【STEP3-5】電位と電位差|STEP2の「高さ」を静電気から見直す

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山の頂上では、傾きが0でも高さは0になる?

読む前に1問。10秒で終わります。

Lesson5 電位と電位差|STEP2の「高さ」を静電気から見直す

山の断面図で「傾き=電界」「高さ=電位」を並べて示す
山の断面図で「傾き=電界」「高さ=電位」を並べて示す

STEP2 Lesson1で、
こう書きました。

水は、高い場所から低い場所へ流れます。
電気でも、二つの点の状態に差があると電荷が動きます。この電位の差を、電圧といいます。

あのとき「電位」という言葉を、
説明せずに使いました。

このLessonで回収します。

そして同時に、STEP3で最も失点が多い分かれ道をはっきりさせます。

  • 電界は、距離の 2乗 で効く
  • 電位は、距離の 1乗 で効く

この違いを、
理由ごと押さえます。

電位は「1 Cあたりのエネルギー」

STEP2 Lesson1の水槽の図を再掲し、電位・電位差の言葉を重ねる
STEP2 Lesson1の水槽の図を再掲し、電位・電位差の言葉を重ねる

Lesson3で、
電界をこう定義しました。

電界=1 Cあたりに働く

電位は、
その相棒です。

電位=1 Cあたりが持っているエネルギー

V=\frac{W}{Q}\ [\mathrm{V}]

W はエネルギー(仕事)[J]、Q は電荷[C]。

つまり 1 V とは、1 Cあたり 1 J のエネルギーを持っている状態です。

1\ \mathrm{V}=1\ \mathrm{J/C}

そして式を並べ替えれば、

W=QV

電荷 Q が電位差 V の区間を移動したときに、
やりとりされるエネルギーです。

STEP2 Lesson9の電力 P=VI とも、
地続きです。
両辺に電流を掛ければ、
単位時間あたりの話になります。

力とエネルギーの関係が、そのまま出てくる

正電荷2つの中点で、電界の矢印は打ち消し・電位の数値は加算される図
正電荷2つの中点で、電界の矢印は打ち消し・電位の数値は加算される図

坂道の話に戻ります。

Lesson3で、
電界を「坂の傾き」にたとえました。

では電位は何か。
高さです。

電界 電位
たとえ 坂の傾き 高さ
1 Cあたりの エネルギー
単位 [V/m] [V]
向き ある(矢印) ない(数値だけ)

ここが決定的です。

電界は向きを持ちますが、
電位は向きを持ちません。

だから電界の合成は矢印を足しますが、
電位の合成はそのまま数を足すだけです。

複数の電荷があるとき、
電位の計算のほうがずっと楽なのは、
このためです。

なぜ電位は1乗なのか

平行板の間の一様電界と V=Ed の関係図(mm→mの注意付き)
平行板の間の一様電界と V=Ed の関係図(mm→mの注意付き)

高さと傾きの関係を思い出してください。

傾き × 距離 = 高さの差

電気でも同じです。
一様電界(Lesson4で出た、
平板の間の電界)では、

V=Ed
  • V:2点間の電位差[V]
  • E:電界[V/m]
  • d:距離[m]

この式から、
単位の関係も出ます。

E=\frac{V}{d}\ \Rightarrow\ [\mathrm{V/m}]

