
どちらを向いていますか。
① 電荷から外向き ② 電荷へ向かう内向き ③ 向きは決まらない
答えを見る
② 電荷へ向かう内向き
電界の向きは、
正の電荷を置いたときに受ける力の向きで決めます。
正の電荷は、
負の電荷に引き寄せられます。
だから内向きです。
「正から出て、
負へ入る」。
この一文で、
電界も、
次のLessonの電気力線も、
向きが全部決まります。
迷ったら、
正の電荷を1つ置いてみてください。
問3式を選ぶ ★☆☆
電界 E の中に電荷 Q を置いたときに働く力を表す式はどれですか。
① F = Q/E ② F = QE ③ F = E/Q
答えを見る
② F = QE
電界の定義 E = F/Q を、F について並べ替えただけです。
単位でも確かめられます。[N/C]× [C]= [N] ✓
式の形を忘れても、
単位を掛け合わせれば正しい形が復元できます。STEP2の V = IR と同じ確認のしかたです。
問4まちがい探し ★★★
次の説明には誤りがあります。
どこでしょうか。
「同じ大きさの正電荷を2つ、
離して置いた。
その真ん中の点では、
両側から電界が来るので、
電界は2倍に強くなる。」
答えを見る
誤り:向きを考えずに足している。
正しくは電界 0
左の電荷がつくる電界は右向き、
右の電荷がつくる電界は左向き。
大きさが同じで向きが反対なので、
打ち消し合って E = 0 です。
電界は、
向きを持った量です。
数だけ足すと必ず間違えます。だから式より先に矢印を描く——STEP3の合言葉「見えないものは、
描いてから計算する」は、
この失点を防ぐためにあります。
問5計算 ★★☆
真空中で、2 μC の点電荷から 0.6 m 離れた点の電界は何 N/C ですか。
答えを見る
5×10⁴ N/C(50 000 N/C)
分子:9×10⁹ × 2×10⁻⁶ = 18×10³
分母:0.6² = 0.36
E = 18×10³ ÷ 0.36 = 5×10⁴ N/C
クーロンの法則との違いは、
電荷が1つしか出てこないことだけです。
もう一方の電荷を置く前の状態を計算している——それが電界です。
問6計算(別の道で確認)★★★
問5の点に、3 μC の電荷を置きました。働く力は何 N ですか。
求めたあと、クーロンの法則でも確かめてください。
答えを見る
0.15 N
道その1(電界から):
F = QE = 3×10⁻⁶ × 5×10⁴ = 15×10⁻² = 0.15 N
道その2(クーロンの法則から):
F = 9×10⁹ × (2×10⁻⁶ × 3×10⁻⁶) ÷ 0.36
= 9×10⁹ × 6×10⁻¹² ÷ 0.36 = 0.054 ÷ 0.36 = 0.15 N ✓
同じ答えに着きました。
電界は、
クーロンの法則を「置く前」と「置いた後」に分けただけ——新しい法則が増えたわけではありません。
分けておくと、
電荷が3つ4つと増えたときに一気に楽になります。
6問、
おつかれさまでした。
問1と問4が答えられたなら、
電界を「向きのある、
その場所の性質」として扱えています。
次は、
この電界を線で描きます。
距離の2乗の正体が、
そこで分かります。



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