Lesson7 平行板コンデンサ|静電容量は何で決まるのか

Lesson6で、
静電容量 C を「ためやすさ」として扱いました。
でも、
こう思ったはずです。
その C は、
どうやって決まっているのか。
部品を作る側から見れば、
答えは3つしかありません。
- 板の広さ
- 板の間隔
- 間に何を挟むか
このLessonで1と2を、
次のLessonで3を扱います。
そして今回も、公式は後回しにします。
まず、構造から予想します。
板を広くしたら、どうなるか

電荷は、
板の表面に並んでいます。
板が広ければ、並べる場所が増えます。
だから、同じ電圧でもたくさんためられます。
**面積 S が大きいほど、C は大きい。**素直な比例です。
C\propto Sここは迷いません。
板を近づけたら、どうなるか

こちらは、
少し考えます。
「近づけたら、
狭くなるからためにくいのでは?」
逆です。
近づけるほど、
たくさんためられます。
理由は2通りの言い方ができます。
どちらでも構いません。
言い方1:引き合う力から
向かい合った板には、正と負の電荷がたまっています。
互いに引き合っています。
近いほど引き合う力が強い(Lesson2)。
強く引きつけ合えるということは、逃げずに留まっていられるということです。
だから、
たくさんためられます。
言い方2:電圧から
Lesson5で、
一様電界の関係を出しました。
同じ量の電荷がたまっていれば、電界 E はほぼ同じです。
そこで間隔 d を半分にすると、電圧 V も半分になります。
C = Q/V なので、V が半分になれば C は2倍。
**間隔 d が小さいほど、C は大きい。**反比例です。
C\propto\frac{1}{d}言い方2のほうが、
式で追えるぶん確実です。
ここで公式を出す

予想が出そろったので、
式にします。
- C:静電容量[F]
- ε:間の物質の誘電率[F/m]
- S:向かい合っている板の面積[m²]
- d:板の間隔[m]
面積 S は上、
間隔 d は下。
暗記ではありません。
- 広くすれば、ためやすい → 分子
- 離せば、ためにくい → 分母
構造から、
位置が決まります。
ε(誘電率)は次のLessonで扱います。
真空・空気なら ε₀ ≈ 8.85×10⁻¹² F/m です。
極板の間は、一様電界

