【STEP3-4】電気力線とガウスの法則|見えない電界を本数で数える

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電荷から出た同じ本数の電気力線が、より大きな球面を通ると密度は?

読む前に1問。10秒で終わります。

Lesson4 電気力線とガウスの法則|見えない電界を本数で数える

無数の矢印を数本の線に間引いて電気力線にする変換図
無数の矢印を数本の線に間引いて電気力線にする変換図

Lesson2で、
こう書きました。

なぜ距離の2乗なのか。
いまは説明しません。Lesson4で種明かしをします。

その回です。

ここが分かると、
静電気の公式に出てくる が、
暗記対象ではなくなります。

電界は矢印だが、矢印は数えられない

電気力線の4つの約束(正→負、交差しない、導体に垂直、内部にない)
電気力線の4つの約束(正→負、交差しない、導体に垂直、内部にない)

Lesson3で、
電界を矢印で描きました。

でも困ったことがあります。矢印は、空間のあらゆる点にあります。
無限にある矢印を、一枚の紙に全部は描けません。

そこで、
間引きます。

矢印を数本のにまとめて、その線の混み具合で電界の強さを表す。
これが電気力線です。

  • 線が混んでいるところ → 電界が強い
  • 線がまばらなところ → 電界が弱い

電界の大きさを「本数の密度」に置き換えた、
というだけです。

電気力線の約束ごと

同じ本数が半径1m・2mの球面を通り、密度が1/4になる図
同じ本数が半径1m・2mの球面を通り、密度が1/4になる図

描き方には決まりがあります。
試験でもそのまま問われます。

  1. 正の電荷から出て、負の電荷へ入る
  2. 途中で交差しない(交差したら、その点で電界の向きが2つあることになる)
  3. 途中で枝分かれしない、消えない
  4. 導体の表面に垂直に出入りする
  5. 導体の内部には存在しない

4と5は、
あとで効いてきます。

導体の内部に電界があると、
自由電子が動き続けてしまいます。
動きが止まった状態(静電気の状態)では、
導体内部の電界は0です。

だから電気力線は導体の中に入れません。
表面で止まります。

本数を決める、たった一つの約束

4πr²の式と、分母のr²・4πが公式のどこに対応するかの対応図
4πr²の式と、分母のr²・4πが公式のどこに対応するかの対応図

ここからが本題です。

Q[C]の電荷からは、Q/ε 本の電気力線が出る。

N=\frac{Q}{\varepsilon}

これがガウスの法則です。

「なぜ ε で割るのか」は、いまは飲み込んでください。
ε(誘電率)は、その空間が電気の影響をどれだけ通しにくくするかを表す量です。ε が大きいほど、出る線が少ない。

真空中では、

\varepsilon_0=8.85\times10^{-12}\ [\mathrm{F/m}]

大事なのは、
出る本数が電荷だけで決まるということです。

電荷から 1 m 離れようと 100 m 離れようと、線の本数は変わりません。
線は途中で消えないので、必ず同じ本数が通過します。

ここで、種明かし

点電荷(広がる)と平板(広がらない=一様電界)の対比図
点電荷(広がる)と平板(広がらない=一様電界)の対比図

電荷 Q を中心にして、
半径 r の球を考えます。

出た線は、
全部この球面を通り抜けます。
本数は Q/ε 本。

球の表面積は、

S=4\pi r^2

電界の大きさは「線の密度」でした。
つまり、

E=\frac{\text{本数}}{\text{面積}}=\frac{Q/\varepsilon}{4\pi r^2}

整理すると、

E=\frac{Q}{4\pi\varepsilon r^2}

Lesson3で出した式が、
そのまま出てきました。

見てください。

  • 分母の → 球の表面積 4πr² の 4π
  • 分母の → 球の表面積 4πr² の r²

距離の2乗は、
球の表面積から来ていた。

同じ本数の線が、
距離が2倍になると4倍の面積に散らばる。
だから密度は1/4。

Lesson2で「イメージだけ持ってください」と書いたことが、
式になりました。

クーロンの法則へ戻る

電界が分かれば、
力は F = QE でした。

F=Q_2E=Q_2\times\frac{Q_1}{4\pi\varepsilon r^2}=\frac{1}{4\pi\varepsilon}\cdot\frac{Q_1Q_2}{r^2}

