Lesson9 コンデンサの直列と並列|抵抗と逆になる理由を構造で読む

STEP3で、最も間違えられる場所です。
理由ははっきりしています。抵抗と逆だからです。
| 直列 | 並列 | |
|---|---|---|
| 抵抗 | 足す | 逆数の和 |
| コンデンサ | 逆数の和 | 足す |
多くの参考書は、この表を出して「逆なので注意」と書きます。
その覚え方を、このLessonでは採りません。
「逆」で覚えたものは、試験会場でどちらが逆だったか分からなくなります。
反転の反転が起きて、結局五分五分になります。
代わりに、Lesson7の式に戻ります。
C=\varepsilon\frac{S}{d}面積 S が増えれば容量は増える。間隔 d が増えれば容量は減る。
これだけで、両方とも説明がつきます。
並列は「面積が増えた」のと同じ

2つのコンデンサを並列につなぎます。
両方の上側の極板がつながり、両方の下側の極板もつながっています。
これは、極板を横に並べて広げたのと同じ形です。
Lesson8で出てきた「面積の半分だけ誘電体を挟む」のと、まったく同じ構造です。
面積が増えたのだから、容量は増えます。しかも、そのまま足し算です。
C=C_1+C_2**並列は足す。**理由は、面積が足されるから。
並列で共通なのは、電圧
2つのコンデンサは、同じ2点の間につながっています。
だから、かかる電圧は同じです。
そして電荷は、それぞれの容量に応じて分かれます。
Q_1=C_1V,\qquad Q_2=C_2V**容量が大きいほうに、多くの電荷がたまる。**素直です。
直列は「間隔が広がった」のと同じ

2つのコンデンサを直列につなぎます。
外側から見ると、極板と極板の間に、もう一組の極板が挟まっている形です。
電荷が通り抜ける距離が、長くなっています。
Lesson8の「厚さの半分だけ誘電体を挟む」と同じ構造です。
間隔が増えたのだから、容量は減ります。
そして、減り方は逆数の和になります。
\frac{1}{C}=\frac{1}{C_1}+\frac{1}{C_2}なぜ逆数か。C = εS/d の d が分母にあるからです。
d を足し合わせるということは、1/C を足し合わせるということです。
\frac{1}{C}\propto dだから、間隔を足す = 逆数を足す。
**直列は逆数の和。**理由は、間隔が足されるから。
直列で共通なのは、電荷
ここが直列の要です。
直列につながれたコンデンサの、真ん中の部分を見てください。
C₁ の下側の極板と、C₂ の上側の極板が、導線でつながっています。
この部分は、外部とつながっていません。
だから、ここにある電荷の総量は変わりません。片方に +Q が現れれば、もう片方には −Q が現れます。
結果として、すべてのコンデンサに同じ電荷 Q がたまります。
Q_1=Q_2=Q容量が違っても、電荷は同じ。ここが直感に反するところです。
直列の電圧は、容量の逆比で分かれる

電荷が共通なので、
V_1=\frac{Q}{C_1},\qquad V_2=\frac{Q}{C_2}容量が小さいほうに、大きな電圧がかかります。
STEP2の分圧と比べてください。
| 大きい値の側にかかる電圧 | |
|---|---|
| 抵抗の直列 | 抵抗が大きいほうに大きい電圧 |
| コンデンサの直列 | 容量が小さいほうに大きい電圧 |
ここも逆に見えますが、理由は同じです。
- 抵抗は「にくさ」 → 大きいほど電圧を食う
- 容量は「やすさ」 → 小さいほどためにくく、電圧が上がる
Lesson6で「抵抗は"にくさ"、容量は"やすさ"、向きが逆」と書きました。
その伏線が、ここで回収されます。
逆になっているのは公式ではなく、言葉の向きです。
実務では、これが重要な意味を持ちます。
容量の小さいコンデンサに電圧が集中するので、直列使用では耐圧不足で壊れることがあります。
計算のコツ

