Lesson10 静電エネルギーと静電力|たまった電気が持っている仕事の量

STEP2 Lesson9で、
電力と電力量を扱いました。
何A流れるかの先にある「どれだけ働いたか」
コンデンサにも、
同じ問いがあります。
電荷がたまっている。
では、
それは何ができるのか。
充電したコンデンサをつなぐと、モーターが回り、ランプが光ります。
たまっているのは電荷だけではありません。エネルギーです。
式は3つ、でも中身は1つ

先に結論を出します。
W=\frac{1}{2}CV^2=\frac{1}{2}QV=\frac{Q^2}{2C}\ [\mathrm{J}]3つ並んでいますが、
覚えるのは1つで足ります。
Q = CV(Lesson6)を代入すれば、
互いに行き来できるからです。
別の公式ではなく、
同じ式の着替えです。
使い分けは単純です。
| 与えられている量 | 使う式 |
|---|---|
| C と V | ½CV² |
| Q と V | ½QV |
| Q と C | Q²/2C |
問題文にある文字を見て、
そのまま使えるものを選ぶ。
それだけです。
なぜ ½ が付くのか

ここが、
このLessonの本題です。
½ を落とす失点は、本当に多い。
理由を知っておけば、落としません。
電荷を運ぶ仕事を考える
Lesson5で、
こう書きました。
電荷 Q が電位差 V を移動するときの仕事です。
では、
コンデンサに Q だけ充電する仕事も QV でいいのでしょうか。
よくありません。
理由は、
充電の途中で電圧が変わるからです。
充電のはじめと終わり
充電を始めた瞬間、コンデンサの電圧は 0 V です(Lesson6)。
電荷がまだ無いので、押し込むのに力がいりません。
充電が進むほど、コンデンサの電圧は上がります。
すでにある電荷が反発するので、押し込むのがだんだん大変になります。
そして最後の1粒を押し込むときが、
いちばん大変です。
そのときの電圧が V。
つまり、0 V から V まで、
少しずつ上がりながら充電しています。
平均は半分
電圧が 0 から V まで一定の割合で上がるなら、
平均は、
だから、
仕事は、
½ は「平均の電圧」から来ています。
面積で見る
グラフにすると、
もっとはっきりします。
横軸に電荷 Q、
縦軸に電圧 V を取ります。
Q = CV なので、V は Q に比例します。
原点を通る直線です。
仕事は「電荷 × 電圧」なので、
このグラフの下の面積にあたります。
直線の下は、
三角形です。
三角形だから ½。
四角形ではないからです。
½ は、
三角形の ½ でした。
ここまでたどっておけば、
試験中に「½ が付いたか」で迷いません。
計算する前に、予想する

コンデンサに加える電圧を 2倍にしました。
たまるエネルギーは。
W = ½CV² で、V は2乗です。
2倍 → 4倍。
電荷 Q は2倍にしかなりませんが(Q=CV)、
エネルギーは4倍。
ここが違います。
容量を 2倍のものに替えたら(電圧は同じ)。
C は1乗なので、2倍。
- 電圧は2乗で効く
- 容量は1乗で効く
Lesson2からずっと同じ確認です。
何乗で効くかを、
先に言ってください。
小さな数字で確認する