Lesson2で「そういう形をしている」とだけ言っていた、

k=\frac{1}{4\pi\varepsilon}

の正体がこれです。

k は謎の定数ではありませんでした。
球の表面積の逆数です。

真空中で計算してみます。

\frac{1}{4\pi\times8.85\times10^{-12}}\approx9\times10^{9}

Lesson2で使った 9×10⁹ が出てきました。

つながりました。

計算する前に、予想する

半径 1 m の球面を、ある電荷から出た電気力線が通過しています。
半径を 2 m にしたら、通過する本数はどうなりますか。

変わりません。

線は途中で消えないので、
どの大きさの球面でも同じ本数が通ります。

では、
電界はどうなりますか。

面積が 4倍になるので、
密度は 1/4。
電界は1/4です。

本数は変わらない、面積が増える、だから密度が下がる。
この3ステップが、そのまま「距離の2乗で弱まる」の中身です。

小さな数字で確認する

真空中に 6 μC の点電荷があります。
(1) 出る電気力線は何本か。
(2) 0.5 m 離れた点の電界は。

(1)

N=\frac{Q}{\varepsilon_0}=\frac{6\times10^{-6}}{8.85\times10^{-12}}\approx6.8\times10^{5}\ \text{本}

およそ68万本です。

(2) 半径 0.5 m の球の表面積は、

S=4\pi\times0.5^2=\pi\approx3.14\ \mathrm{m^2} E=\frac{N}{S}=\frac{6.8\times10^{5}}{3.14}\approx2.2\times10^{5}\ \mathrm{V/m}

確認します。Lesson3の式でも計算してみます。

E=k\frac{Q}{r^2}=9\times10^9\times\frac{6\times10^{-6}}{0.25}=2.16\times10^{5}

一致しました。

本数を面積で割っても、
公式に代入しても、
同じ答えに着きます。

一様電界も、同じ考え方で出る

点電荷ではなく、
広い平板に電荷が一様に並んでいる場合。

線は平板からまっすぐ平行に出ます。
広がりません。

広がらないということは、離れても面積が増えないということ。
つまり、距離が変わっても電界の強さが変わりません

これが一様電界です。

平行板コンデンサの中がこの状態になります。Lesson7で使います。

点電荷は広がるから弱まる。平板は広がらないから弱まらない。
どちらも「本数と面積」で説明がつきます。

はるの気づき

私はガウスの法則を、
長いあいだ飛ばしていました。

理由は単純で、試験にそのまま出た記憶がなかったからです。
出ないものを勉強する時間はない、と思っていました。

でも、
飛ばしたせいで払った代償の方が大きかった。

クーロンの法則の r²、電界の 4π、あとで出てくる C = εS/d の ε。
全部バラバラの暗記になっていました。

ガウスの法則を1回通しただけで、これが一本につながりました。
覚える公式が減ったのです。

出題されないから無駄、ではありませんでした。
出題される公式の、根っこだった。

遠回りに見える場所ほど、
戻る価値があります。

電験3種では、ここを確認する

直接の計算問題として出ることは、多くありません。
ただし、次の形では頻繁に問われます。

  1. 電気力線の性質を選ぶ問題
    交差しない/正から負へ/導体内部には存在しない/導体表面に垂直——この4つは押さえてください。

  2. 導体内部の電界は0、という前提を使う問題
    中空の導体球の内部、静電遮へい(シールド)の話は、ここから来ています。

  3. 公式を忘れたときの復元
    E = Q / (4πεr²) は、「本数 ÷ 球の表面積」で作り直せます。暗記が飛んでも、その場で組み立て直せる。

3つ目が、
このLessonの本当の価値です。

まとめ

電気力線は、
電界を線の混み具合で表したもの。

  • Q[C]から出る本数は Q/ε 本(ガウスの法則)
  • 本数は途中で変わらない
  • 球の表面積 4πr² で割ると、電界になる
E=\frac{Q/\varepsilon}{4\pi r^2}=\frac{Q}{4\pi\varepsilon r^2}

