Lesson1 電荷と静電気|電気は「流れる」前に「たまっている」
STEP2で、
電流を
「電荷の移動」として読みました。
その直後に静電気の分野へ入ると、
多くの人がここで止まります。
「動いていない電気って、
結局なに?」
直流回路では、
電流は常にどこかへ
向かって流れていました。
ところが静電気では、
電気はその場に
たまったまま動きません。
でも、扱っているものは同じです。
- 電荷は、電気そのものの量
- 電流は、その電荷が動いている状態
- 静電気は、その電荷が止まっている状態
「別の分野」ではありません。
同じ電荷を、
動いている面から見るか、
止まっている面から見るかの違いです。
電荷とは、電気の「量」そのもの
物質は原子でできていて、
原子の中には正の電気を持つ陽子と、
負の電気を持つ電子があります。
普段、この二つは
同じ数だけあります。
だから物質全体としては、
電気を帯びていないように見えます。
ところが、
何かのきっかけで
電子が移動すると、
バランスが崩れます。
- 電子が減った側 → 正に帯電
- 電子が増えた側 → 負に帯電
この
「かたよった電気の量」
が電荷です。
単位はクーロン[C]。
Q\ [\mathrm{C}]
STEP2で使った式を
思い出してください。
I=\frac{Q}{t}
電流は、
電荷 Q が時間 t の間に
どれだけ通過したか、
でした。
つまり、
電荷 Q は
STEP2の中にすでに出ていました。
新しい登場人物ではありません。
今回は、その Q が
動かずに留まっている状況を扱います。
「たまっている」と「流れている」は、別の話
下敷きを髪でこすると、
髪が引き寄せられます。
このとき、
下敷きには電荷がたまっています。
でも、電流は流れていません。
逆に、電池と豆電球を
つないだ回路では、
電流が流れています。
このとき導線のどこかに
電荷がたまっているわけでは
ありません。
| 静電気 | 直流回路 | |
|---|---|---|
| 主役 | 電荷 Q[C] | 電流 I[A] |
| 状態 | たまっている | 流れている |
| 見るもの | まわりの空間 | 電流の通り道 |
STEP3で見るのは、
右の列ではなく左の列です。
そして左の列では、
電荷そのものより、
電荷のまわりの空間が主役になります。
ここがLesson3以降のテーマです。
電荷が起こす三つの現象
帯電
こすり合わせなどで電子が移動し、
物体が電気を帯びること。
摩擦だけでなく、接触や、
あとで出てくる誘導に
よっても起こります。
静電誘導
帯電した物体を、
金属など電気を通す物体に
近づけると、
金属の中の自由電子が動きます。
- 近い側には、逆の符号の電荷が集まる
- 遠い側には、同じ符号の電荷が残る
金属全体としては
電気を帯びていないのに、
中で電荷がかたよる。
これが静電誘導です。
帯電した下敷きが、
電気を帯びていないはずの
紙片を引き寄せるのは、
この現象のためです。
誘電分極
同じことを、
電気を通さない物体
(絶縁体)で行うとどうなるか。
絶縁体には自由に動ける
電子がありません。
それでも、原子や分子の中で
電荷の位置がわずかにずれます。
その結果、表面に電荷が現れたのと
同じ状態になります。
これが誘電分極です。
静電誘導との違いは、
電荷が物体の中を
移動できるかどうかです。
- 導体 → 自由電子が実際に移動する(静電誘導)
- 絶縁体 → 移動はしないが、向きがそろう(誘電分極)
この誘電分極は、
Lesson8でコンデンサの容量が
増える理由として、
もう一度出てきます。
今は
「絶縁体でも電荷はかたよる」
とだけ覚えておいてください。
計算する前に、大きさの感覚をつかむ
1 Cという電荷は、
どのくらいの大きさでしょうか。
STEP2で扱った
「1 Aが1秒間流れたときの電荷」
が1 Cでした。
回路の中では、
ごく当たり前の量です。
ところが静電気の問題では、
こんな数字が出てきます。