並列
足すだけです。
C=C_1+C_2+C_3+\cdots直列(2個のとき)
逆数の和を計算し直すより、和分の積が速いです。
C=\frac{C_1C_2}{C_1+C_2}STEP2の並列抵抗で使った形と同じです。2個のときだけ使えます。
直列の検算
直列の合成容量は、必ず一番小さい容量より小さくなります。
3 μF と 6 μF なら、答えは 3 μF より小さいはず。
計算して 4 μF などと出たら、その時点で間違いです。
STEP2で「並列抵抗は一番小さい抵抗より小さい」を使ったのと、同じ検算です。
小さな数字で確認する
3 μF と 6 μF のコンデンサがあります。
並列にした場合
C=3+6=9\ \mathrm{\mu F}直列にした場合
C=\frac{3\times6}{3+6}=\frac{18}{9}=2\ \mathrm{\mu F}2 μF。一番小さい 3 μF よりさらに小さくなりました ✓
次に、直列のまま 90 V を加えます。
電荷は共通なので、
Q=CV=2\times10^{-6}\times90=1.8\times10^{-4}\ \mathrm{C}=180\ \mathrm{\mu C}それぞれの電圧は、
V_1=\frac{180}{3}=60\ \mathrm{V},\qquad V_2=\frac{180}{6}=30\ \mathrm{V}(μC ÷ μF = V なので、この計算はμのままで大丈夫です)
確認します。
60+30=90\ \mathrm{V}電源電圧に戻りました ✓
そして、容量が小さい 3 μF のほうに、大きい 60 V がかかっています ✓
容量の比が 3:6 = 1:2 に対して、電圧の比は 60:30 = 2:1。
逆比になっています ✓
はるの気づき
私はこの単元を、「抵抗の逆」として覚えていました。
そして、試験でこう考えました。
抵抗の直列は足す。コンデンサは逆だから……並列が足す? いや、直列が足す?
逆の逆が分からなくなったのです。
正解率は、五分五分でした。覚えているのに、五分五分。
抜け出せたのは、覚え方をやめてからです。
並列は、極板が横に並んで面積が増える。だから足す。
直列は、極板が縦に重なって間隔が増える。だから逆数。
C = εS/d の、S が増えるのか d が増えるのか。それだけでした。
「逆」で覚えるかぎり、基準を思い出せなければ答えが出ません。
構造で覚えれば、基準がいりません。
覚える量を減らすというのは、こういうことでした。
電験3種では、ここを確認する
出題の中心です。確認すべきは5つ。
-
直列は電荷が共通、並列は電圧が共通
これが分かっていれば、あとは Q = CV を使うだけです。 -
直列の合成は、一番小さい容量より小さくなる
計算後に必ず確認してください。 -
直列では、容量が小さいほうに大きな電圧
分圧の逆比。ここは頻出です。 -
複雑な回路は、まとめられるところからまとめる
STEP2の合成抵抗と同じ手順です。 -
誘電体を一部だけ挟む問題は、直列か並列に読み替える
Lesson8で扱ったとおり、面積を分ければ並列、間隔を分ければ直列です。
5つ目は、Lesson8とLesson9を両方やった人だけが解ける形です。
出題されると差がつきます。
まとめ
コンデンサの合成は、
\text{並列}:\ C=C_1+C_2\qquad\text{直列}:\ \frac{1}{C}=\frac{1}{C_1}+\frac{1}{C_2}理由は、C = εS/d に戻れば出ます。
- 並列 → 極板が横に並ぶ → 面積 S が増える → 足す
- 直列 → 極板が縦に重なる → 間隔 d が増える → 逆数の和
共通になる量は、
- 並列 → 電圧が共通
- 直列 → 電荷が共通
そして直列では、容量が小さいほうに大きな電圧がかかります。
抵抗の分圧と逆に見えるのは、抵抗が「にくさ」で容量が「やすさ」だからです。
次は、たまった電荷が持っているエネルギーを扱います。
½ が付く理由を、面積の図で説明します。
直列と並列は、「逆」ではなく「面積が増えるか、間隔が増えるか」でした。6問で確認します。
EXERCISE
読んだ直後に、6問だけ。
最初の3問は、計算しません。
頭の中で答えてから、答えを開いてください。
問1予想 ★★☆
同じ容量のコンデンサを2つ、並列につなぎました。合成容量はどうなりますか。
