Lesson2 クーロンの法則|距離が2倍になると、力は4分の1になる

静電気の最初の公式が、これです。
F=k\frac{Q_1Q_2}{r^2}
多くの参考書は、
この式を最初に出します。
そして読者は、
記号を覚えることに全力を
使ってしまいます。
でも、
試験で問われているのは記号の
並びではありません。
「ここを変えたら、
力はどう変わるか」
これが読めるかどうかです。
だから今回は、
公式を後回しにします。
まず、変化だけを先につかみます。
二つの電荷の間には、力が働く

正の電荷と負の電荷は
引き合います。
同じ符号どうしは反発します。
これは経験でも分かります。
下敷きと髪、風船と壁。
問題は、
その力がどのくらいの
大きさかです。
決めているのは、たった二つです。
- 電荷が大きいか小さいか
- 二つの電荷が近いか遠いか
これ以外にありません。
電荷の大きさは、そのまま効く

片方の電荷を2倍にすると、
力は2倍になります。
理由は素直です。
引っぱる相手が2倍いれば、
引っぱられる力も2倍になる。
両方とも2倍にすれば、
2×2で4倍です。
つまり、
力はQ₁ とQ₂ の
積に比例します。
F\propto Q_1Q_2
ここは、まだ難しくありません。
距離は「2乗」で効く

問題はこちらです。
距離を2倍にすると、
力は半分ではありません。
4分の1になります。
距離を3倍にすれば、9分の1。
F\propto\frac{1}{r^2}
なぜ2乗なのか。
いま、
その理由を完全に説明することは
しません。
Lesson4で、
電気力線と球の表面積を
使って種明かしをします。
ここでは、
イメージだけ持ってください。
電荷から出ていく「電気の影響」
は、
四方八方へ広がります。
広がる先は、
平面ではなく球面です。
球の表面積は 4πr²。
距離 r が2倍になれば、
表面積は4倍になります。
同じ量の影響が4倍の面積に
散らばるので、
1か所あたりは4分の1。
距離の2乗は、
球の表面積から来ている。
いまは、この一行だけで十分です。
ここで公式を出す

変化が分かったところで、
式にします。
F=k\frac{Q_1Q_2}{r^2}\ [\mathrm{N}]
- F:力[N]
- Q₁, Q₂:それぞれの
電荷[C] - r:二つの電荷の距離[m]
- k:比例定数
真空中では、
k\approx9\times10^9\ [\mathrm{N\cdot m^2/C^2}]
この9×10⁹ という値は
覚えておくと計算が速くなります。
そして k は、
あとで出てくる誘電率 εを
使って、
こう書けます。
k=\frac{1}{4\pi\varepsilon}
ここに 4π が出てくるのが、
球の表面積の名残です。
Lesson4でつながります。
今は「そういう形をしている」
だけで構いません。
計算する前に、予想する

例題です。
> 2つの点電荷の間に働く力が
8N でした。
> 距離をそのままに、
片方の電荷を3倍にしました。
力はいくつになりますか。
計算する前に言えます。
電荷が3倍 → 力も
3倍→ 24 N。
では、次はどうでしょう。
> 電荷はそのままで、
距離を半分にしました。
距離が半分 → 2乗で効くので
1/(1/2)² = 4倍→ 32 N。
では、両方同時なら。
> 片方の電荷を3倍、
かつ距離を半分にしました。
3倍 × 4倍 = 12倍 → 96 N。
公式に数値を代入していません。
変化の倍率だけを
掛け合わせています。
電験3種の選択肢問題では、
この読み方だけで答えが出ること
がよくあります。
小さな数字で確認する

実際に代入もしてみます。
> 2 μC と3 μCの
点電荷が、
真空中で0.3m 離れています。
働く力は。
まず単位を直します。
Q_1=2\times10^{-6}\ \mathrm{C},\quad Q_2=3\times10^{-6}\ \mathrm{C}
代入します。
F=9\times10^9\times\frac{2\times10^{-6}\times3\times10^{-6}}{0.3^2}
分子から片づけます。
9\times10^9\times6\times10^{-12}=54\times10^{-3}
分母は 0.3² = 0.09。
F=\frac{54\times10^{-3}}{0.09}=0.6\ \mathrm{N}
0.6 Nです。
ここで確認をひとつ。
距離を0.3 m から
0.6 m へ倍にしたら、
答えは0.15 N
になるはずです。
0.6\times\frac{1}{4}=0.15\ \mathrm{N}
予想と一致しました。
別の道で
確かめる——STEP2Lesson11で
作った習慣を、
そのまま使ってください。
はるの気づき

私はこの式を、
長いあいだ「分母がr2乗」
として覚えていました。
覚えてはいたのに、問題文が
> 距離を1.5 倍にしたとき
と書いてあると、
手が止まりました。
1.5 の 2乗が出てこない、
ではありません。
そもそも「2乗で効く」を、
変化として使ったこと
がなかったのです。
式の形を記憶することと、
式が表す変化を使えることは、
別のことでした。
だから今は、
公式を
見たら必ず一度こう聞きます。
「この文字を2倍にしたら、
答えは何倍になる?」
これに答えられない公式は、
まだ自分のものになっていません。
電験3種では、ここを確認する

