Lesson1 三相交流の全体像|120°ずれた3つの交流
STEP5では、1本の交流の波形・位相・ベクトルを学びました。ここからは、同じ周波数で120°ずつずれた3本の交流を一緒に読みます。
今日のゴール
この記事では、三相交流を次の言葉で説明できるようになります。
三相交流とは、同じリズムで動きながら、120°ずつタイミングのずれた3つの交流である。
最初からY結線やΔ結線の公式を覚える必要はありません。
まずは「同じ」「ずれている」「3つでつり合う」の3点をつかみましょう。
STEP5の1本の交流を3本に増やす
STEP5では、1本の正弦波交流について学びました。
三相交流では、その正弦波が3本になります。3本の交流を、一般に a相・b相・c相 と呼びます。
ここで大切なのは、3本がばらばらに動くのではないことです。
- 最大値が同じ
- 周波数が同じ
- 位相だけが120°ずつ異なる
この3つが、平衡した三相交流の基本です。
このLessonでは、特に断りがない限り、3相の大きさが等しく、120°ずつ位相がずれた平衡三相交流を扱います。

図を見る理由:1本の波形が、同じ周期を保ったまま3本になることを確認するため。
図から読むこと:三相は「大きさが3倍」なのではなく、「同じ波形が120°ずつずれている」。
なぜ120°ずれるのか
正弦波の1周期は360°です。三相交流では、1周期を3つに等しく分けます。
360^\circ \div 3=120^\circ時計に置き換えると、円周上に3本の針を等間隔で置いた状態です。
3本とも同じ速さで回り、互いの間隔を保ち続けます。
3本の波形を式で見る
正相をa相→b相→c相の順に現れるものとして表すと、各相の瞬時値は次のように書けます。
v_a=V_m\sin\omega t v_b=V_m\sin(\omega t-120^\circ) v_c=V_m\sin(\omega t-240^\circ)3つの式で、最大値V_mと角周波数\omegaは同じです。違うのは位相角だけです。

図を見る理由:3本が同じ周期で、横方向に120°ずつずれる様子を確認するため。
図から読むこと:同じ時刻でも、3相の瞬時値は同じにならない。
3つを足すと0になる
ここでの3つの電圧は、同じ基準点(中性点)から見た各相の電圧です。平衡した三相交流では、その瞬時値を同じ時刻に符号つきで足すと0になります。
v_a+v_b+v_c=0合計が0でも、各相の電圧が0になるわけではありません。
例として、\omega t=90^\circの瞬間を見ます。
v_a=V_m\sin90^\circ=V_m v_b=V_m\sin(-30^\circ)=-\frac{1}{2}V_m v_c=V_m\sin(-150^\circ)=-\frac{1}{2}V_mしたがって、
V_m-\frac{1}{2}V_m-\frac{1}{2}V_m=0各相には電圧がありますが、正負を含めて足すとつり合っています。
ベクトルで見るとつり合いが分かる
STEP5で学んだように、正弦波は回転するベクトルとして表せます。
三相交流の3本のベクトルは、同じ長さで120°ずつ離れています。
3本を頭から順につなぐと閉じた三角形になり、出発点へ戻ります。これがベクトルの和が0になることを表します。

図を見る理由:波形の時間的なずれを、向きの違う3本の矢印として捉えるため。
図から読むこと:同じ長さの3本を120°間隔で置くと、互いにつり合う。
三相交流が使われる理由
全体の電力が滑らかになる
単相交流の瞬時電力には脈動があります。三相電源と三相負荷がともに平衡している場合、各相の電力変化が時間的にずれて打ち消し合うため、3相分を足した全体の瞬時電力は一定になります。
送電に適している
三相3線式では、平衡時に3相の電流がつり合います。同じ電力・同じ電圧・同じ損失条件で比べると、単相方式より導体材料を有効に使えます。
回転磁界をつくりやすい
空間的に120°ずつ配置した3つの巻線へ三相電流を流すと、磁界の強い方向が時間とともに移動します。その結果、回転する磁界が生まれます。

図を見る理由:120°の時間差が、電動機の中で回転する動きへ変わることを確認するため。
図から読むこと:3相の巻線と電流が順番に磁界を強め、磁界の向きが回る。
止まりやすいポイント
「3相の和が0」という言葉だけを見て、電圧も電流も存在しないと考えないようにしましょう。
先に各相の値を見て、そのあとで符号つきの合計を確認します。
また、120°は波形の高さの差ではなく、横軸上の時間・角度のずれです。
このLessonのまとめ
- 三相交流は、同じ大きさ・同じ周波数を基本とする3つの交流
- a相・b相・c相は120°ずつ位相がずれている
- 平衡時は、同じ基準点から見た3相の瞬時値を符号つきで足すと0になる
- 3本のベクトルも120°ずつ離れ、互いにつり合う
- 三相交流は、安定した電力伝送と回転磁界の生成に適している
次のLessonへ
Lesson2では、3本の波形とベクトルを対応させながら、正相と逆相を見分けます。
EXERCISE
読んだ直後に、6問だけ。
三相交流の「120°ずれ」を、計算前に確認します。
問1 予想 ★☆☆
三相交流の3つの波形は、何°ずつずれていますか。
- ① 90°
- ② 120°
- ③ 180°
問2 予想 ★★☆
平衡三相で、3相の瞬時値を符号つきで足すとどうなりますか。
- ① 0になる
- ② 必ず最大値になる
- ③ 3倍になる
問3 式を選ぶ ★☆☆
1周期360°を3相に等しく分ける式はどれですか。
- ① 360°×3
- ② 360°−3
- ③ 360°÷3
問4 まちがい探し ★★☆
「3相の和が0だから、各相の電圧も0だ」と考えました。どこが誤りですか。
- ① 3相は同じ周波数ではない
- ② 各相の値と、符号つきの合計を混同している
- ③ 120°は存在しない
問5 計算 ★☆☆
ある瞬間の3相の電圧が100 V、−50 V、−50 Vでした。符号つきの合計はいくつですか。
- ① 0 V
- ② 50 V
- ③ 200 V
問6 応用 ★★☆
三相交流が電動機に向いている理由として最も適切なのはどれですか。
- ① 電圧が常に一定だから
- ② 三相電流で回転磁界をつくれるから
- ③ 3本の電線で必ず電力が3倍になるから



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