① 2倍 ② 半分 ③ 変わらない
答えを見る
① 2倍
並列は、極板が横に並んで面積が増えたのと同じです。
C = εS/d の S が2倍 → 容量も2倍。
「抵抗と逆だから……」と考え始めた人は、そこで止まってください。思い出すのは公式ではなく、極板の形です。横に並べたのか、縦に重ねたのか。それだけで決まります。
問2予想 ★★★
2 μF と 8 μF を直列につなぎ、電圧を加えました。大きい電圧がかかるのはどちらですか。
① 2 μF のほう ② 8 μF のほう ③ 同じ
答えを見る
① 2 μF のほう(容量が小さいほう)
直列では電荷 Q が共通です。V = Q/C なので、C が小さいほど V は大きくなります。
電圧の比は容量の逆比で、8 : 2 = 4 : 1。
抵抗の直列は「大きい抵抗に大きい電圧」でした。逆に見えますが、理由は一つ。抵抗は「にくさ」、容量は「やすさ」。ためにくいほうが、先に電圧が上がってしまうのです。実務でも、直列使用時は小容量側の耐圧が問題になります。
問3言葉を選ぶ ★★☆
コンデンサを直列につないだとき、すべてに共通なのはどれですか。
① 電圧 ② 電荷 ③ 容量
答えを見る
② 電荷
直列でつながれた中間の極板どうしは、外部とつながっていません。だから片方に +Q が現れれば、必ずもう片方に −Q が現れます。
結果、容量が違っても電荷はすべて同じになります。
並列なら共通なのは電圧です。直列=電荷共通、並列=電圧共通——この2行が入っていれば、あとは Q = CV を使うだけで全部解けます。STEP2の「直列は電流共通、並列は電圧共通」と同じ役割の2行です。
問4まちがい探し ★★☆
次の解答には誤りがあります。どこでしょうか。
「4 μF と 12 μF を直列につないだときの合成容量を求める。
C = 4 + 12 = 16 μF」
答えを見る
誤り:直列なのに足している(抵抗と混同)
正しくは和分の積で、C = (4×12) ÷ (4+12) = 48 ÷ 16 = 3 μF
気づき方:直列の合成は、必ず一番小さい容量より小さくなります。
4 μF より小さい 3 μF なら合格。16 μF は、一番大きい 12 μF よりさらに大きいので、計算する前に間違いと分かります。答えを出したら、この一言で検算してください。STEP2の並列抵抗で使ったのと同じ確認です。
問5計算 ★★☆
6 μF と 3 μF を直列につなぎ、全体に 60 V を加えました。
(1) 合成容量 (2) たまる電荷 (3) それぞれにかかる電圧を求めてください。
答えを見る
(1) 2 μF (2) 120 μC (3) 6 μF に 20 V、3 μF に 40 V
(1) C = (6×3) ÷ (6+3) = 18 ÷ 9 = 2 μF (3 μF より小さい ✓)
(2) 直列なので電荷は共通。Q = CV = 2 × 60 = 120 μC
(3) V₁ = 120 ÷ 6 = 20 V、V₂ = 120 ÷ 3 = 40 V
確認:20 + 40 = 60 V ✓ 電源電圧に戻りました。
容量の比 6:3 = 2:1 に対し、電圧の比は 20:40 = 1:2。逆比です ✓ μF と μC を混ぜたまま計算していますが、μC ÷ μF = V なので成り立ちます。慣れるまでは基本単位に直して構いません。
問6計算(組み合わせ)★★★
2 μF と 4 μF を並列につなぎ、それに 3 μF を直列につなぎました。全体の合成容量は何 μF ですか。
答えを見る
2 μF
手順1:まとめられるところからまとめる
並列部分:2 + 4 = 6 μF
手順2:残りと直列で合成
C = (6×3) ÷ (6+3) = 18 ÷ 9 = 2 μF
手順3:検算
直列を含むので、答えは 3 μF より小さいはず → 2 μF ✓
STEP2の合成抵抗とまったく同じ手順です。内側からまとめて、1つずつ減らしていく。違うのは足し算の場所だけ。回路の解き方そのものは、STEP2で身につけたものがそのまま使えます。
6問、おつかれさまでした。
問1と問2を、公式を思い出さずに答えられたなら、この単元はもう崩れません。
次は、たまった電気が持っているエネルギーです。



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