Lesson11 静電気の過去問へ|図が描けたら、半分は解けている

STEP3の最終回です。
Lesson1から10まで、
電荷・電界・電位・コンデンサを見てきました。
でも、
ここで手が止まる人がいます。
「一つずつは分かったのに、
問題になると解けない」
STEP2 Lesson11でも、同じ場所を扱いました。
原因も同じです。知識が足りないのではなく、手順がないからです。
このLessonで、
静電気の問題を解く7つの手順を作ります。
静電気の問題が難しく見える理由

直流回路には、回路図がありました。
線があって、部品があって、電流の道が見えていました。
静電気には、
それがありません。
- 点電荷が2つ、離れて置いてある
- 極板が向かい合っている
- 誘電体が半分だけ入っている
問題文が、
状況の説明だけで終わっていることが多い。
だから、
まず自分で図にする必要があります。
そして、
ここが分かれ道です。
図を描く人は解ける。
描かない人は解けない。
知識の差ではありません。
最初の1分の差です。
静電気の7つの手順

手順1 図を描く
まず、
状況を紙に描きます。
- 電荷なら:位置と符号を書き込む
- 極板なら:2枚の板、間隔 d、面積 S、極性を書き込む
- 誘電体があるなら:どこに、どの向きで入っているか
**きれいでなくて構いません。**位置関係と符号が分かれば十分です。
手順2 与えられた量と、求める量を整理する
図の中に、
数値を書き込みます。
そして、
求めるものに印を付けます。
ここで、
単位も一緒に基本単位へ直しておきます。
- μC → ×10⁻⁶
- mm → ×10⁻³
- cm² → ×10⁻⁴(2乗なので 10⁻⁴)
この時点で換算を済ませておけば、
あとで悩みません。
手順3 何が一定に保たれているかを確認する
静電気特有の手順です。
ここが最重要です。
問題文から、
次のどちらかを探します。
- 「電源に接続したまま」→ 電圧 V が一定
- 「電源を切り離してから」→ 電荷 Q が一定
書いていなければ、
条件を変える問題ではありません。
書いてあるのに読み飛ばすと、
答えが正反対になります。
Lesson7・8・10で繰り返し出てきたのは、
このためです。
手順4 どの量が何乗で効くかを言う
計算する前に、
変化の向きを言葉にします。
| 量 | 効き方 |
|---|---|
| クーロン力 F | 距離の 2乗に反比例 |
| 電界 E | 距離の 2乗に反比例 |
| 電位 V | 距離の 1乗に反比例 |
| 容量 C | 面積 S に比例、間隔 d に反比例 |
| エネルギー W | 電圧の 2乗に比例 |
「距離を2倍にしたから、
電界は1/4になるはず」
この一言があるだけで、
計算結果が明らかにおかしいときに気づけます。
手順5 法則を言葉で選ぶ
式を書く前に、
日本語で言います。
- 「電荷が2つあるから、クーロンの法則」
- 「1つの電荷のまわりの話だから、電界の式」
- 「極板の構造から容量を出すので、C = εS/d」
- 「直列だから電荷が共通」
- 「Q と C があるから、エネルギーは Q²/2C」
公式名を当てるゲームではありません。
求めたい量へ進む道順を作っています。
手順6 数式へ変える
ここで初めて、
式を書きます。
そして代入します。
指数の計算は、
先にまとめるのがコツです。
電卓任せにすると、
桁を見失います。
手順7 単位と桁を確認する
答えが出たら、
必ず確認します。
- 単位は合っているか([V]か[V/m]か、[C]か[F]か)
- 桁は妥当か(静電気の答えは、たいてい μ や p の世界)
- 手順4の予想と合っているか
合っていなければ、
どこかで間違えています。
静電気で落としやすい5つの失点

失点1 電界と電位の取り違え
分母が r² か r か。
単位が[V/m]か[V]か。
問われているのはどちらかを、
手順2で先に確認してください。(Lesson5)
失点2 直列・並列を抵抗と同じにする
コンデンサの並列は足す、
直列は逆数の和。
「抵抗の逆」で覚えず、
極板が横に並ぶ(面積)か、
縦に重なる(間隔)かで判定してください。(Lesson9)
失点3 ½ の落とし
エネルギーの ½ は、Q-Vグラフの三角形の面積から来ています。
忘れたら、
