【STEP3-1】電荷と静電気|電気は「流れる」前に「たまっている」

案内役の人物と、固定された正イオン・移動する電子・正負に帯電した物体を示すSTEP3-1の図

👇 最初にここをタップ
下敷きに電荷がたまっていても、電流は流れている?

読む前に1問。10秒で終わります。

 

 

Lesson1 電荷と静電気|電気は「流れる」前に「たまっている」

同じ電荷が、回路では動き、静電気ではたまることを示す図
電流と静電気は、同じ電荷 Q を「動いているか・止まっているか」で見分けます。

STEP2で、
電流を

「電荷の移動」として読みました。

 

その直後に静電気の分野へ入ると、

多くの人がここで止まります。

 

「動いていない電気って、

結局なに?」

 

直流回路では、

電流は常にどこかへ
向かって流れていました。

ところが静電気では、
電気はその場に
たまったまま動きません。

でも、扱っているものは同じです。

  • 電荷は、電気そのものの量
  • 電流は、その電荷が動いている状態
  • 静電気は、その電荷が止まっている状態

「別の分野」ではありません。

同じ電荷を、
動いている面から見るか、
止まっている面から見るかの違いです。

電荷とは、電気の「量」そのもの

原子の中の陽子と電子、電子が移動して正負に帯電する流れ
原子の中の陽子と電子、電子が移動して正負に帯電する流れ

物質は原子でできていて、
原子の中には正の電気を持つ陽子と、
負の電気を持つ電子があります。

普段、この二つは
同じ数だけあります。

だから物質全体としては、
電気を帯びていないように見えます。

ところが、
何かのきっかけで
電子が移動すると、
バランスが崩れます。

  • 電子が減った側 → 正に帯電
  • 電子が増えた側 → 負に帯電

この
「かたよった電気の量」
が電荷です。

単位はクーロン[C]。

Q\ [\mathrm{C}]

STEP2で使った式を
思い出してください。

I=\frac{Q}{t}

電流は、
電荷 Q が時間 t の間に
どれだけ通過したか、
でした。

つまり、

電荷 Q は
STEP2の中にすでに出ていました


新しい登場人物ではありません。
今回は、その Q が
動かずに留まっている状況を扱います。

「たまっている」と「流れている」は、別の話

静電誘導(導体・電子が移動)と誘電分極(絶縁体・向きがそろう)の対比図
静電誘導(導体・電子が移動)と誘電分極(絶縁体・向きがそろう)の対比図

下敷きを髪でこすると、
髪が引き寄せられます。

このとき、
下敷きには電荷がたまっています。

でも、電流は流れていません。

逆に、電池と豆電球を
つないだ回路では、
電流が流れています。

このとき導線のどこかに
電荷がたまっているわけでは
ありません。

  静電気 直流回路
主役 電荷 Q[C] 電流 I[A]
状態 たまっている 流れている
見るもの まわりの空間 電流の通り道

STEP3で見るのは、
右の列ではなく左の列です。

そして左の列では、
電荷そのものより、
電荷のまわりの空間
が主役になります。

ここがLesson3以降のテーマです。

電荷が起こす三つの現象

C・mC・μC・nC・pC を数直線上に並べた桁のスケール図
C・mC・μC・nC・pC を数直線上に並べた桁のスケール図

帯電

こすり合わせなどで電子が移動し、
物体が電気を帯びること。

摩擦だけでなく、接触や、
あとで出てくる誘導に
よっても起こります。

静電誘導

帯電した物体を、
金属など電気を通す物体に
近づけると、
金属の中の自由電子が動きます。

  • 近い側には、逆の符号の電荷が集まる
  • 遠い側には、同じ符号の電荷が残る

金属全体としては
電気を帯びていないのに、
中で電荷がかたよる
これが静電誘導です。

帯電した下敷きが、
電気を帯びていないはずの
紙片を引き寄せるのは、
この現象のためです。

誘電分極

同じことを、
電気を通さない物体
(絶縁体)で行うとどうなるか。

絶縁体には自由に動ける
電子がありません。

それでも、原子や分子の中で
電荷の位置がわずかにずれます。

その結果、表面に電荷が現れたのと
同じ状態になります。

これが誘電分極です。

静電誘導との違いは、
電荷が物体の中を
移動できるかどうか
です。

  • 導体 → 自由電子が実際に移動する(静電誘導)
  • 絶縁体 → 移動はしないが、向きがそろう(誘電分極)

