仕事から帰ってきて、
ご飯を食べて、
風呂に入れる。
気づけば、もう21時。
机の上には、
電験三種の参考書。
「今日は30分だけやろう」
そう思って開いたのに、
仕事の疲れで全然頭に
入ってこない。

同じところを何度も読む。
時計を見る。
もう22時。
ふと思う。
「俺、何やってるんだろう」
会社では、
明日も同じ仕事が待っている。
給料が急に上がるわけでもない。
資格を取ったからといって、
人生が保証されるわけでもない。
それなのに、
眠い目をこすりながら、
よく分からない電気の勉強をしている。
そして、一度は考える。
「電験に受かったら、
本当に今の自分は変わるのだろうか?」

なぜ、電験三種を取ろうと思ったんだろう
最初は、
そんなに大きな理由じゃ
なかったかもしれません。
上司に言われた。
資格手当がつく。
設備の仕事をしているから。
転職に使えそうだから。
なんとなく将来が不安だから。
理由は、人それぞれです。
でも勉強を続けていると、
だんだん別の気持ちが
出てくることがあります。
「このままでいいのかな」

10年後も、
今と同じ会社で、
今と同じような仕事を
しているのだろうか。
給料はどうなっているんだろう。
会社が変わったら、
自分には何が残るんだろう。
そんなことを考え始める。
だから資格を取ろうと思った。
もしかすると、
欲しかったのは
資格そのものではなく、
「今とは違う未来を選べる自分」
なのかもしれません。
でも、資格一つで人生なんて変わるの?
ここは、きれいごとを
言いたくありません。
電験三種に合格した翌朝、
突然人生が
変わるわけではありません。
合格通知を持って会社へ行ったら、
給料が2倍になる。
そんなこともありません。
嫌いな上司が突然
優しくなるわけでもない。
月曜日は普通にやってきます。
では、
何のために
勉強するのでしょう?

私は、
「選べるものが増える」
ことが一つ大きいと思っています。
今の会社に残る。
設備の仕事を続ける。
資格を生かせる仕事を探す。
さらに上の資格を目指す。
これまで、
「自分には無理だろう」
と思っていた選択肢が、
少しずつ現実になっていく。
もちろん、
電験三種を取れば
何でもできるわけでは
ありません。
でも、
何も持っていなかった昨日より、
選択肢は一つ増える。
私は、それだけでも
大きいと思っています。

そして、もう一つ変わるものがある
これは資格手当には
書いてありません。
求人票にも載っていません。
でも私は、
こちらの方が大きいかも
しれないと思っています。
それは、
「自分でも、やればできるんだ」
という感覚です。
電験三種の勉強を始めると、
分からないことだらけです。
電圧。
電流。
抵抗。
分数。
√。
三角比。
ベクトル。
複素数。
最初は参考書に書いてある
意味すら分からなかった。
問題を解けば間違える。
昨日覚えた公式を今日忘れる。
過去問を開いて、
「こんなの解けるわけないだろ」
と思う。
それでも、
一つ分かる。
もう一つ分かる。
昨日できなかった問題が、
今日は解ける。

その小さな積み重ねの先に、
「合格」
があります。
変わるのは履歴書だけじゃない。
自分を見る目も、少し変わる。
どうすれば、そこまで行けるのか?
ここで問題になるのが、
「分かってるけど、
その勉強ができないんだよ」
ということです。
その通りだと思います。
仕事をしながら勉強するのは、
簡単ではありません。
家に帰れば疲れている。
家族との時間もある。
毎日2時間、3時間なんて、
現実的ではない人もいる。
しかも参考書を開けば、
いきなり知らない記号や
数式が出てくる。
だから私は、
最初から全部理解しようと
しなくていいと思っています。
分からないなら、戻る。
式変形で止まったなら、
式変形まで戻る。
分数で止まったなら、
分数まで戻る。
「そもそも電圧って何?」
で止まったなら、
そこから始める。
昨日より一つ分かればいい。

それを積み重ねる。
派手ではありません。
でも結局、
合格まで進んでいくのは、
こういう小さな積み重ねです。
では、今日何をする?
「絶対に電験三種に合格する!」
そこまで決意しなくても
いいと思います。
もっと小さくていい。
今日参考書を10分だけ開く。
1問だけ見る。
分からなければ、
「何が分からないのか」
だけ探す。
それでいい。
なぜなら、
今日の10分だけで、
人生が変わるわけでは
ないからです。
でも、
その10分を積み重ねた先にしか、
今とは違う未来もありません。

私自身、
電験三種に合格するまで
11年かかりました。
ずっと順調だったわけでは
ありません。
途中には、
本気でやって落ちるのが怖くて、
何年も参考書を開かなかった
時期もあります。
「資格を取れば人生が変わる」
なんて簡単には言えません。
ただ、
一つだけ言えることがあります。
合格したとき、
変わったのは資格欄に書ける
文字だけではありませんでした。
「あれだけ分からなかった自分でも、
ここまで来られた」
という経験が残りました。
そして、その経験は、
次に何かへ挑戦するときにも
残ります。
電験に受かったら、
本当に今の自分は
変わるのだろうか?
合格した瞬間に別人に
なるわけではありません。
明日の仕事もある。
嫌なこともある。
不安だってなくならない。
でも、昨日まで
「自分には無理だ」
と思っていたことを一つ、
「できた」に
変えることはできる。
そして、
「今の会社しかない」から、
「ここにいてもいいし、
別の道を選んでもいい」へ。
そんなふうに、
人生の選択肢を一つ
増やすことはできる。

だから今日、
全部を変えなくていい。
まず10分。
参考書を開いてみる。
未来を変えるなんて、
最初はそのくらい小さな行動から
でいいのだと思います。



コメント