W=\frac{1}{2}CV^2=\frac{1}{2}\times4\times10^{-6}\times100^2 =\frac{1}{2}\times4\times10^{-6}\times10^{4}=2\times10^{-2}\ \mathrm{J}4 μF のコンデンサを 100 V で充電しました。
たまるエネルギーは。
0.02 Jです。
別の道でも確認します。
まず電荷を出します。
一致しました ✓
3つ目の式でも。
W=\frac{Q^2}{2C}=\frac{(4\times10^{-4})^2}{2\times4\times10^{-6}}=\frac{1.6\times10^{-7}}{8\times10^{-6}}=2\times10^{-2}\ \mathrm{J}3つとも 0.02 J ✓
同じ式の着替えであることが、
数字で確認できました。
極板を引き離すと、エネルギーはどうなるか
ここから少し踏み込みます。
電験3種で問われる形です。
電源を切り離して、間隔を2倍にした場合
Lesson7でやったとおり、Q が一定です。
C は半分になります。
ここで Q²/2C を使います。
エネルギーが増えました。
増えた分は、
どこから来たのか。
極板を引き離した人の手からです。
向かい合った極板は引き合っています(Lesson7)。
逆らって引き離すには、力を出して仕事をしなければなりません。
その仕事が、
コンデンサのエネルギーとして蓄えられました。
電源につないだまま、間隔を2倍にした場合
こちらは V が一定です。½CV² を使います。
C が半分なので、W も 半分になります。
エネルギーが減りました。
減った分は、
電源に戻っています(電荷が電源へ押し戻される)。
同じ「間隔を2倍」でも、
増えるか減るかが正反対。
Lesson6から繰り返してきた読み分けが、
ここで最後に効きます。
極板の間に働く力
引き合う力そのものも、
出題されます。
覚えるべきは、
次の性質です。
電荷 Q が一定なら、
極板間の力は距離を変えても変わりません。
理由は、Lesson7の問6と同じです。
電界は極板の電荷で決まるので、距離を変えても電界は変わらない。力は F = QE なので、力も変わりません。
一方、電圧 V が一定なら、近いほど力は強くなります。
距離が縮むと電界 E = V/d が強くなるからです。
ここでも、
何が一定かで答えが変わります。
はるの気づき
私が ½ を落としたのは、
一度や二度ではありません。
対策として、「½を忘れるな」と赤で書いていました。
それでも本番で落としました。
注意書きは、
注意しているときにしか効きません。
変わったのは、
三角形の図を一度描いてからです。
Q-V グラフの下の面積。
直線だから三角形。
三角形だから ½。
以来、
忘れなくなりました。
忘れても、
その場で描けば出ます。
注意で守るのではなく、
理由で守る。
これは ½ に限った話ではありません。STEP3で扱ってきた r² も、S/d も、
直列の逆数も、
全部同じです。
理由をたどった公式は、
忘れても取り戻せます。
電験3種では、ここを確認する
エネルギーは、
単独でも組み合わせでも出ます。
確認すべきは5つ。
-
与えられた文字に合う式を選ぶ
3つの式は同じもの。持ち替えるだけです。 -
½ を落とさない
理由は三角形の面積。 -
電圧は2乗で効く
電圧2倍でエネルギー4倍。電荷(2倍)と混同しない。 -
「切り離した後」か「つないだまま」か
Q 一定なら Q²/2C、V 一定なら ½CV² を使うと、変化が素直に追えます。 -
単位は J(ジュール)
W=ワットではありません。エネルギーであって、電力ではない。
4つ目のコツは実戦的です。
一定の量が分子に来る式を選ぶと、
掛け算・割り算を間違えません。
まとめ
コンデンサにたまるエネルギーは、
W=\frac{1}{2}CV^2=\frac{1}{2}QV=\frac{Q^2}{2C}\ [\mathrm{J}]- 3つは同じ式。Q = CV で行き来できる
- ½ は、Q-V グラフの三角形の面積から
- 電圧は2乗、容量は1乗で効く
条件を変えたときは、
- 切り離した(Q一定)+間隔を広げる → エネルギーは増える(手の仕事が入る)
- つないだまま(V一定)+間隔を広げる → エネルギーは減る(電源へ戻る)
次はいよいよ、STEP3の最終回です。
静電気の過去問へ入るための7つの手順と、この分野で落としやすい5つの失点を整理します。
そして、止まったときにどのLessonへ戻ればいいかの地図を作ります。
½の理由は、
三角形の面積でした。3つの式が「同じもの」として使えるか、6問で確認します。
