STEP2|直流回路を読む
Lesson 10|重ね合わせ・テブナンの定理|複雑な回路を一度簡単にする
電源が二つあり、抵抗も複数ある。
全部を一度に見ようとすると、
どこから式を立てるか分からなくなります。
そんなときは、
回路を一度簡単にするのが近道です。

今回使うのは、次の二つです。
- 重ね合わせの理:電源の影響を一つずつ見る
- テブナンの定理:負荷から見た回路を、一電源・一抵抗へ置き換える
複雑な問題を、
知っている小さな問題へ分ける考え方です。
重ね合わせは、電源を一つずつ働かせる
線形回路では、複数の独立電源が作る電流や電圧を、
一つの電源だけが働いた結果へ分けて考えられます。
手順はシンプルです。
- 一つの独立電源だけを残す
- ほかの独立電源を0にする
- 求めたい電流または電圧を計算する
- 電源を入れ替えて同じ計算をする
- 向きを含めて結果を足す
電源を0にすると、どうなる?
ここが、重ね合わせで最も間違えやすいところです。

理想電圧源を0にすると、短絡。
理想電流源を0にすると、開放。
電源を回路から消すのではありません。
その電源の値を0にしたときの状態へ、
正しく置き換えます。
向きが反対なら、符号を付けて足す
たとえば、電源1だけで右向きに3 A、
電源2だけで左向きに1 Aが流れるとします。

右向きを正と決めれば、
I=3-1=2\,\mathrm{A}合成電流は、右向きに2 Aです。
大きさだけを足して、
4 Aにしないよう注意しましょう。
計算を始める前に、
電流の基準方向を一つ決めておくのがコツです。
電力は、そのまま重ね合わせない
重ね合わせを直接使えるのは、
線形な電圧と電流です。
電力は2乗を含むため、
各電源による電力をそのまま足すことはできません。
まず電流または電圧を重ね合わせます。
その合成値を使って、
最後に電力を計算します。
テブナンの定理は、負荷から回路を見る
次は、テブナンの定理です。
複雑な回路でも、負荷につながる二つの端子から見れば、
とても簡単な回路へ置き換えられます。

- テブナン電圧
- テブナン抵抗
この二つを直列につないだ等価回路です。
負荷抵抗を
R_Lとすると、負荷電流は、
I_L=\frac{V_\mathrm{th}}{R_\mathrm{th}+R_L}で求められます。
テブナン等価回路を求める5ステップ

