Lesson6 コンデンサ|電荷をためる部品を回路の中で読む

ここまでの5つのLessonは、空間の話でした。
電荷があって、まわりに電界ができて、電位が決まる。
図はあっても、回路図ではありませんでした。
このLessonから、静電気が回路の中の部品になります。
コンデンサです。
そして、ここでSTEP2とSTEP3が合流します。
コンデンサは「電荷をためる部品」

構造はとても単純です。
金属の板を2枚、向かい合わせに置く。間はつながっていない。
これだけです。
電池につなぐと、何が起きるか。
- 片方の板に、正の電荷がたまる
- もう片方の板に、同じ量の負の電荷がたまる
- 板の間に、電界ができる(Lesson4の一様電界)
- 板の間に、電位差ができる(Lesson5)
Lesson1〜5で扱ったことが、全部この部品の中で起きています。
新しい現象は一つもありません。
電圧をかけたら、どれだけたまるか

同じ電圧をかけても、コンデンサによってたまる電荷の量は違います。
たくさんためられるものと、少ししかためられないもの。
この「ためやすさ」を表すのが、静電容量 C です。
- Q:たまった電荷[C]
- C:静電容量[F](ファラド)
- V:加えた電圧[V]
並べ替えれば、
C=\frac{Q}{V}**1 Vをかけたときに、何 C たまるか。**それが静電容量です。
STEP2と並べて読む

この式、STEP2で見た形に似ていませんか。
| STEP2 | STEP3 |
|---|---|
| V = IR | Q = CV |
| 抵抗 R=流れにくさ | 静電容量 C=ためやすさ |
| R が大きい → 電流が小さい | C が大きい → 電荷が多い |
一つだけ注意があります。
抵抗は「にくさ」、静電容量は「やすさ」です。向きが逆です。
- 抵抗が大きいほど、電流は減る
- 容量が大きいほど、電荷は増える
この向きの違いが、Lesson9で「直列・並列の公式が抵抗と逆になる」ことの根っこになります。今から意識しておいてください。
ファラドは、とても大きい単位

