STEP2|直流回路を読む
Lesson 5|キルヒホッフの法則|複雑な回路を2つの約束へ戻す
枝が増え、電源が二つになると、
オームの法則だけでは式を立てられないように感じます。
しかし、複雑に見える回路でも守っている約束は二つです。
- 分岐点で、電流は突然増えたり消えたりしない
- 回路を一周すると、電圧の上昇と下降はつり合う
この二つが、キルヒホッフの第1法則と第2法則です。
第1法則 分岐点へ入る電流と出る電流は等しい

一つの分岐点へ電流 I₁ が入り、
I₂ と I₃ に分かれるとします。
これは電荷保存の考え方です。
分岐点に電荷がたまり続けない定常状態では、
入ってきた量と出ていく量が一致します。
電流の向きを自分で仮定しても構いません。
計算結果が負になったら、
実際の向きが仮定と反対だったという意味です。
第2法則 閉じた回路を一周すると電圧の和は0

電源で電圧が上がり、抵抗で電圧が下がります。
同じ点へ戻れば、最初と最後の電位は同じです。
\sum V=0電源電圧を E、
抵抗を R₁、R₂、
電流を I とすると、
したがって、
\displaystyle E=I(R_1+R_2)です。
符号は丸暗記せず、
たどる向きに対して電位が上がるか下がるかで決めます。
式を立てる前に、向きを決める

キルヒホッフで混乱する最大の原因は、
途中で基準を変えることです。
- 枝電流の向きを矢印で仮定する
- 回路を一周する向きを決める
- 電源を-から+へ通るなら電圧上昇
- 抵抗を電流方向へ通るなら電圧降下
- 最後まで同じ基準を使う
例題 二つの条件から二つの電流を求める

ある回路から、次の二式が得られたとします。
\displaystyle I_1+I_2=3 \displaystyle 2I_1-I_2=0二つ目から、
\displaystyle I_2=2I_1これを一つ目へ代入します。
\displaystyle I_1+2I_1=3 I_1=1\,\mathrm{A},\qquad I_2=2\,\mathrm{A}複雑な電気の問題に見えても、
数学としてはSTEP1 Lesson5の連立方程式です。
答えが負でも、失敗ではない

