昔の私は、電球を通ったあとの電流は少し減ると思っていました。
電球が電気を使ったのだから、入口より出口の方が電流は少なくなる。そう考える方が自然に見えたのです。
ところが一本道の直列回路では、負荷の前も後も同じ電流が流れます。
I_1=I_2=I
負荷は何を使っているのでしょうか。そして、なぜ電流は減らないのでしょうか。
電流は、通過する電荷の量

電流は、ある場所を一定時間に通過する電荷の量です。
I=\frac{Q}{t}
一本道の回路を考えます。
抵抗へ1秒間に2 Cの電荷が入ったのに、出口から1 Cしか出なければ、残りの1 Cは抵抗の中へたまり続けることになります。
次の1秒も、さらにその次の1秒も同じなら、抵抗には電荷が増え続けます。
しかし、定常状態の普通の抵抗回路では、そのような蓄積は続きません。
入る電荷と出る電荷が同じだから、負荷の前後で電流も同じになります。
これは電荷保存の考え方です。
水車を通る水で考える
閉じた水路の途中に、水車があるとします。
水車は回りますが、水そのものが水車の中で消えるわけではありません。
水は水車へエネルギーを渡し、そのまま次へ流れます。
電球や抵抗も似ています。
負荷が使うのは、電荷そのものではありません。電荷が運んでいる電気エネルギーです。
減るのは電流ではなく、電位
電荷が抵抗を通ると、電気エネルギーの一部が熱や光へ変わります。
電荷1 Cあたりのエネルギーの差が電圧です。
1\,\mathrm{V}=1\,\mathrm{J/C}
例えば、電球の両端に6 Vの電圧があるなら、1 Cの電荷が電球を通る間に6 Jのエネルギーが別の形へ移ると読めます。
負荷を通ったあとに下がるのは、電荷の数ではなく、電荷1 Cあたりが持つ電気エネルギーです。
だから、
- 電流:負荷の前後で同じ
- 電圧:負荷の両端で下がる
となります。
電力は、1秒あたりに渡すエネルギー
電圧は1 Cあたりのエネルギー、電流は1秒あたりに通過する電荷です。
V=\frac{W}{Q},\qquad I=\frac{Q}{t}
二つを掛けると、
VI=\frac{W}{Q}\times\frac{Q}{t}=\frac{W}{t}
となります。
1秒あたりのエネルギーが電力なので、
P=VI
です。
電球は電流を消費しているのではなく、電荷が運ぶエネルギーを1秒ごとに光と熱へ変えています。
分岐がある場合はどうなるのか

一本道では電流はどこでも同じです。
並列回路のように道が分かれると、電流も分かれます。
I=I_1+I_2
ただし、合流したあとの電流は、分かれた電流の合計へ戻ります。
分岐点でも電荷が勝手に消えたり増えたりしないためです。
入ってくる電流の合計と、出ていく電流の合計は等しい。この考え方が、キルヒホッフの第1法則につながります。
コンデンサでは一時的に電荷がたまる
注意したいのは、いつでもどこでも電荷がたまらないわけではないことです。
コンデンサでは、極板へ電荷をためます。スイッチを入れた直後など、時間とともに状態が変わる回路では、電流も一定とは限りません。
今回扱っているのは、直流の状態が落ち着いた、一本道の抵抗回路です。
条件を確認してから「どこでも同じ」と判断します。
電験三種では、何が保存されているかを見る
回路問題で迷ったら、次の三つを分けてください。
- 電荷は勝手に消えない
- 一本道では電流は同じ
- 負荷では電気エネルギーが別の形へ変わる
「電気を使う」という日常表現を、「電流を使い切る」と読み替えないことが大切です。
まとめ
負荷を通ったあとも電流が減らないのは、電荷が負荷の中で消費されないからです。
定常状態の一本道では、入る電荷と出る電荷が同じなので、前後の電流も同じです。
負荷が受け取るのは、電荷が運ぶ電気エネルギーです。
そのため、電流は同じまま、負荷の両端で電圧が下がります。
次の「なぜ?」へ
次は、
なぜ?07 なぜ並列回路では逆数を使うの?
を考えます。
一本道では同じだった電流が、道を増やすと分かれます。そのとき、なぜ合成抵抗が元の抵抗より小さくなるのでしょうか。
確認問題
1. 直列回路で、抵抗の前後の電流が違い続けると何が起きますか。
2. 負荷が受け取るのは、電流そのものですか、電気エネルギーですか。
3. 10 Vの電圧で2 Aが流れる負荷の電力は何Wですか。
答え
1. 抵抗内に電荷がたまり続ける
2. 電気エネルギー
3. 20 W



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