三角形を描いてください。(Lesson10)
失点4 単位換算のミス
μ・n・p、mm、cm²。
特に cm² → m² は 10⁻⁴(2乗なので)。
長さの 10⁻² と混同しないでください。(Lesson1・7)
失点5 「切り離した後」の読み落とし
問題文のこの一文が、
答えを正反対にします。
見つけたら、
線を引いてください。(Lesson6・7・8・10)
実際に、7手順で解いてみる

面積 0.02 m²、間隔 1 mm、間は空気の平行板コンデンサに 300 V を加えて充電した。
電源を切り離してから、比誘電率 2 の誘電体をすき間なく挿入した。
挿入後の極板間の電圧を求めよ。
ただし ε₀ = 8.85×10⁻¹² F/m とする。
手順1 図を描く
極板2枚、間隔 1 mm。上に +、下に −。
あとから、間に誘電体が入る。
手順2 整理する
- S = 0.02 m²
- d = 1 mm = 1×10⁻³ m
- V = 300 V
- εr = 2
- 求めるもの:挿入後の電圧[V]
手順3 何が一定か
**「電源を切り離してから」**とあります。
→ 電荷 Q が一定。
線を引いておきます。
手順4 何乗で効くか
- 誘電体を入れると、容量は εr 倍(1乗)→ 2倍
- Q 一定で C が2倍なら、V = Q/C は 半分になるはず
予想:150 V くらい。
手順5 法則を言葉で選ぶ
「構造から容量を出す → C = εS/d」
「電荷は一定なので、V = Q/C」
手順6 数式へ
挿入前の容量。
C_0=\varepsilon_0\frac{S}{d}=8.85\times10^{-12}\times\frac{0.02}{10^{-3}} =8.85\times10^{-12}\times20=1.77\times10^{-10}\ \mathrm{F}挿入後は 2倍。
C=2\times1.77\times10^{-10}=3.54\times10^{-10}\ \mathrm{F}電荷は一定なので、
Q=C_0V_0=1.77\times10^{-10}\times300=5.31\times10^{-8}\ \mathrm{C} V=\frac{Q}{C}=\frac{5.31\times10^{-8}}{3.54\times10^{-10}}=150\ \mathrm{V}手順7 確認
- 単位:[V]✓
- 手順4の予想(半分=150 V)と一致 ✓
実は、
手順4の時点で 150 V と分かっていました。
手順6は、
確認のためだけにやっている。
これが、
静電気の問題の理想的な解き方です。
「全部理解してから」ではなく、いま一問
STEP2でも書きました。
全部理解してから過去問、
では永遠に始まりません。
いま、
静電気の過去問を一問開いてください。
そして、
正解・不正解より先に、
次を確認してください。
- 図は描けたか
- 与えられた量を整理できたか
- 何が一定かを見つけられたか
- どの法則を使うか、言葉で言えたか
ここまで進めたなら、
たとえ計算を間違えても、
以前とはまったく違う場所にいます。
止まった場所が分かれば、
戻る先も分かります。
止まったら、ここへ戻る
| 止まった場所 | 戻るLesson |
|---|---|
| 電荷・単位換算で止まる | Lesson1 |
| 力の大きさが出ない | Lesson2 |
| 電界の向き・合成で止まる | Lesson3 |
| なぜ距離の2乗か分からない | Lesson4 |
| 電界と電位が混ざる | Lesson5 |
| Q=CV が使えない | Lesson6 |
| C=εS/d の分子分母で迷う | Lesson7 |
| 誘電体で容量がどうなるか | Lesson8 |
| 直列・並列を取り違える | Lesson9 |
| ½ を落とす、エネルギーが合わない | Lesson10 |
全部やり直す必要はありません。
止まった一つへ戻って、また前へ進んでください。
はるの気づき
静電気を、
私は「暗記分野」だと思っていました。
公式が多い。図がない。イメージできない。
だから覚えるしかない、と。
でも、
覚えるほど混ざりました。
r² と r。S/d と d/S。直列と並列。½ が付くか付かないか。
似ているものが、記憶の中で溶け合っていきました。
変わったのは、