出題のされ方は、
だいたい次の3種類です。
- 数値を代入して力を
求める 単位換算(μC → C)と
9×10⁹ が使えれば解けます。
- 条件を変えたときの倍率を
問う 「距離を2倍、
電荷を4倍にしたら」——代入は
不要。
倍率を掛けるだけです。
- 3つ以上の電荷が並んで
いる 1対1の力を
それぞれ求め、
向きを考えて合成します。
ここで符号と向きを落とすと
合いません。
3つ目のとき、
いきなり式を書かないでください。
まず図を描き、
それぞれの力の矢印を
引く。
向きが決まってから、
大きさを計算します。
STEP3の合言葉のとおりです。
見えないものは、
描いてから計算する。
まとめ

二つの点電荷の間に働く力は、
F=k\frac{Q_1Q_2}{r^2},\qquad k\approx9\times10^9
- 電荷は1乗で
効く(2倍にすれば2倍) - 距離は2乗で
効く(2倍にすれば4分の1)
代入する前に、
倍率で予想してください。
そして距離の2乗は、
球の表面積から来ています。
次は、
この「力」を、
電荷を置く前から
決まっている量として
書き直します。
電界です。
クーロンの法則は、代入より先に「何乗で効くか」でした。使える形になっているか、6問で確認します。
EXERCISE
読んだ直後に、6問だけ。
最初の3問は、
計算しません。
頭の中で答えてから、
答えを開いてください。
問1予想 ★☆☆
2つの点電荷の距離を3倍にしました。
働く力は何倍になりますか。
① 1/3 ② 1/6 ③ 1/9 ④ 3
答えを見る
③ 1/9
距離は2乗で効きます。3倍 → 1/3² = 1/9。
①を選んだ人は、
分母を r と読んでいます。
この取り違えは、
次のLessonで出る「電位(1乗)」と混ざったときに一気に増えます。
力と電界は2乗、
電位は1乗——早めに分けておいてください。
問2予想 ★★☆
両方の電荷を2倍にし、
同時に距離も2倍にしました。
力は何倍になりますか。
① 変わらない ② 2倍 ③ 1/2 ④ 4倍
答えを見る
① 変わらない
電荷の効果:2 × 2 = 4倍
距離の効果:1/2² = 1/4倍
4 × 1/4 = 1 打ち消し合って、
もとのままです。
代入は一度もしていません。
変化の倍率を掛け合わせるだけ。
この読み方ができると、
選択肢問題の時間が大きく変わります。
問3式を選ぶ ★☆☆
クーロンの法則の比例定数 k を、
誘電率 ε で表すとどれですか。
① k = 4πε ② k = 1/(4πε) ③ k = ε/(4π)
答えを見る
② k = 1/(4πε)
誘電率 ε が大きいほど、
力は弱くなります。
だから ε は分母です。
4π は、
球の表面積 4πr² の名残です。
形を丸暗記しなくても、「ε が大きい=力が弱い=分母」で位置が決まります。4π の正体は Lesson4 で明かします。
問4まちがい探し ★★☆
次の解答には誤りがあります。
どこでしょうか。
「1 μC と 4 μC が 20 cm 離れている。
真空中の力を求める。
F = 9×10⁹ × (1×10⁻⁶ × 4×10⁻⁶) ÷ 20² = 9×10⁻⁸ N」
答えを見る
誤り:cm を m に直さずに代入している
20 cm = 0.2 m 分母は 0.2² = 0.04 であって、400 ではありません。
正しくは F = 9×10⁹ × 4×10⁻¹² ÷ 0.04 = 0.9 N
電荷の μ は直したのに、
距離の cm は見落とす。
これが本当に多い。
距離は2乗で効くので、
換算ミスの影響も2乗で効きます。20²と0.2²では、
答えが1万倍ずれます。
問5計算 ★★☆
真空中で、3 μC と 2 μC の点電荷が 0.6 m 離れています。
働く力は何 N ですか。
答えを見る
0.15 N
分子:9×10⁹ × 3×10⁻⁶ × 2×10⁻⁶ = 9×10⁹ × 6×10⁻¹² = 54×10⁻³
分母:0.6² = 0.36
F = 0.054 ÷ 0.36 = 0.15 N
計算の順番は、
指数どうしを先にまとめるのが楽です。10⁹ × 10⁻⁶ × 10⁻⁶ = 10⁻³。
ここを電卓任せにすると、
桁を見失います。
問6計算(別の道で確認)★★★
問5の状態から、
距離だけを 0.2 m に縮めました。
力は何 N になりますか。
ヒント:代入し直さずに求められます。
答えを見る
1.35 N
道その1(倍率で):距離が 0.6 → 0.2 で 1/3。
力は 3² = 9倍。
0.15 × 9 = 1.35 N
道その2(代入し直し):分母が 0.2² = 0.04
F = 0.054 ÷ 0.04 = 1.35 N ✓
同じ答えに着きました。
試験本番では道その1で十分です。
近づけたら力は強くなる、
しかも2乗で強くなる——この感覚が、
次のLessonの電界でそのまま使えます。
6問、
おつかれさまでした。
問2と問6が通ったなら、
代入しなくても答えの動きが読めています。
問4で止まった人は、
単位換算だけもう一度確認してから次へ進んでください。



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