仮定した電流が −0.5 A になったとします。
これは電流が存在しないという意味ではありません。
大きさは0.5 Aで、
実際の向きが仮定した矢印と逆です。
負号は、回路から返ってきた方向の情報です。
はるの気づき
キルヒホッフで止まっていた頃、
私は正しい向きを最初から
当てなければならないと思っていました。
そのため、矢印を描く前から迷っていました。
実際には、向きは仮定してよい。
必要なのは正解を当てることではなく、
最後まで同じ約束で式を書くことでした。
「負になったら逆向き」と受け取れるようになると、
符号は敵ではなくなります。
電験3種では、ここを確認する
- 分岐点では電流の式
- 閉回路では電圧の式
- 未知数の数だけ独立した式があるか
- 同じ内容の式を重ねて数えていないか
- 求めた値を元の式へ代入して確認したか
まとめ
キルヒホッフの第1法則は電流の保存。
第2法則は閉回路における電圧のつり合いです。
回路を見たら、分岐点と閉じた道を探してください。
複雑な図は、保存の約束と連立方程式へ変わります。
次は、この電圧の考え方を使い、
ブリッジ回路の中央に電流が流れない条件を読みます。
EXERCISE
読んだ直後に、6問だけ。
最初の3問は、計算しません。
頭の中で答えてから、選んでください。
問1予想 ★☆☆
ある分岐点に、3 A と 2 A が入ってきています。分岐点から出ていく電流の合計は何 A ですか。
- ①1 A
- ②5 A
- ③6 A
- ④分からない
答えを見る
② 5 A
分岐点に電荷がたまり続けることはありません。
入ってきた量と、出ていく量は一致します。
これが第1法則です。I₁ = I₂ + I₃ という式で書かれると難しく見えますが、言っているのは「電流は突然増えたり消えたりしない」——それだけです。
問2予想 ★★☆
電流の向きを自分で仮定して計算したところ、答えが −0.5 A になりました。これは何を意味しますか。
- ①計算を間違えた
- ②電流は流れていない
- ③大きさは 0.5 A で、向きが仮定と逆
- ④仮定をやり直す必要がある
答えを見る
③ 大きさは 0.5 A で、向きが仮定と逆
電流の向きは、自分で仮定して構いません。
結果が負になったら、実際の向きが矢印と反対だったという意味です。
やり直す必要はありません。
負号は、失敗の印ではなく、回路から返ってきた方向の情報です。正しい向きを最初から当てなければ——と思っていると、矢印を描く前から手が止まります。必要なのは正解を当てることではなく、最後まで同じ約束で書くことです。
問3法則を選ぶ ★☆☆
「枝分かれした3本の電流のうち、2本が分かっている。残り1本を求めたい」——使うのはどちらですか。
- ①第1法則(分岐点の電流)
- ②第2法則(閉回路の電圧)
- ③どちらでもよい
答えを見る
① 第1法則
分岐点の話なら第1法則。一周する話なら第2法則。
問題文に「分かれる」「合流する」とあれば第1、「電源から一周」とあれば第2です。
2つとも覚えていても、どちらを使うかで迷うと手が止まります。回路図を見たら、分岐点と閉じた道を探す——判断の入口を先に決めておいてください。
問4まちがい探し ★★★
次の一周の式には誤りがあります。どこでしょうか。
「E − IR₁ + IR₂ = 0」
- ①E の符号が逆になっている
- ②R₁ の項の符号が逆になっている
- ③R₂ の符号だけが逆になっている
- ④誤りはない。式は正しい
答えを見る
誤り:R₂ の符号だけが逆になっている(正しくは E − IR₁ − IR₂ = 0)
同じ向きに一周しているのに、R₁ では「下がる」、R₂ では「上がる」として書いています。
途中で基準を変えてしまったのが原因です。
2つの抵抗は同じ一本道にあり、同じ向きに電流が通ります。どちらも電圧は下がります。
正しく書けば E = I(R₁ + R₂) となり、見慣れた形に戻ります。
キルヒホッフで混乱する最大の原因は、公式を忘れることではなく、途中で基準を変えることです。①枝電流の向きを矢印で仮定する ②一周する向きを決める ③最後まで同じ基準を使う。この3つを守れば、符号は敵ではなくなります。
問5計算 ★★☆
12 V の電源に、2 Ω と 4 Ω が直列につながっています。
一周の式を立てて、電流 I と、4 Ω にかかる電圧を求めてください。
- ①I = 2 A / 4 Ω の電圧 = 8 V
- ②I = 2 A / 4 Ω の電圧 = 4 V
- ③I = 6 A / 4 Ω の電圧 = 24 V
- ④I = 1 A / 4 Ω の電圧 = 4 V
答えを見る
I = 2 A / 4 Ω の電圧 = 8 V
一周の式:12 − 2I − 4I = 0
電源で上がり、抵抗2つで下がる。合計すると 0 に戻ります。
6I = 12 → I = 2 A / 4 Ω の電圧は 4 × 2 = 8 V
検算:2 Ω 側は 4 V。4 + 8 = 12 V で電源と一致 ✓ 求めた値を元の式へ代入して確かめる——この癖をつけておくと、複雑な回路でも自分の答えを信じられます。
問6計算(電験3種の形)★★★
ある回路から、次の二つの式が得られました。
I₁ + I₂ = 5
3I₁ − 2I₂ = 0
I₁ と I₂ を求めてください。
- ①I₁ = 2 A / I₂ = 3 A
- ②I₁ = 3 A / I₂ = 2 A
- ③I₁ = 1 A / I₂ = 4 A
- ④I₁ = 2.5 A / I₂ = 2.5 A
答えを見る
I₁ = 2 A / I₂ = 3 A
二つ目の式から 2I₂ = 3I₁ → I₂ = 1.5 I₁
これを一つ目へ代入します。I₁ + 1.5I₁ = 5 → 2.5I₁ = 5 → I₁ = 2 A
したがって I₂ = 3 A
検算:2 + 3 = 5 ✓ 3×2 − 2×3 = 0 ✓
複雑な電気の問題に見えても、数学としてはSTEP1 Lesson5の連立方程式です。回路から式を2本取り出せた時点で、あとは数学の作業に変わります。ここで詰まったなら、戻る場所は電気ではなく連立方程式です。
6問、おつかれさまでした。
問1〜問4が答えられたなら、この記事は身についています。
迷ったところがあれば、その見出しにだけ戻ってください。全部を読み直す必要はありません。
次のLessonへ
次はSTEP2-6へ進みます。



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