この誘電分極は、
Lesson8でコンデンサの容量が
増える理由として、
もう一度出てきます。

今は
「絶縁体でも電荷はかたよる」
とだけ覚えておいてください。

計算する前に、大きさの感覚をつかむ

1秒間に通過する電荷。STEP2で学んだ電流と電荷のつながり
STEP2で学んだ「1秒間に通過する電荷」を、静電気でも使う電荷 Q としてつなげます。

1 Cという電荷は、
どのくらいの大きさでしょうか。

STEP2で扱った
「1 Aが1秒間流れたときの電荷」
が1 Cでした。

回路の中では、
ごく当たり前の量です。

ところが静電気の問題では、
こんな数字が出てきます。

Q=2\ \mu\mathrm{C}=2\times10^{-6}\ \mathrm{C}

マイクロクーロン。
100万分の1です。

なぜ静電気では
こんなに小さいのか。

電荷を空間にためておくのは、
実はとても難しいからです。

少しでもたまると、
たがいに反発し合って
逃げようとします。

一方、
回路の中では電荷は
循環しているだけなので、
大きな値になります。

静電気ではμ(10⁻⁶)、n(10⁻⁹)、
p(10⁻¹²)が日常的に出てくる


—これは計算ミスの最大の温床です。

接頭語 記号 倍率
ミリ m 10⁻³
マイクロ μ 10⁻⁶
ナノ n 10⁻⁹
ピコ p 10⁻¹²

STEP1で学んだ指数表記が、
ここで本格的に必要になります。

小さな数字で確認する

3 Aの電流が5秒間流れました。
移動した電荷はいくつでしょうか。

Q=It=3\times5=15\ \mathrm{C}

15 Cです。

では、
静電気の問題でよく見る
5 μC は、
この何分の1でしょうか。

\frac{5\times10^{-6}}{15}\approx3.3\times10^{-7}

およそ300万分の1。

同じ「電荷」という言葉でも、
扱う桁がまったく違うことが
分かります。

問題文で μ や n を見たら、
答えの桁も小さくなる


—この感覚があるだけで、
計算結果が明らかに
おかしいときに気づけます。

はるの気づき

私が静電気で最初につまずいたのは、
公式ではありませんでした。

「電流はイメージできるのに、
静電気はイメージできない」

これだけでした。

回路なら、
電気が導線を通っていく
絵が浮かびます。

でも静電気は、
何も動いていません。

動いていないものを、
どう考えればいいのか
分からなかった。

その状態のまま
クーロンの法則を暗記して、
案の定、問題になると
使えませんでした。

戻るべき場所は、
公式ではありませんでした。

「電荷は、動いていても止まっていても、同じ電荷である」

これだけです。

STEP2で
さんざん扱った Q が、
今度は止まっているだけ。

そう分かってから、

静電気は
「知らない分野」
ではなくなりました。

分からない場所へ戻ることは
後退ではありません。

つなぎ直しです。

電験3種では、ここを確認する

このLessonの内容が単独で
出題されることは多くありません。

ですが、次の三つは後のLessonの
土台として必ず効いてきます。

  1. 符号を最後まで持ち歩く
    正か負かを途中で落とすと、
    力の向きが反対になります。

  2. 接頭語は、式に入れる前に基本単位へ直す
    μC のまま代入して桁が
    3〜6桁ずれる、
    が最も多い失点です。

  3. 導体か絶縁体かを問題文から拾う
    静電誘導の話なのか、
    誘電分極の話なのかが
    変わります。

選択肢問題では、
桁が明らかに違う答えが
混ぜてあることがよくあります。

単位換算を先に済ませておけば、
それだけで候補が絞れます。

まとめ

電荷は、
電気の量そのもの。

単位はクーロン[C]

  • 電荷が動いている状態が、電流(STEP2)
  • 電荷が止まっている状態が、静電気(STEP3)