Lesson3で [N/C]と書いていた電界の単位は、[V/m]と同じものでした。
ここで回収です。

そして、
点電荷の場合。

電界が 1/r² で効くところに、
距離 r を掛ける形になるので、

V=\frac{Q}{4\pi\varepsilon r}=k\frac{Q}{r}

r が1乗になります。

  • 電界:分母が r²
  • 電位:分母が r

分母の違いは、
距離を掛けたかどうかの違いです。
丸暗記しなくても、
区別できます。

基準をどこに置くか

電界(分母r²)と電位(分母r)の式を並べた対比表
電界(分母r²)と電位(分母r)の式を並べた対比表

STEP2で「電圧は二点間の差だから、
基準を決めないと数字にならない」と書きました。

電位も同じです。
基準が必要です。

静電気では、
二つの基準がよく使われます。

  1. 無限遠を 0 とする(点電荷の問題)
    電荷から無限に離れれば影響はゼロ、という考え方。V = kQ/r はこの基準です。

  2. 大地(接地)を 0 とする(実際の設備)
    接地記号があれば、そこが 0 V です。

問題文に「無限遠を基準とする」「接地されている」と書いてあったら、
それは基準の指定です。
読み飛ばさないでください。

電位の合成は、足すだけ

電荷が2つあるとき、
ある点の電位は、

V=V_1+V_2=k\frac{Q_1}{r_1}+k\frac{Q_2}{r_2}

向きを考える必要はありません。
符号だけ気をつけて、
そのまま足します。

負の電荷なら、Q に負号を入れます。

ここで、Lesson3の問4を思い出してください。

同じ正電荷2つの、
ちょうど真ん中の点。

電界は、
左右から反対向きに来て打ち消し合って 0 でした。

では電位は。

向きがないので、
打ち消しません。
二つの電荷による電位が足し算され、
正の値
になります。

電界は0なのに、
電位は0ではない。

これがSTEP3で最も出題される「引っかけ」です。
混同していると、
必ず落とします。

計算する前に、予想する

ある点の電位が 60 V でした。
電荷からの距離を3倍にすると、
電位はいくつになりますか。

電位は1乗で効くので、1/3。20 Vです。

同じ条件で、
電界はどうなりますか。

電界は2乗で効くので、1/9になります。

同じ「距離3倍」でも、答えが違います。
何を問われているかを、必ず先に確認してください。

小さな数字で確認する

真空中に 3 μC の点電荷があります。0.9 m 離れた点の電位は。

V=k\frac{Q}{r}=9\times10^9\times\frac{3\times10^{-6}}{0.9}

分子から。

9\times10^9\times3\times10^{-6}=27\times10^{3} V=\frac{27\times10^{3}}{0.9}=3\times10^{4}\ \mathrm{V}

30 000 Vです。

同じ点の電界も出しておきます。

E=k\frac{Q}{r^2}=\frac{27\times10^{3}}{0.81}\approx3.3\times10^{4}\ \mathrm{V/m}

数字が近いので紛らわしいですが、
単位が違います。[V]と[V/m]。

もう一つ、
一様電界の例です。

平行に置いた2枚の板の間に 200 V を加えました。
板の間隔は 2 mm です。
間の電界は。

まず単位。2 mm = 0.002 m。

E=\frac{V}{d}=\frac{200}{0.002}=1\times10^{5}\ \mathrm{V/m}

100 000 V/mです。

わずか 2 mm でも、電位差が 200 V あれば電界はこれだけ強くなります。
間隔を狭くすると電界が強くなる——この感覚が、Lesson7の C = εS/d でそのまま効きます。

はるの気づき

電界と電位を、
私は長いあいだ混ぜていました。

どちらも「電」がついていて、どちらも点電荷の式があって、どちらも分母に r がある。
違いは 2乗か1乗か——そう暗記していました。

だから、
少しひねられると崩れました。

分かれたのは、
たとえを分けてからです。

電界は傾き。
電位は高さ。

傾きは向きがある。高さは向きがない。
だから電界は打ち消し合うことがあり、電位は打ち消し合わない。

そして「傾き × 距離 = 高さ」だから、
電位のほうが r が1つ少ない。

二つの言葉を、
二つの絵に分けた。
それだけで混ざらなくなりました。

似ているものを覚え分けようとすると混ざります。
違う絵にすると、
混ざりません。

電験3種では、ここを確認する

出題のされ方は、
主に4つです。

  1. 点電荷の電位を求める
    V = kQ/r。分母が r であることを、電界と間違えない。

  2. 複数電荷の電位を求める
    符号を付けて、そのまま足す。向きは不要。

  3. 「電界が0の点」と「電位が0の点」を区別する問題
    同じ正電荷2つなら、中点は電界0・電位は正の値。大きさが同じ正電荷と負電荷なら、中点は電位0・電界は0でない。この対比は頻出です。

  4. 一様電界での V = Ed
    平行板の問題。mm → m の換算を忘れない。

3つ目が、
このLessonの本丸です。
図を描いて、
矢印(電界)と数値(電位)を別々に書き込んでください。

まとめ

電位は、1 Cあたりが持っているエネルギー。

V=\frac{W}{Q},\qquad W=QV,\qquad V=k\frac{Q}{r}

一様電界では、

V=Ed,\qquad E=\frac{V}{d}
  • 電界は傾き、向きがある、距離の2乗で効く
  • 電位は高さ、向きがない、距離の1乗で効く
  • 電界の合成は矢印、電位の合成は足し算
  • 電界が0でも、電位は0とはかぎらない