EXERCISE
読んだ直後に、6問だけ。
最初の3問は、
計算しません。
頭の中で答えてから、
答えを開いてください。
問1予想 ★★☆
コンデンサに加える電圧を 3倍にしました。
たまるエネルギーは何倍になりますか。
① 3倍 ② 6倍 ③ 9倍 ④ 1/9
答えを見る
③ 9倍
W = ½CV²。
電圧は2乗で効きます。3² = 9倍。
同じ条件で電荷を聞かれたら答えは 3倍です(Q = CV は1乗)。
電荷は1乗、
エネルギーは2乗——何を問われているかで倍率が変わります。
選択肢に3も9も並ぶので、
先に確認してください。
問2予想 ★★★
充電後に電源を切り離し、
極板の間隔を2倍に広げました。
たまっているエネルギーはどうなりますか。
① 2倍 ② 半分 ③ 変わらない
答えを見る
① 2倍
切り離した → Q が一定。Q が分子にある W = Q²/2C を使います。
間隔が2倍 → C は半分 → 分母が半分なので W は2倍。
エネルギーが勝手に増えたわけではありません。
引き合う極板を、
逆らって引き離した人の仕事が蓄えられました。
エネルギーの出どころを説明できると、
この手の問題は迷いません。
問3式を選ぶ ★★☆
「Q と C だけが与えられている」とき、
エネルギーの計算に最も向いている式はどれですか。
① ½CV² ② ½QV ③ Q²/2C
答えを見る
③ Q²/2C
①②は V が必要なので、
先に V = Q/C を計算する手間が増えます。
③なら、
そのまま代入できます。
3つは同じ式です。
覚えるのは1つ、
持ち替えられれば十分。
問題文にある文字を見て、
追加の計算がいらないものを選んでください。
ひと手間減ると、
計算ミスもそのぶん減ります。
問4まちがい探し ★★☆
次の解答には誤りがあります。
どこでしょうか。
「10 μF のコンデンサを 200 V で充電した。
たまるエネルギーを求める。
W = CV² = 10×10⁻⁶ × 200² = 0.4 J」
答えを見る
誤り:½ が抜けている
正しくは W = ½ × 10×10⁻⁶ × 4×10⁴ = 0.2 J
思い出し方:Q-V グラフの下は三角形。
充電中、
電圧は 0 から V まで上がっていきます。
ずっと V だったわけではないので、
平均は V/2。
½ の落としは、
選択肢にちょうど2倍の値が置いてあるので必ず引っかかります。「½を忘れるな」と覚えるのではなく、
三角形を思い出してください。注意は切れますが、
理由は切れません。
問5計算 ★★☆
5 μF のコンデンサを 200 V で充電しました。
(1) たまる電荷は何 μC ですか。
(2) たまるエネルギーは何 J ですか。
答えを見る
(1) 1000 μC (2) 0.1 J
(1) Q = CV = 5×10⁻⁶ × 200 = 1×10⁻³ C = 1000 μC
(2) W = ½CV² = ½ × 5×10⁻⁶ × 4×10⁴ = 0.1 J
検算(別の式で):W = ½QV = ½ × 1×10⁻³ × 200 = 0.1 J ✓
2通りで同じ答えに着きました。3つの式は互いに検算に使えます——時間があるときは、
必ずもう一つの式で確かめてください。STEP2 Lesson11で作った「別の道で確認する」習慣が、
そのまま使えます。
問6計算(条件を読み分ける)★★★
問5の状態から、電源につないだまま、極板の間隔を2倍に広げました。
(1) たまるエネルギーは何 J になりますか。
(2) 同じ操作を「電源を切り離してから」行った場合はどうなりますか。
答えを見る
(1) 0.05 J(半分) (2) 0.2 J(2倍)
(1) つないだまま → V 一定
V が分子にある W = ½CV² を使います。C が半分 → W も半分。
0.1 ÷ 2 = 0.05 J (減った分は電源へ戻りました)
(2) 切り離した → Q 一定
Q が分子にある W = Q²/2C を使います。C が半分 → W は2倍。
0.1 × 2 = 0.2 J (増えた分は、
引き離した手の仕事です)
まったく同じ操作で、
エネルギーが半分になったり2倍になったり。
一定の量が分子に来る式を選ぶ——これだけで、
掛けるか割るかを間違えなくなります。Lesson6から追いかけてきた読み分けは、
ここで完成です。
6問、
おつかれさまでした。
問4と問6が答えられたなら、
静電気の計算問題はひととおり戦えます。
次は最終回。
過去問へ入る手順を整理します。



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