Lesson5 線間と相の変換|√3と30°を読む
今日のゴール
Lesson3のY結線では電圧側、Lesson4のΔ結線では電流側に√3が現れました。「どちらに掛けるのか」が混ざったら、公式を覚え直す前に、同じ経路か、2本の差かを見ます。
今日は、同じ長さで120°離れた2本のベクトルの差から、√3と30°が出るところまで確かめます。式を全部暗算できなくても、図を見てY・Δのどちらに√3が付くか選べれば、まず十分です。
過去問で「線間電圧200 V」と書かれた瞬間、200に√3を掛けるのか割るのか、手が止まることがあります。そこで今日は値の名前を確認 → 結線を見る → 差になる側を選ぶ、の順で進めます。公式を増やすより、最初の一行を自分で書けるようにしましょう。
この図を見る理由: 答えを急がず、まず問題文の「線間」という一語を確認する場面を思い浮かべるためです。

図から読むこと: 迷ったら数字をすぐ式に入れず、線間値か相値かをノートの最初の一行に書きます。この後、その判断から√3を掛ける側・割る側を選びます。
最初に、線量と相量を分ける
V_Lは線と線の間の電圧、V_Pは一つの相にかかる電圧です。I_Lは外へ出る線に流れる電流、I_Pは一つの相の枝に流れる電流です。ここでは、いずれも実効値の大きさを表します。
問題を解くときは、電圧・電流の数字の横にまず「線」か「相」と書きます。次にY結線かΔ結線かを確認します。この二つを決めてから式を選べば、√3を掛ける側が見えてきます。
120°の差から、√3と30°を出す
電圧ベクトルを例に、同じ長さをVとします。1本目を右向きの0°、2本目をそこから時計回りに120°の−120°に置きます。1本目から2本目を引くときは、2本目の先から1本目の先へ矢印を描きます。Δ結線の電流にも、同じ形の計算を使えます。
この図を見る理由: 最初の2本はどちらも長さVなのに、120°ずれると、先端どうしを結ぶ差が√3Vになることを一目で確かめるためです。

図から読むこと: O→AとO→Bは同じ長さのV。差A−Bは、BからAへ向かう斜めの矢印です。長さは√3V、右向きのO→Aより30°上を向きます。30°はAの内角に描いてあり、斜めの矢印を平行移動して向きを比べても同じ30°です。
ここは、ベクトルを「ふつうの引き算」として扱わないところです。向きが違うため、大きさだけを引いてV−V=0とはできません。
2本目は−120°を向くので、横成分はV cos(−120°)=−V/2、縦成分はV sin(−120°)=−√3V/2です。ここで符号が変わるところを、飛ばさずに見ます。
1本目の成分は横V、縦0。ここから2本目を引くと、横はV−(−V/2)=3V/2、縦は0−(−√3V/2)=√3V/2になります。マイナスを引くため、どちらも正の向きに残ります。
この図を見る理由: 横3V/2、縦√3V/2、斜辺がベクトルの差という、三つの長さを分けて読むためです。この図は引き算の結果を成分に分けた直角三角形で、元の2本のベクトルを描いた図ではありません。

図から読むこと: 直角三角形の斜辺が差の大きさです。三平方の定理で√((3V/2)²+(√3V/2)²)=√3V。横に対する縦の比は1/√3なので、右向きの基準から30°上を向きます。
30°の向きは、相順と、どの量を0°に置くかで変わります。まず共通する大きさは√3倍、方向には30°のずれがある、と分けて覚えてください。
Y結線では、電圧が差になる
Y結線では、a相の電圧V_aは中性点Nからa、b相の電圧V_bはNからbです。aとbの線間電圧は、2本の相電圧のベクトル差V_ab=V_a−V_bです。
この図を見る理由: 相電圧はN–aの1本、線間電圧はa–bの2点間だと、測る場所から確認するためです。

図から読むこと: 電圧側は直結ではなく、120°離れた2本の相電圧の差です。平衡した正相でV_aを0°とすれば、V_abは√3倍で30°進みます。線電流は一つの相の枝をそのまま通るので、大きさは相電流と同じです。
たとえば線間電圧が200 Vなら、相電圧は200÷√3≈115 Vです。線間から相へ戻すので割る、と測る2点の変化まで言葉にします。
この例で200に√3を掛けると、線間値より相値のほうが大きくなってしまいます。「Yでは線間が相の√3倍」と図へ戻れば、割ると判断できます。
Δ結線では、電流が差になる
Δ結線では、一つの相の枝が二つの線の間に直接つながるため、相電圧と線間電圧は同じです。一方、aの接続点で、線電流I_aは枝電流I_abとI_caのベクトル差になります。
この図を見る理由: a点に入る線電流とc→aの枝電流、a→bへ出る枝電流の向きを、式の前に確認するためです。

図から読むこと: a点ではI_a+I_ca=I_abなので、I_a=I_ab−I_caです。平衡した正相でI_abを0°、I_caを+120°に置くと、線電流は√3倍で30°遅れます。
たとえば線電流が30 Aなら、相電流は30÷√3≈17.3 Aです。線から相へ戻すので割るのはY結線の例と同じでも、割る対象は電流に変わります。
迷ったときの選び方
結線図で「一つの相と同じ経路・同じ2点」はそのまま等号にします。「120°離れた二つの相の差」を取る側にだけ、平衡時の√3が付きます。
- Y結線:電流はそのまま
I_L=I_P。平衡時、電圧はV_L=√3V_P。 - Δ結線:電圧はそのまま
V_L=V_P。平衡時、電流はI_L=√3I_P。
この2行は暗記の入口ではなく、図を読んだ結果の確認に使います。なお、√3の大きさの関係は平衡した三相が前提です。不平衡でも接続点の電流の式は使えますが、必ず√3倍とは言えません。
止まりやすいポイント
- 120°ずれたベクトルの「差」を、大きさだけの引き算にしない。先端同士を結ぶ矢印を描きます。
- 線量から相量へ戻すときは、√3を掛けるのではなく割る側があります。先に与えられた値へ「線」「相」を書きます。
- 30°は必ず進みとは限りません。この記事の基準では、Yの
V_abはV_aより30°進み、ΔのI_aはI_abより30°遅れます。 - 不平衡の問題には、平衡時の√3の式をそのまま当てはめません。Lesson6で別に扱います。
このLessonのまとめ
- 同じ長さで120°ずれた2本の差は、元の長さの√3倍。基準に対して30°向きがずれます。
- Y結線では電圧が差、電流は同じ経路です。
- Δ結線では電圧は同じ2点、電流が接続点での差です。
- 数字に「線/相」を書き、結線を見て、掛けるか割るかを選びます。
次のLessonへ
Lesson6では、ここまでの平衡という条件をいったん外します。三相負荷がそろわないとき、線電流と中性線の電流がどう変わるかを見ていきます。
EXERCISE
読んだ直後に、6問だけ。
√3が付く側、線量から相量への戻し方を確認します。
問1 予想 ★☆☆
√3が現れるもとになる、二つの相ベクトルの角度差は?
問2 式・法則 ★☆☆
Y結線で、平衡時に√3が付くのは?
問3 式・法則 ★☆☆
Δ結線で、平衡時に√3が付くのは?
問4 まちがい探し ★★☆
「Y結線では V_P=√3V_L」のどこが違う?
問5 計算 ★★☆
平衡Y結線の線間電圧200 V。相電圧はおよそ?
問6 計算 ★★☆
平衡Δ結線の線電流30 A。相電流はおよそ?
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