Lesson4で、
平板から出る電気力線は広がらない、
と書きました。
だから、
極板の間はどこでも同じ強さの電界です。
点電荷のように、
離れても弱まりません。
そして、
この式にも d が入っています。
同じ電圧でも、
間隔を狭くすると電界は強くなる。
コンデンサをどこまでも薄く作れないのは、このためです。
電界が強くなりすぎると、間の絶縁が耐えられなくなって放電します(絶縁破壊)。
容量を稼ぎたい → 薄くしたい
でも薄くしすぎると壊れる
実際の部品は、
この綱引きの上に成り立っています。
計算する前に、予想する
C = εS/d の3つの量を、
それぞれ動かしてみます。
面積を2倍にしたら、
容量は。
**2倍。**分子にあるので比例です。
間隔を2倍にしたら、
容量は。
**半分。**分母にあるので反比例です。
面積を2倍、
かつ間隔を半分にしたら。
2倍 × 2倍 = 4倍。
Lesson2でやったのと同じ、
倍率の掛け合わせです。
そしてもう一段。
電源につないだまま、
間隔を半分にしました。
たまる電荷はどうなりますか。
ここで、Lesson6の最後に置いた区別が効きます。
電源につないだまま → 電圧 V が一定。
C が2倍になり、V は変わらないので、Q = CV は 2倍。
では、
電源を切り離してから間隔を半分にしたら。
切り離した → 電荷 Q が一定。
Q は変わらず、C が2倍。V = Q/C なので、
電圧は 半分になります。
同じ「間隔を半分」でも、答えが正反対です。
問題文のどこに「切り離す」と書いてあるかを、必ず探してください。
小さな数字で確認する
面積 0.02 m² の板を、1 mm 離して向かい合わせました。
間は真空です。
静電容量は。
単位を直します。1 mm = 0.001 m = 10⁻³ m。
C=\varepsilon_0\frac{S}{d}=8.85\times10^{-12}\times\frac{0.02}{10^{-3}} =8.85\times10^{-12}\times20=1.77\times10^{-10}\ \mathrm{F}177 pF です。
面積 0.02 m²(=約 14 cm 角)もの板を 1 mm まで近づけて、
たった 177 pF。
ファラドがいかに大きな単位かが、これで実感できます。
実際のコンデンサが μF 級の容量を持てるのは、次のLessonで扱う誘電体と、板を巻いたり重ねたりする構造のおかげです。
もう一つ。
E=\frac{V}{d}=\frac{100}{10^{-3}}=1\times10^{5}\ \mathrm{V/m}このコンデンサに 100 V を加えました。
極板間の電界は。
100 000 V/m。1 mm しか離れていないのに、
これだけの電界になります。
はるの気づき
私はこの式を「シーイコールイプシロンエスぶんのディー」と唱えて覚えていました。
呪文です。
意味は考えていませんでした。
だから、
こう聞かれると答えられませんでした。
極板を離すと、
容量はどうなりますか。
式を思い出そうとして、d が上だったか下だったかで迷う。
迷ったまま適当に答える。
変わったのは、
式を先に思い出すのをやめてからです。
離したら、引き合う力が弱くなる。留めておけなくなる。
だから、ためにくくなる。だから d は分母。
現象から式の形を作れるようになると、
思い出す必要がなくなります。
呪文は忘れます。
理由は忘れません。
電験3種では、ここを確認する
平行板コンデンサは、
そのまま計算問題になります。
確認すべきは4つ。
-
単位をすべて基本単位に直す
mm → m、cm² → m²。特に面積は、cm² → m² が 10⁻⁴ 倍です。1万分の1。ここは間違えやすい。 -
C = εS/d と E = V/d を混ぜない
どちらにも d が入っていますが、求めるものが違います。 -
「電源につないだまま」か「切り離した後」か
つないだまま → V 一定
切り離した → Q 一定
どちらが一定かを決めてから、変化を追ってください。 -
絶縁破壊の考え方
間隔を狭くすると電界が強くなる。耐えられる電界の上限(絶縁耐力)から、使える電圧が決まります。
3つ目は、Lesson8・Lesson10でも繰り返し出てきます。STEP3で最も差がつく読み分けです。
まとめ
平行板コンデンサの静電容量は、
C=\varepsilon\frac{S}{d}- 面積 S は分子(広ければためやすい)
- 間隔 d は分母(離せばためにくい)
- ε は間の物質で決まる(次のLesson)
極板間は一様電界で、
E=\frac{V}{d}そして、
条件を変える問題では、
- 電源につないだまま → V 一定
- 電源を切り離した後 → Q 一定
次は、3つ目の要素である ε に入ります。
間に物を挟むと、なぜ容量が増えるのか。
Lesson1で出てきた誘電分極が、