[N/C]と[V/m]は同じものです。

次からは、ここまでの5つのLessonを一つの部品に集約します。
コンデンサです。

電荷をためる、
電圧がかかる、
間に電界ができる、
エネルギーを持つ——全部つながります。

電界は傾き、
電位は高さ。
分かれたかどうか、6問で確認します。

EXERCISE

読んだ直後に、6問だけ。

最初の3問は、
計算しません

頭の中で答えてから、
答えを開いてください。

問1予想 ★★☆

点電荷からの距離を2倍にしました。
電位と電界は、
それぞれ何倍になりますか。

① 電位1/2・電界1/4 ② 電位1/4・電界1/2 ③ どちらも1/4

答えを見る

① 電位1/2・電界1/4

電位は V = kQ/r → 分母が1乗 → 1/2

電界は E = kQ/r² → 分母が2乗 → 1/4

覚え方ではなく、
理由で押さえてください。
傾き × 距離 = 高さ
電位は電界に距離を掛けた形なので、r が1つ減ります。

問2予想 ★★★

同じ大きさの正電荷を2つ離して置きました。
その中点では、
電界と電位はどうなっていますか。

① 電界0・電位0 ② 電界0・電位は0でない ③ 電界は0でない・電位0

答えを見る

② 電界0・電位は0でない

電界は向きがあるので、
左右から反対向きに来て打ち消し合います → 0。

電位は向きがないので、
打ち消しません。
両方を足すので、
むしろ大きな値になります。

これがSTEP3で最も出題される引っかけです。
電界が0だから電位も0、
は成り立ちません。
坂で言えば「傾きが0の場所(平ら)=高さも0」ではない、
というのと同じこと。
傾きが0でも、
高さは0とは限りません。

問3単位を選ぶ ★☆☆

[V/m]は、
次のどれと同じ単位ですか。

① [N/C] ② [J/C] ③ [C/m]

答えを見る

① [N/C]

どちらも電界の単位です。

Lesson3の定義から E = F/Q → [N/C]
このLessonの E = V/d → [V/m]
同じものを別の入口から書いただけです。

ちなみに②の[J/C]は電位[V]です。1 V は「1 Cあたり1 J」。
選択肢に[V/m]が出ても、
電界だと分かれば迷いません。

問4まちがい探し ★★☆

次の解答には誤りがあります。
どこでしょうか。

「2 μC の点電荷から 0.5 m 離れた点の電位を求める。

V = 9×10⁹ × 2×10⁻⁶ ÷ 0.5² = 7.2×10⁴ V

答えを見る

誤り:分母を r² にしている(電界の式を使っている)

電位の分母は r の1乗です。

正しくは V = 9×10⁹ × 2×10⁻⁶ ÷ 0.5 = 18×10³ ÷ 0.5 = 3.6×10⁴ V

ちなみに 7.2×10⁴ は、
この点の電界の値(V/m)です。
答えの数字自体は「どこかの正解」なので、
選択肢に必ず混ぜてあります。
単位を見れば見抜けます——問われているのが[V]か[V/m]か、
先に確認してください。

問5計算 ★☆☆

平行に置いた2枚の板の間隔が 5 mm、
間に 250 V を加えました。
板の間の電界は何 V/m ですか。

答えを見る

5×10⁴ V/m

まず単位。5 mm = 0.005 m

E = V/d = 250 ÷ 0.005 = 50 000 = 5×10⁴ V/m

板の間は一様電界なので、
どの位置でも同じ強さです(Lesson4)。
点電荷のように距離で弱まりません。
ここを取り違えると、Lesson7のコンデンサで全部ずれます。

問6計算(電位と電界を分ける)★★★

真空中に 4 μC の点電荷があります。0.6 m 離れた点の電位電界を、
それぞれ求めてください。

答えを見る

電位 6×10⁴ V / 電界 1×10⁵ V/m

共通部分を先に:9×10⁹ × 4×10⁻⁶ = 36×10³

電位(分母は r):36×10³ ÷ 0.6 = 6×10⁴ V

電界(分母は r²):36×10³ ÷ 0.36 = 1×10⁵ V/m

確認:電界 ÷ 電位 = 1×10⁵ ÷ 6×10⁴ ≈ 1.67 = 1/0.6

きれいに 1/r の差になっています。
電界と電位は、
距離1つ分だけ違う
——この関係が見えていれば、
片方が出ればもう片方はすぐ出せます。
ここまでで STEP3 の前半、
空間の話は終わりです。
次からは部品(コンデンサ)に入ります。

6問、
おつかれさまでした。

問2と問4が答えられたなら、STEP3で最も多い失点を避けられています。

迷ったら「電界は傾き、
電位は高さ」に戻ってください。

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