覚えるのをやめてからです。
r² は球の表面積。S/d は広さと近さ。
直列は間隔が増える。½ は三角形。
理由をたどった公式は、混ざりません。
形が似ていても、出どころが違うからです。
覚える量を増やすほど苦しくなるなら、
それは覚え方が間違っています。
減らす方向へ進んでください。
STEP3修了チェック
- □ 電荷が「たまっている」と「流れている」を区別できる
- □ クーロンの法則で、距離が2乗で効くと言える
- □ 電界の向きを「正の電荷が受ける力」で決められる
- □ 距離の2乗が球の表面積から来ていると説明できる
- □ 電界(傾き・2乗)と電位(高さ・1乗)を混同しない
- □ Q=CV の3つの量を整理して使える
- □ C=εS/d の分子・分母を構造から言える
- □ 誘電体で容量が増える理由を、電界の弱まりから説明できる
- □ コンデンサの直列・並列を、極板の形から判定できる
- □ 静電エネルギーの ½ の理由を説明できる
- □ 「切り離した後(Q一定)」と「つないだまま(V一定)」を読み分けられる
全部できるまで先へ進めない、という試験ではありません。
7つ以上できたら、静電気の基本過去問を始めてください。
まとめ
静電気の問題は、
公式を思い出した人から解けるのではありません。
- 図を描く
- 与えられた量と求める量を整理する
- 何が一定に保たれているかを確認する
- どの量が何乗で効くかを言う
- 法則を言葉で選ぶ
- 数式へ変える
- 単位と桁を確認する
この順番があれば、
公式を少し忘れても戻れます。
そして落としやすいのは、
この5つ。
- 電界と電位の取り違え
- 直列・並列を抵抗と同じにする
- ½ の落とし
- 単位換算(特に cm² は 10⁻⁴)
- 「切り離した後」の読み落とし
まず、静電気の過去問を一問解いてみてください。
正解・不正解だけでなく、どこまで自分で進めたかを確認してください。
最後は、7つの手順そのものを使う6問です。
計算より、
手順を通すことを意識してください。
EXERCISE
STEP3の総仕上げ、6問。
どの手順を使っているかを、
意識しながら解いてください。
答えを開くと、
対応するLessonが書いてあります。
問1予想(手順3)★★☆
問題文に「電源を接続したまま」とあります。
このとき一定に保たれるのはどれですか。
① 電荷 Q ② 電圧 V ③ 静電容量 C
答えを見る
② 電圧 V
電源につながっているかぎり、
極板間の電圧は電源電圧のままです。
電荷は出入りできます。
「切り離した後」なら逆で、
電荷 Q が一定(出入り口がないため)。
この一文を見つけて線を引くのが、
静電気の手順3です。
ここを飛ばすと、
正しい公式を使っても答えが正反対になります。→ Lesson6・7・8・10
問2予想(手順4)★★☆
点電荷からの距離を 1/2 にしました。
電界と電位は、
それぞれ何倍になりますか。
① 電界4倍・電位2倍 ② 電界2倍・電位4倍 ③ どちらも4倍
答えを見る
① 電界4倍・電位2倍
電界 E = kQ/r² → 2乗で効く → 4倍
電位 V = kQ/r → 1乗で効く → 2倍
これが手順4です。
計算前に倍率を言っておけば、
答えが明らかにおかしいときに気づけます。
迷ったら「電界は傾き、
電位は高さ。
傾き×距離=高さ」に戻ってください。→ Lesson3・5
問3法則を選ぶ(手順5)★★☆
「極板の面積と間隔、
挟んだ物質の比誘電率が与えられ、
静電容量を求めよ」——使う法則を言葉で選ぶとどれですか。
① クーロンの法則 ② C = ε₀εr S/d ③ W = ½CV²
答えを見る
② C = ε₀εr S/d
言葉にすると「構造から容量を出す」。
面積・間隔・誘電率が与えられたら、
この式です。
同じ C でも、Q と V から出すなら C = Q/V。
与えられた量が、
使う式を決めます。
公式名を当てるゲームではありません。
求めたい量へ進む道順を、
日本語で作るのが手順5です。→ Lesson7・8
問4まちがい探し(手順7)★★★
次の解答には誤りがあります。
どこでしょうか。
「電源を切り離した 4 μF のコンデンサ(充電電圧 100 V)に、
比誘電率 2 の誘電体を挿入した。
挿入後のエネルギーを求める。