ここで回収されます。
C=εS/d は、
暗記ではなく構造から出せるはずです。6問で確認します。
EXERCISE
読んだ直後に、6問だけ。
最初の3問は、
計算しません。
頭の中で答えてから、
答えを開いてください。
問1予想 ★☆☆
極板の間隔を 3倍に広げました。
静電容量はどうなりますか。
① 3倍 ② 1/3 ③ 1/9 ④ 変わらない
答えを見る
② 1/3
d は分母なので反比例です。
式を思い出せなくても出せます。
離すと引き合う力が弱まり、
電荷を留めておけなくなる → ためにくい → 容量は減る。
③を選んだ人は、
クーロンの法則の 2乗を持ち込んでいます。C = εS/d の d は1乗です。「2乗で効くのは力と電界だけ」と切り分けてください。
問2予想 ★★★
電源につないだまま、
極板の間隔を半分にしました。
たまる電荷はどうなりますか。
① 2倍 ② 半分 ③ 変わらない
答えを見る
① 2倍
電源につないだまま → 電圧 V が一定。
間隔が半分 → C は2倍。Q = CV で V が変わらないので、Q も 2倍。
もし「電源を切り離してから」なら答えは変わります。
切り離すと Q が一定になり、V = Q/C で電圧が半分になります。
同じ操作でも、
つないだままか切り離したかで問われる量が入れ替わる——ここが出題の狙いです。
問3式を選ぶ ★☆☆
平行板コンデンサの静電容量を表す式はどれですか。
① C = εSd ② C = εS/d ③ C = εd/S
答えを見る
② C = εS/d
広くすれば、
ためやすい → S は分子
離せば、
ためにくい → d は分母
③を選んでしまう人は、
抵抗の R = ρl/S(長いほど、
細いほど流れにくい)と混ざっています。
抵抗は「にくさ」、
容量は「やすさ」なので、S と長さの位置が入れ替わる——並べて覚えると、
むしろ混ざりません。
問4まちがい探し ★★★
次の解答には誤りがあります。
どこでしょうか。
「面積 100 cm²、
間隔 2 mm、
真空の平行板コンデンサの容量を求める。
C = 8.85×10⁻¹² × 100 ÷ 0.002 = 4.4×10⁻⁷ F」
答えを見る
誤り:cm² を m² に直していない
1 m² = 10 000 cm² なので、100 cm² = 100 × 10⁻⁴ = 0.01 m²
正しくは C = 8.85×10⁻¹² × 0.01 ÷ 0.002 = 4.4×10⁻¹¹ F ≈ 44 pF
気づき方:4.4×10⁻⁷ F は 0.44 μF。手のひらサイズの板2枚で μF 級は出ません。
長さの換算は 10⁻² ですが、
面積は2乗なので 10⁻⁴。
ここを 10⁻² のままにすると、
答えが100倍ずれます。cm² を見たら、
指数を2倍にする——固定してください。
問5計算 ★★☆
面積 0.05 m²、間隔 2 mm、間は真空の平行板コンデンサです。静電容量は何 pF ですか。
ε₀ = 8.85×10⁻¹² F/m
答えを見る
およそ 221 pF
d = 2 mm = 2×10⁻³ m
S/d = 0.05 ÷ 0.002 = 25
C = 8.85×10⁻¹² × 25 = 2.21×10⁻¹⁰ F ≈ 221 pF
先に S/d を計算してしまうのがコツです。
指数の掛け算が1回で済みます。22 cm 角ほどの板を 2 mm まで近づけて、
たった 221 pF——真空や空気では、
この程度しか稼げません。
だから誘電体を挟みます(次のLesson)。
問6計算(条件を読み分ける)★★★
問5のコンデンサに 200 V を加え、電源を切り離してから、極板の間隔を 4 mm に広げました。
(1) 極板間の電圧は何 V になりますか。
(2) 広げる前と後で、極板間の電界はどうなりますか。
答えを見る
(1) 400 V (2) 変わらない(1×10⁵ V/m)
(1) 切り離した → Q が一定
間隔が 2倍 → C は半分。V = Q/C なので、
電圧は 2倍の 400 V。
(電荷は Q = 2.21×10⁻¹⁰ × 200 ≈ 4.4×10⁻⁸ C のまま変わりません)
(2) 電界は変わらない
広げる前:E = 200 ÷ 0.002 = 1×10⁵ V/m
広げた後:E = 400 ÷ 0.004 = 1×10⁵ V/m ✓
電圧は2倍になったのに、
電界は同じ。
電荷が変わっていないからです(電界は極板の電荷密度で決まります)。「電圧が上がったのだから電界も強くなるはず」と考えると外します。
何が一定かを先に決める——この一手が、STEP3の後半をずっと支えます。
6問、
おつかれさまでした。
問2と問6が答えられたなら、STEP3で最も差がつく読み分けができています。
次は、
極板の間に物を挟みます。



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