Q=2\ \mu\mathrm{C}=2\times10^{-6}\ \mathrm{C}
マイクロクーロン。
100万分の1です。
なぜ静電気では
こんなに小さいのか。
電荷を空間にためておくのは、
実はとても難しいからです。
少しでもたまると、
たがいに反発し合って
逃げようとします。
一方、
回路の中では電荷は
循環しているだけなので、
大きな値になります。
静電気ではμ(10⁻⁶)、n(10⁻⁹)、
p(10⁻¹²)が日常的に出てくる—
—これは計算ミスの最大の温床です。
| 接頭語 | 記号 | 倍率 |
|---|---|---|
| ミリ | m | 10⁻³ |
| マイクロ | μ | 10⁻⁶ |
| ナノ | n | 10⁻⁹ |
| ピコ | p | 10⁻¹² |
STEP1で学んだ指数表記が、
ここで本格的に必要になります。
小さな数字で確認する
3 Aの電流が5秒間流れました。
移動した電荷はいくつでしょうか。
Q=It=3\times5=15\ \mathrm{C}
15 Cです。
では、
静電気の問題でよく見る
5 μC は、
この何分の1でしょうか。
\frac{5\times10^{-6}}{15}\approx3.3\times10^{-7}
およそ300万分の1。
同じ「電荷」という言葉でも、
扱う桁がまったく違うことが
分かります。
問題文で μ や n を見たら、
答えの桁も小さくなる—
—この感覚があるだけで、
計算結果が明らかに
おかしいときに気づけます。
はるの気づき
私が静電気で最初につまずいたのは、
公式ではありませんでした。
「電流はイメージできるのに、
静電気はイメージできない」
これだけでした。
回路なら、
電気が導線を通っていく
絵が浮かびます。
でも静電気は、
何も動いていません。
動いていないものを、
どう考えればいいのか
分からなかった。
その状態のまま
クーロンの法則を暗記して、
案の定、問題になると
使えませんでした。
戻るべき場所は、
公式ではありませんでした。
「電荷は、動いていても止まっていても、同じ電荷である」
これだけです。
STEP2で
さんざん扱った Q が、
今度は止まっているだけ。
そう分かってから、
静電気は
「知らない分野」
ではなくなりました。
分からない場所へ戻ることは
後退ではありません。
つなぎ直しです。
電験3種では、ここを確認する
このLessonの内容が単独で
出題されることは多くありません。
ですが、次の三つは後のLessonの
土台として必ず効いてきます。
-
符号を最後まで持ち歩く
正か負かを途中で落とすと、
力の向きが反対になります。 -
接頭語は、式に入れる前に基本単位へ直す
μC のまま代入して桁が
3〜6桁ずれる、
が最も多い失点です。 -
導体か絶縁体かを問題文から拾う
静電誘導の話なのか、
誘電分極の話なのかが
変わります。
選択肢問題では、
桁が明らかに違う答えが
混ぜてあることがよくあります。
単位換算を先に済ませておけば、
それだけで候補が絞れます。
まとめ
電荷は、
電気の量そのもの。
単位はクーロン[C]
- 電荷が動いている状態が、電流(STEP2)
- 電荷が止まっている状態が、静電気(STEP3)
帯電・静電誘導・誘電分極は、
どれも「電荷がかたよる」現象です。
導体では電子が移動し、
絶縁体では向きがそろいます。
静電気では
μ・n・p が日常的に出てきます。
式へ入れる前に基本単位へ
直してください。
次は、その電荷どうしに
働く力を扱います。
クーロンの法則です。
ただし、公式を覚えるのは
後回しにします。
まず、
距離を2倍にしたら力はどうなるかを、
計算せずに言えるようにします。
電荷が「たまっている」状態は、
つかめてきたと思います。
あとは、それが言葉と単位で
扱える形になっているかどうかです。
EXERCISE
読んだ直後に、6問だけ。
最初の3問は、
計算しません。
頭の中で答えてから、