静電容量の単位はファラド[F]。
1 Fとは、1 Vをかけたときに 1 C たまる大きさです。
ところが、Lesson1で確認したとおり、電荷を空間にためるのはとても難しい。
だから 1 F は、実用上とてつもなく大きな値になります。
実際の回路で出てくるのは、
| 表記 | 意味 |
|---|---|
| μF | 10⁻⁶ F |
| nF | 10⁻⁹ F |
| pF | 10⁻¹² F |
電験3種の問題文も、ほぼ μF か pF です。
**代入する前に F へ直す。**Lesson1から繰り返している注意が、ここでも効きます。
充電中と、充電後は違う
ここが、STEP2からの読み替えでいちばんつまずく場所です。
コンデンサの2枚の板は、つながっていません。
では、電流は流れないのでしょうか。
充電中は流れます。充電後は流れません。
順に見ます。
スイッチを入れた瞬間
板にはまだ電荷がありません。
電池は電荷を送り込もうとするので、電流が流れます。
このとき、コンデンサの電圧は 0 Vです(Q=0 なので V=Q/C=0)。
充電が進むにつれて
板に電荷がたまるほど、コンデンサの電圧が上がります。
電池の電圧との差が小さくなるので、流れ込む電流は減っていきます。
充電が終わったあと
コンデンサの電圧が、電池の電圧と等しくなります。
差がないので、電流は流れません。0 Aです。
つまり、定常状態のコンデンサは、直流に対して「切れている」のと同じです。
回路図でコンデンサがあっても、十分に時間が経った後なら、そこに電流は流れません。この読み方だけで解ける問題があります。
(充電の途中経過を時間の式で追うのが「過渡現象」です。STEP3では扱いません。ここでは「充電中は流れる、充電後は流れない」で十分です。)
計算する前に、予想する
5 μF のコンデンサに 100 V をかけました。たまる電荷は。
Q = CV なので、C と V の両方に比例します。
電圧を 2倍の 200 V にしたら、電荷は。
2倍です。
電圧はそのままで、容量が 2倍のコンデンサに替えたら。
これも 2倍。
抵抗のときのような反比例は出てきません。素直な比例です。
ただし、次のLesson以降で「容量 C そのものが何で決まるか」に入ると、そこで反比例が出てきます(間隔 d)。混ぜないでください。
- Q = CV の関係 → すべて比例
- C = εS/d の関係 → d は反比例(Lesson7)
小さな数字で確認する
5 μF のコンデンサに 100 V を加えました。たまる電荷は何 C ですか。
単位を直します。5 μF = 5×10⁻⁶ F。
Q=CV=5\times10^{-6}\times100=5\times10^{-4}\ \mathrm{C}0.0005 C。μC で言えば 500 μC です。
確認します。100 V で 500 μC たまるなら、1 V あたりは 5 μC。
これは容量 5 μF と一致します。C は「1 Vあたりの電荷」でした。 ✓
もう一つ。
C=\frac{Q}{V}=\frac{200\times10^{-6}}{50}=4\times10^{-6}\ \mathrm{F}=4\ \mathrm{\mu F}あるコンデンサに 50 V をかけたら、200 μC たまりました。静電容量は。
4 μFです。
はるの気づき
コンデンサを、私は「よく分からない部品」として飛ばしていました。
抵抗は分かる。電流を邪魔するもの。
コイルも、なんとなく分かる。
でもコンデンサは、つながっていないのに回路図に描いてある。それが気持ち悪かった。
腑に落ちたのは、Lesson1〜5をやり直したあとです。
コンデンサの中で起きていることは、全部やったことでした。
電荷がたまる、電界ができる、電位差ができる。新しいことは何もなかった。
分からなかったのは、コンデンサではありませんでした。
その手前の、静電気そのものでした。
止まった場所は、たいていその一つ前にあります。
戻る先を間違えないでください。
電験3種では、ここを確認する
コンデンサは、理論科目で必ず出ます。確認すべきは4つ。
-
Q = CV の3つの量を、どれが与えられているか整理する
STEP2の V = IR と同じ扱い方です。 -
単位を F へ直してから代入する
μF のまま入れると、答えが 10⁶ 倍ずれます。 -
「十分時間が経過した後」という文言を探す
これがあれば、コンデンサに電流は流れません。抵抗だけの回路として読めます。 -
電源をつないだままか、切り離した後か
つないだまま → 電圧が一定
切り離した後 → 電荷が一定
この区別は、Lesson7以降の「間隔を変えたら」「誘電体を入れたら」という問題で決定的になります。
4つ目は、いま完全に理解できなくて構いません。
ただ、問題文にこの区別が必ず書いてあることだけ、頭に入れておいてください。
まとめ
コンデンサは、電荷をためる部品。