距離の2乗は、球の表面積から来ています。
比例定数 k は、その逆数 1/(4πε) でした。

そして平板の場合、
線が広がらないので電界は距離によらず一定。
これが一様電界です。

次は、
電界とならぶもう一つの主役、
電位を扱います。

STEP2で「電圧=高さの差」と言ったあの図を、もう一度使います。
そして、電界が2乗・電位が1乗で効くという、STEP3最大の分かれ道をはっきりさせます。

距離の2乗の正体は、
球の表面積でした。
つながったかどうか、6問で確認します。

EXERCISE

読んだ直後に、6問だけ。

最初の3問は、
計算しません

頭の中で答えてから、
答えを開いてください。

問1予想 ★★☆

点電荷を囲む球面を、
半径 1 m から 3 m に広げました。
球面を通過する電気力線の本数はどうなりますか。

① 3倍 ② 9倍 ③ 1/9 ④ 変わらない

答えを見る

④ 変わらない

本数を決めているのは電荷だけです(N = Q/ε)。
線は途中で消えたり増えたりしません。

変わるのは面積です。4π×3² ÷ 4π×1² = 9倍

同じ本数が9倍の面積に散らばるから、
密度は 1/9。
これが「電界は距離の2乗で弱まる」の中身です。公式ではなく、
この3ステップを覚えてください。

問2予想 ★★☆

帯電した金属球の、
内部の電界はどうなっていますか。

① 表面と同じ強さ ② 中心へ向かうほど強い ③ 0

答えを見る

③ 0

導体内部に電界があると、
自由電子が動き続けてしまいます。

動きが止まった状態(=静電気の状態)では、
内部の電界は必ず 0 です。
電荷はすべて表面に分布します。

だから電気力線は導体の中へ入れず、
表面に垂直に出入りします。
静電遮へい(シールド)が成り立つのも、
この性質のためです。
落雷時に自動車の中が安全なのは同じ理屈です。

問3式を選ぶ ★★☆

電気力線の本数を面積で割ると、
何になりますか。

① 電荷 Q ② 電界 E ③ 誘電率 ε

答えを見る

② 電界 E

電界は「線の混み具合」でした。E = 本数 ÷ 面積

E = (Q/ε) ÷ (4πr²) = Q / (4πεr²)

この組み立てができると、
公式を忘れてもその場で復元できます
本数は Q/ε、
面積は球なら 4πr²。
割るだけ。
暗記が飛んで焦る場面が、
一つ減ります。

問4まちがい探し ★★☆

次の電気力線の説明のうち、
誤っているものが1つあります。
どれでしょうか。

① 正の電荷から出て、
負の電荷へ入る

② 電界の強いところでは、
線が混んでいる

③ 電界が2方向ある点では、
線が交差する

④ 導体の表面には垂直に出入りする

答えを見る

誤り:③

電気力線は交差しません

交差するということは、
その1点で電界の向きが2つあるということです。
しかし電界は、
各点で向きが1つに決まっています。

複数の電荷があっても、
それぞれの電界を合成した結果の向きが1つ決まるだけです(Lesson3の矢印の合成)。

この4択は、
電験3種でそのまま出る形です。①②④は正しい記述なので、
セットで覚えてください。

問5計算 ★★☆

真空中に 4 μC の点電荷があります。出る電気力線は、およそ何本ですか。
ε₀ = 8.85×10⁻¹² F/m

答えを見る

およそ 4.5×10⁵ 本

N = Q/ε₀ = 4×10⁻⁶ ÷ 8.85×10⁻¹²

指数だけ先に処理します。10⁻⁶ ÷ 10⁻¹² = 10⁶

4 ÷ 8.85 ≈ 0.45 → 0.45×10⁶ = 4.5×10⁵ 本

本数そのものを問う出題は多くありませんが、「本数は電荷だけで決まる」という感覚をつかむために一度計算しておく価値があります。
距離が式に出てこないことを確認してください。

問6計算(別の道で確認)★★★

問5の電荷から 0.3 m 離れた点の電界を、「本数 ÷ 球の表面積」で求めてください。
そのあと、E = kQ/r² でも確かめてください。

答えを見る

およそ 4×10⁵ V/m

道その1(本数 ÷ 面積):

面積:4π × 0.3² = 4π × 0.09 ≈ 1.13 m²

E = 4.5×10⁵ ÷ 1.13 ≈ 4.0×10⁵ V/m

道その2(公式に代入):

E = 9×10⁹ × 4×10⁻⁶ ÷ 0.09 = 36×10³ ÷ 0.09 = 4.0×10⁵ V/m

同じ答えに着きました。
公式は、
この割り算に名前を付けただけ
です。
ここまで来たら、Lesson2から引っぱってきた「なぜ2乗か」は回収完了です。
次は電位——こちらは1乗で効きます。
混ぜないでください。

6問、
おつかれさまでした。

問6が通ったなら、STEP3の公式群が一本につながっています。

ここが、
この STEP でいちばん効く回でした。

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