答えを開いてください。
問1予想 ★☆☆
下敷きを髪でこすったら、
下敷きが髪を引き寄せました。
このとき、
下敷きには電流が流れていますか。
① 流れている ② 流れていない ③ こすっている間だけ流れている
答えを見る
② 流れていない
下敷きにあるのは、
たまった電荷です。
電流ではありません。
電流は「電荷が移動し続けている」状態を指します。
同じ電荷 Q を、
動いている面から見れば電流(STEP2)、
止まっている面から見れば静電気(STEP3)。
扱っているものは変わっていません。
問2予想 ★★☆
帯電していない金属の棒に、
正に帯電した物体を近づけました。
棒全体の電気の量はどうなりますか。
① 正に増える ② 負に増える ③ 全体としては変わらない
答えを見る
③ 全体としては変わらない
起きているのは静電誘導です。
棒の中で電子が動き、
近い側に負、
遠い側に正が集まります。
でも、
電子が外から入ってきたわけではありません。
中で位置がずれただけです。
「かたよる」と「増える」は別のこと。
この区別があると、
接地(アース)した瞬間に何が起こるかも説明できるようになります。
問3言葉を選ぶ ★★☆
絶縁体(電気を通さない物体)に帯電体を近づけたときに起きる現象は、
次のどれですか。
① 静電誘導 ② 誘電分極 ③ どちらも起きない
答えを見る
② 誘電分極
絶縁体には、
自由に動ける電子がありません。
それでも原子・分子の中で電荷の位置がわずかにずれ、
表面に電荷が現れたのと同じ状態になります。
導体は移動する(静電誘導)、
絶縁体は向きがそろう(誘電分極)。
この誘電分極が、Lesson8でコンデンサの容量が増える理由になります。
今つかんでおくと、
あとが楽です。
問4まちがい探し ★★☆
次の計算には誤りがあります。
どこでしょうか。
「4 μC の電荷が 2 秒かけてすべて移動した。
平均の電流を求める。
I = Q / t = 4 ÷ 2 = 2 A」
答えを見る
誤り:μC を C に直さずに代入している
4 μC = 4 × 10⁻⁶ C → I = 4×10⁻⁶ ÷ 2 = 2×10⁻⁶ A = 2 μA
気づき方:2 A は、
豆電球が光る大きさ。
静電気で扱う電荷は、
たいていμ・n・pの世界です。
そこから 2 A のような「回路の値」が出てきたら、
まず単位を疑ってください。
式に入れる前に基本単位へ直す——STEP3の間、
これを固定してください。
問5計算 ★☆☆
500 mA の電流が 4 秒間流れました。
移動した電荷は何 C ですか。
答えを見る
2 C
まず単位を直します。500 mA = 0.5 A
Q = It = 0.5 × 4 = 2 C
STEP2で使った I = Q/t を、Q について並べ替えただけです。
静電気の Q と、
回路の Q は同じもの。
ここが地続きだと確認できれば十分です。
問6計算(桁を読む)★★☆
次の3つを、
大きい順に並べてください。
① 0.02 mC ② 3000 nC ③ 5 μC
答えを見る
① > ③ > ②
全部 C にそろえます。
① 0.02 mC = 0.02 × 10⁻³ = 2×10⁻⁵ C
② 3000 nC = 3000 × 10⁻⁹ = 3×10⁻⁶ C
③ 5 μC = 5 × 10⁻⁶ C
③と②を比べると、5×10⁻⁶ > 3×10⁻⁶ なので ③ > ②。
①は 2×10⁻⁵ = 20×10⁻⁶ で最大。
よって ① > ③ > ②。
並べる前に、
必ず指数をそろえてください。
接頭語のまま大小を比べると、
まず間違えます。10の何乗かに直してから比べる。
この一手間が、STEP3を通して効いてきます。
6問、
おつかれさまでした。
問4と問6が答えられたなら、STEP3の計算でいちばん多い失点を、
すでに一つ避けられています。



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