Q=CV,\qquad C=\frac{Q}{V}- 静電容量 C は「1 Vあたり、何 C ためられるか」=ためやすさ
- 抵抗が「流れにくさ」なのに対し、容量は「やすさ」。向きが逆
- 単位はファラド[F]。実際は μF・nF・pF
- 充電中は電流が流れ、充電後は流れない
そして、コンデンサの中で起きているのはLesson1〜5そのものです。
次は、その C が何で決まるのかに入ります。
C=\varepsilon\frac{S}{d}この式を暗記する前に、板を広くしたら・近づけたらどうなるかを、構造から予想します。
コンデンサは「電荷をためる部品」でした。Q=CVが使える形になっているか、6問で確認します。
EXERCISE
読んだ直後に、6問だけ。
最初の3問は、計算しません。
頭の中で答えてから、答えを開いてください。
問1予想 ★☆☆
同じコンデンサに加える電圧を 3倍にしました。たまる電荷はどうなりますか。
① 3倍 ② 1/3 ③ 9倍 ④ 変わらない
答えを見る
① 3倍
Q = CV。C は部品側で決まっている定数なので、Q は V に比例します。
ここは素直な比例です。2乗も反比例も出てきません。次のLessonで C = εS/d に入ると反比例(間隔 d)が出てきますが、Q=CV の関係とは別の話です。混ぜないでください。
問2予想 ★★☆
電池・抵抗・コンデンサを直列につないだ回路です。十分に時間が経過した後、コンデンサに流れる電流はどうなりますか。
① 一定の電流が流れ続ける ② 0 A ③ 少しずつ増える
答えを見る
② 0 A
充電が終わると、コンデンサの電圧が電源電圧と等しくなります。差がないので、電荷は動きません。
直流に対して、定常状態のコンデンサは切れているのと同じです。
「十分に時間が経過した後」という一文は、コンデンサを外して考えてよいという合図です。この読み方だけで解ける問題があります。逆に「スイッチを入れた瞬間」なら、コンデンサの電圧は 0 V(=短絡と同じ)です。
問3言葉を選ぶ ★★☆
静電容量 C を、言葉で正しく言い換えているのはどれですか。
① 電流の流れにくさ ② 1 Vあたりにためられる電荷の量 ③ たまっている電荷の総量
答えを見る
② 1 Vあたりにためられる電荷の量
C = Q/V。割り算の形が、そのまま意味です。
③は Q のことです。C は「たまっている量」ではなく「ためられる能力」を表します。電圧をかけていなければ Q は 0 ですが、C は変わりません。
Lesson3の電界と同じ構造です。置く前から部品側で決まっている量——それが C。実際にいくらたまるかは、かけた電圧で決まります。
問4まちがい探し ★★☆
次の解答には誤りがあります。どこでしょうか。
「10 μF のコンデンサに 20 V を加えた。たまる電荷を求める。
Q = CV = 10 × 20 = 200 C」
答えを見る
誤り:μF を F に直さずに代入している
10 μF = 10×10⁻⁶ F
正しくは Q = 10×10⁻⁶ × 20 = 2×10⁻⁴ C = 200 μC
気づき方:200 C は、2 A の電流を100秒流し続けた電荷。
コンデンサ1個にそんな量はたまりません。数字の並びが同じ(200)でも、単位が C か μC かで 100万倍違います。STEP3では、答えが μ の桁に収まっているかを最後に必ず見てください。
問5計算 ★☆☆
あるコンデンサに 40 V を加えたら、120 μC の電荷がたまりました。静電容量は何 μF ですか。
答えを見る
3 μF
C = Q/V = 120×10⁻⁶ ÷ 40 = 3×10⁻⁶ F = 3 μF
この問題は、μ をそろえたまま計算しても大丈夫です。μC ÷ V = μF になるからです。ただし、次のLessonのように面積や距離が混ざる式では通用しません。迷ったら基本単位へ直すを既定にしてください。
問6計算(別の道で確認)★★☆
問5のコンデンサに、電圧を 100 V に上げて加え直しました。たまる電荷は何 μC ですか。
ヒント:代入せずに求められます。
答えを見る
300 μC
道その1(倍率で):電圧が 40 → 100 で 2.5倍。Q は V に比例するので 2.5倍。
120 × 2.5 = 300 μC
道その2(代入):
Q = CV = 3×10⁻⁶ × 100 = 3×10⁻⁴ C = 300 μC ✓
同じ答えに着きました。C は部品側の値なので、電圧を変えても変わりません。変わるのは Q だけ。この「何が変わって、何が変わらないか」の見極めが、Lesson7以降の問題(間隔を変える、誘電体を入れる)でそのまま問われます。
6問、おつかれさまでした。
問2と問6が答えられたなら、コンデンサを回路の部品として扱えています。
次は、その C が何で決まるのかに入ります。



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