「電験三種、取ってみようかな」
そう思って、
参考書を買った。
今の仕事にも役立ちそうだし、
資格手当がつく会社もある。
設備の仕事を続けるなら、
持っていて損はなさそうだ。
ネットで調べて、
評判のいい参考書も買った。
ここまではよかった。
問題は、そのあと。
家に帰って参考書を開いた。
数ページ読んだ。
そして思った。
……何を言ってるの?

電圧。
電流。
抵抗。
このくらいは聞いたことがある。
ところが、少し読み進めると、
知らない記号。
分数。
√。
sin、cos。
よく分からない回路図。
そして突然始まる計算。
解説には、
「これを変形すると」
「したがって」
「以上より」
と書いてある。
いや。
その途中を教えてくれ。
そこが分からない。
何度か読み直してみる。
それでも分からない。
YouTubeも見てみる。
やっぱり、よく分からない。
そして数日後。
買ったばかりの参考書は、
机の端に置かれる。
さらに数週間後。
本棚に移動する。
電験三種の勉強、終了。

まだ過去問すら解いていない。
本格的な勉強すら始めていない。
なのに、もう挫折した
気分になっている。
なぜ、勉強する前に挫折してしまうのか?
「自分には電験三種は無理だった」
そう思うかもしれません。
でも、本当にそうでしょうか。
まだ電磁気も、
交流回路も、
三相交流も、
ほとんど勉強していない。
それなのに、
「自分には電験三種は無理」
と判断してしまう。
ちょっと早いと思うんです。

もしかすると、
電験三種で挫折したのではなく、
電験三種を説明するための
「言葉」で止まっただけ
なのかもしれません。
どうして参考書に書いてある意味が分からないのか?
電験三種の参考書は、
当然ですが、
電気」を説明する本です。
ところが電気を説明するためには、
あるものを使います。
数学です。
たとえば最初は、
「電圧が大きくなれば、
電流も大きくなる」
と日本語で説明されたら、
なんとなくイメージできる。
でも参考書では、
それを毎回長い文章では
書きません。
電流を「I」
電圧を「V」
抵抗を「R」
と記号に置き換えて、
I = V ÷ R
と書く。
ここで数学に慣れている人なら、
「ああ、なるほどね」

で終わります。
でも、
分数や式変形が
苦手だったらどうでしょう。
電気を理解する前に、
式を読むところで頭が止まります。
さらに次のページでは、
その式の形まで変わる。
さっきまで、
I = V ÷ R
だったのに、
今度は、
R = V ÷ I
になる。
「え、なんで?」

この小さな「なんで?」
を残したまま先へ進む。
すると、その先で
新しい公式が出てくる。
さらに次の公式。
また次の公式。
気づいたころには、
参考書を開くだけで嫌になる。
これ、
電気が嫌いになったのでしょうか。
それとも、
分からないものが
積み重なりすぎただけ
なのでしょうか。
じゃあ、どうすればいい?
一度、戻ればいいんです。
電験三種の参考書を無
理に先へ進める必要は
ありません。
分数が分からないなら、
分数へ戻る。
式変形が分からないなら、
式変形へ戻る。
√が出てきた瞬間に頭が止まるなら、
「そもそも√って何だっけ?」
から始める。

sin、cosを見ただけで
拒絶反応が出るなら、
三角比の意味から始めればいい。
中学数学まで戻ったっていい。
遠回りに見えるかもしれません。
でも、
分からないまま100ページ進むより、
分からなくなった1ページを
理解する方が、
その後はずっと楽になります。
数式は、頭のいい人だけが読む暗号じゃない
私が電気数学を学ぶうえで、
大切だと思っていることがあります。
数式を、いきなり
数式として覚えないこと。
まず、
何が起きているのかを見る。
次に、
頭の中でイメージする。
そして、
日本語で意味を理解する。
最後に数式を見る。
現象 → イメージ → 理解 → 数式
この順番です。

そうすると、
意味不明だった記号の並びが、
「ああ、さっきの話を
短く書いただけなのか」
と少しずつ読めるようになります。
では、何から始める?
今日から毎日2時間。
そんな目標はいりません。
まず、しまってある参考書を
もう一度開いてみてください。
そして、
最初に「何言ってるか分からない」
と思ったところを探してみてください。
そこで止まっていい。
むしろ、そこが大事です。
「何が分からない?」
と一つだけ考えてみる。
電気そのものなのか。
言葉なのか。
分数なのか。
式変形なのか。
記号なのか。
それが見つかったら、
そこがあなたのスタート地点です。

参考書を買ったのに、
ほとんど進まなかった。
そんな経験があると、
「自分は意志が弱い」
「勉強が続かない」
と思ってしまうかもしれません。
でも、
まだ電験三種そのものに
負けたわけではありません。
入口で、
書いてある言葉の意味が
分からなかっただけかもしれない。
だったら、
入口から作り直せばいい。
分数からでもいい。
中学数学からでもいい。
「電圧って何?」
からでもいい。
電験三種の勉強は、
参考書の1ページ目から
始めなければならない
わけではありません。
あなたが最初に
「分からない」と感じた場所。
そこから始めればいいんです。



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