C が2倍になるので、W = ½CV² より エネルギーも2倍。0.02 → 0.04 J」
答えを見る
誤り:切り離しているのに、V が一定として計算している
切り離した → Q が一定。V は変わります(V = Q/C で 1/2 の 50 V に)。
Q が分子にある W = Q²/2C を使うのが正解です。C が2倍 → W は半分。
挿入前 W = ½ × 4×10⁻⁶ × 10⁴ = 0.02 J → 挿入後 0.01 J
式そのものは正しくても、
一定でない量を一定として使うと崩れます。
手順3で「Q 一定」と決めたら、Q が分子にある式を選ぶ。
この一手で防げます。→ Lesson8・10
問5計算(手順1〜6)★★☆
4 μF と 6 μF のコンデンサを直列につなぎ、全体に 100 V を加えました。
4 μF のほうにたまるエネルギーは何 J ですか。
まず手順3で「直列では何が共通か」を確認し、
手順4で「どちらに大きい電圧がかかるか」を予想してから計算に入ってください。
答えを見る
0.0072 J(7.2 mJ)
手順3(何が共通か):直列なので電荷 Q が共通。
手順4(予想):容量が小さい 4 μF のほうに、
大きい電圧がかかるはず。
手順6(計算):
合成容量:C = (4×6) ÷ (4+6) = 24 ÷ 10 = 2.4 μF(4より小さい ✓)
共通電荷:Q = 2.4 × 100 = 240 μC
4 μF の電圧:V = 240 ÷ 4 = 60 V(6 μF は 40 V。
合計100 V ✓)
エネルギー:W = ½ × 4×10⁻⁶ × 60² = ½ × 4×10⁻⁶ × 3600 = 7.2×10⁻³ J
予想どおり、
小さい 4 μF に大きい 60 V がかかりました ✓ W = Q²/2C でも確かめられます:(240×10⁻⁶)² ÷ (2×4×10⁻⁶) = 7.2×10⁻³ J ✓ → Lesson9・10
問6計算(7手順を通す)★★★
面積 0.03 m²、間隔 1.5 mm、間は空気の平行板コンデンサに 400 V を加えて充電しました。
電源を切り離してから、極板の間隔を 3 mm に広げました。
(1) 広げた後の電圧 (2) 広げた後の極板間の電界 を求めてください。
ε₀ = 8.85×10⁻¹² F/m
答えを見る
(1) 800 V (2) 約 2.7×10⁵ V/m
手順2(整理):S = 0.03 m²、d = 1.5×10⁻³ m、V = 400 V
手順3(何が一定か):切り離した → Q が一定
手順4(予想):間隔が2倍 → C が半分 → V = Q/C で電圧は 2倍の 800 V。
電界は電荷で決まるので変わらないはず。
手順6(計算):
(1) V = 400 × 2 = 800 V
(2) 広げる前:E = 400 ÷ 0.0015 ≈ 2.7×10⁵ V/m
広げた後:E = 800 ÷ 0.003 ≈ 2.7×10⁵ V/m ✓(変わらない)
手順4の予想が、
両方とも当たりました。
ここまで来たら、
計算は確認作業です。ちなみに容量は C = 8.85×10⁻¹² × 20 = 1.77×10⁻¹⁰ F ですが、
この問題では使わずに解けています——倍率だけで進むのが、
いちばん速くて間違えにくい道です。→ Lesson7
STEP3、
おつかれさまでした。
問5と問6が最後まで通ったなら、
静電気の過去問に入れます。
途中で止まったところがあれば、
そのLessonにだけ戻ってください。
全部をやり直す必要はありません。
STEP3を終えた人へ
ここまでで、
静電気とコンデンサをひととおり通しました。
STEP2で「流れている電気」を読み、STEP3で「たまっている電気」を読みました。
理論科目の土台のうち、二つ目が終わっています。
次のSTEPでは、
磁気を扱います。
そして、
そこで気づくはずです。
- 電界 ↔ 磁界
- 電気力線 ↔ 磁力線
- 誘電率 ε ↔ 透磁率 μ
構造がそっくりです。
STEP3で「見えないものを描いてから計算する」を身につけた人は、
磁気でそのまま同じことをします。
一つ前の分野が、次の分野の予習になっている。
このシリーズは、そう並べてあります。



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