帯電・静電誘導・誘電分極は、
どれも「電荷がかたよる」現象です。

導体では電子が移動し、
絶縁体では向きがそろいます。

静電気では
μ・n・p が日常的に出てきます。

式へ入れる前に基本単位へ
直してください。

次は、その電荷どうしに
働く力を扱います。

クーロンの法則です。

ただし、公式を覚えるのは
後回しにします。

まず、

距離を2倍にしたら力はどうなるかを、
計算せずに言えるようにします。

電荷が「たまっている」状態は、
つかめてきたと思います。

あとは、それが言葉と単位で
扱える形になっているかどうかです。

EXERCISE

読んだ直後に、6問だけ。

最初の3問は、
計算しません

頭の中で答えてから、
答えを開いてください。

問1予想 ★☆☆

下敷きを髪でこすったら、
下敷きが髪を引き寄せました。
このとき、
下敷きには電流が流れていますか。

① 流れている ② 流れていない ③ こすっている間だけ流れている

答えを見る

② 流れていない

下敷きにあるのは、
たまった電荷です。
電流ではありません。

電流は「電荷が移動し続けている」状態を指します。

同じ電荷 Q を、
動いている面から見れば電流(STEP2)、
止まっている面から見れば静電気(STEP3)。
扱っているものは変わっていません。

問2予想 ★★☆

帯電していない金属の棒に、
正に帯電した物体を近づけました。
棒全体の電気の量はどうなりますか。

① 正に増える ② 負に増える ③ 全体としては変わらない

答えを見る

③ 全体としては変わらない

起きているのは静電誘導です。
棒の中で電子が動き、
近い側に負、
遠い側に正が集まります。

でも、
電子が外から入ってきたわけではありません。
中で位置がずれただけです。

「かたよる」と「増える」は別のこと。
この区別があると、
接地(アース)した瞬間に何が起こるかも説明できるようになります。

問3言葉を選ぶ ★★☆

絶縁体(電気を通さない物体)に帯電体を近づけたときに起きる現象は、
次のどれですか。

① 静電誘導 ② 誘電分極 ③ どちらも起きない

答えを見る

② 誘電分極

絶縁体には、
自由に動ける電子がありません。

それでも原子・分子の中で電荷の位置がわずかにずれ、
表面に電荷が現れたのと同じ状態になります。

導体は移動する(静電誘導)、
絶縁体は向きがそろう(誘電分極)。
この誘電分極が、Lesson8でコンデンサの容量が増える理由になります。
今つかんでおくと、
あとが楽です。

問4まちがい探し ★★☆

次の計算には誤りがあります。
どこでしょうか。

「4 μC の電荷が 2 秒かけてすべて移動した。
平均の電流を求める。

I = Q / t = 4 ÷ 2 = 2 A

答えを見る

誤り:μC を C に直さずに代入している

4 μC = 4 × 10⁻⁶ C → I = 4×10⁻⁶ ÷ 2 = 2×10⁻⁶ A = 2 μA

気づき方:2 A は、
豆電球が光る大きさ。

静電気で扱う電荷は、
たいていμ・n・pの世界です。
そこから 2 A のような「回路の値」が出てきたら、
まず単位を疑ってください。
式に入れる前に基本単位へ直す——STEP3の間、
これを固定してください。

問5計算 ★☆☆

500 mA の電流が 4 秒間流れました。
移動した電荷は何 C ですか。

答えを見る

2 C

まず単位を直します。500 mA = 0.5 A

Q = It = 0.5 × 4 = 2 C

STEP2で使った I = Q/t を、Q について並べ替えただけです。
静電気の Q と、
回路の Q は同じもの。
ここが地続きだと確認できれば十分です。

問6計算(桁を読む)★★☆

次の3つを、
大きい順に並べてください。

① 0.02 mC ② 3000 nC ③ 5 μC

答えを見る

① > ③ > ②

全部 C にそろえます。

0.02 mC = 0.02 × 10⁻³ = 2×10⁻⁵ C

3000 nC = 3000 × 10⁻⁹ = 3×10⁻⁶ C

5 μC = 5 × 10⁻⁶ C

③と②を比べると、5×10⁻⁶ > 3×10⁻⁶ なので ③ > ②。

①は 2×10⁻⁵ = 20×10⁻⁶ で最大。

よって ① > ③ > ②
並べる前に、
必ず指数をそろえてください。

接頭語のまま大小を比べると、
まず間違えます。10の何乗かに直してから比べる
この一手間が、STEP3を通して効いてきます。

6問、
おつかれさまでした。

問4と問6が答えられたなら、STEP3の計算でいちばん多い失点を、
すでに一つ避けられています。

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