1.求めたい負荷を外す
まず、負荷抵抗を回路から外します。
2.開放端子電圧を求める
負荷を外した二つの端子間の電圧が、
テブナン電圧です。
3.独立電源を0にする
電圧源は短絡、
電流源は開放へ置き換えます。
4.端子から見た合成抵抗を求める
負荷があった端子から回路側を見ます。
そこで見える合成抵抗が、
テブナン抵抗です。
5.等価回路を描き、負荷を戻す
テブナン電圧とテブナン抵抗を直列につなぎ、
最後に負荷を戻します。
これで、複雑だった回路が、
基本的な直列回路へ変わります。
従属電源があるときは?
従属電源を含む場合は、
独立電源だけを0にします。
従属電源は残し、試験電源などを使って
等価抵抗を求める方法があります。
STEP2ではまず、
独立電源だけの基本回路を押さえれば大丈夫です。
はるの気づき
以前は、複雑な回路ほど、
複雑な公式が必要だと思っていました。
でも、重ね合わせもテブナンも、
やっていることはその逆です。
一度に見る量を減らし、
自分がすでに解ける回路へ戻しています。
難しい問題に強くなるとは、
全部を一度に抱えることではありません。
分ける場所と、
簡単にしてよい場所を見つけることです。
電験3種では、ここを確認する
- 電圧源0は短絡、電流源0は開放
- 内部抵抗がある実電源では、その抵抗を残す
- 各電源による電流の向きをそろえて加える
- 電力を直接重ね合わせない
- テブナン電圧は、負荷を外した開放電圧
- テブナン抵抗は、負荷端子から回路側を見る
まとめ
重ね合わせは、
電源の影響を一つずつ見て合成する方法です。
テブナンの定理は、
負荷から見た複雑な回路を、一電源・一抵抗へ置き換える方法です。
どちらも、複雑な回路を
自分が解ける形へ戻すための道具です。
次はいよいよ、STEP2で学んだ内容を使って、
直流回路の過去問へ進みます。
EXERCISE
読んだ直後に、6問だけ。
最初の3問は、計算しません。
頭の中で答えてから、選んでください。
問1予想 ★★☆
重ね合わせで電源を1つずつ働かせます。いま見ていない方の電圧源は、どう置き換えますか。
- ①切り取って開ける(開放)
- ②ただの導線にする(短絡)
- ③抵抗に置き換える
答えを見る
② ただの導線にする(短絡)
「電圧源を 0 にする」とは、その両端に電圧差を作らないということです。
両端の高さを同じにするには、導線でつなぐしかありません。
電源を回路から消すのではありません。その電源の値を 0 にしたときの状態へ、正しく置き換えます。ここが、重ね合わせで最も間違えやすいところです。
問2予想 ★★☆
では、いま見ていない方の電流源はどう置き換えますか。
- ①開放(切り離す)
- ②短絡(導線にする)
- ③そのまま残す
答えを見る
① 開放(切り離す)
電流源を 0 にする=そこに電流を流さない、ということです。
道を断てば、電流は 0 になります。
電圧源は短絡、電流源は開放。逆になっているのが覚えにくいところですが、「その電源が作っている量を 0 にするには何をすればいいか」と考えれば、毎回その場で作れます。なお、内部抵抗がある実電源では、その抵抗は残します。
問3合成を選ぶ ★★☆
電源1だけを働かせると右向きに 4 A、電源2だけを働かせると左向きに 1.5 A が流れました。
両方が働いているときの電流はどれですか。
- ①右向きに 5.5 A
- ②右向きに 2.5 A
- ③左向きに 2.5 A
答えを見る
② 右向きに 2.5 A
右向きを正と決めると、I = 4 − 1.5 = 2.5 A
大きさだけを足して 5.5 A にしてはいけません。
重ね合わせは、向きを含めて足すのが約束です。計算を始める前に、電流の基準方向を一つ決めておくのがコツ。①を選んでしまうのは、公式ではなく手順の問題です。
問4まちがい探し ★★★
次の解答には誤りがあります。どこでしょうか。
「この抵抗の消費電力は、3²×10 + 1²×10 = 90 + 10 = 100 W」
- ①電流を重ね合わせている
- ②電力をそのまま重ね合わせている
- ③10 Ω を2回使っている
- ④誤りはない。計算は合っている
答えを見る
誤り:電力をそのまま重ね合わせている
正しくは、まず電流を重ね合わせます。I = 3 + 1 = 4 A
その合成値で電力を計算します。P = 4² × 10 = 160 W
気づき方:P = I²R には2乗が入っている。
2乗を含む量は、足してから2乗するのと、2乗してから足すのとで値が変わります(4² = 16 だが 3²+1² = 10)。
重ね合わせを直接使えるのは、線形な電圧と電流だけです。まず電流または電圧を重ね合わせ、その合成値を使って、最後に電力を計算する。順番が逆になっていないか確認してください。
問5計算 ★★☆
12 V の電源に 6 Ω と 3 Ω が直列につながっています。
3 Ω の両端を出力端子とみなしたとき、テブナン電圧 Vth とテブナン抵抗 Rth を求めてください。
- ①Vth = 4 V / Rth = 2 Ω
- ②Vth = 12 V / Rth = 9 Ω
- ③Vth = 8 V / Rth = 2 Ω
- ④Vth = 4 V / Rth = 9 Ω
答えを見る
Vth = 4 V / Rth = 2 Ω
Vth(負荷を外した開放端子電圧):
分圧で求めます。12 × 3/(6+3) = 4 V
Rth(独立電源を 0 にして、端子から回路側を見た抵抗):
電圧源を短絡すると、6 Ω と 3 Ω が並列に見えます。(6×3)/(6+3) = 2 Ω
記事の5ステップのうち、①負荷を外す ②開放端子電圧 ③独立電源を 0 に ④端子から見た合成抵抗——ここまでを実行しました。電圧源は短絡(開放ではありません)。ここを間違えると、6 Ω が切り離されて Rth が 3 Ω になってしまいます。
問6計算(電験3種の形)★★★
問5の等価回路(Vth = 4 V、Rth = 2 Ω)の端子に、
負荷 RL = 2 Ω をつなぎました。負荷に流れる電流は何 A ですか。
- ①1 A
- ②2 A
- ③0.5 A
- ④4 A
答えを見る
1 A
等価回路は、電源1つと抵抗2つの直列です。
I_L = V_th / (R_th + R_L) = 4 / (2+2) = 1 A
ここがテブナンのありがたみです。
負荷を 2 Ω から 6 Ω に変えても、Vth と Rth は変わりません。分母を差し替えるだけで 4/(2+6) = 0.5 A と出せます。
「負荷を変えながら何度も計算する」問題が電験でよく出るのは、テブナンを使えるかどうかを試しているからです。毎回キルヒホッフで連立を解いていると、時間が足りません。難しい問題に強くなるとは、全部を一度に抱えることではなく、簡単にしてよい場所を見つけることです。
6問、おつかれさまでした。
問1〜問4が答えられたなら、この記事は身についています。
迷ったところがあれば、その見出しにだけ戻ってください。全部を読み直す必要はありません。
次のLessonへ
次はSTEP2-11へ進みます。



コメント